キネシオロジーは、そのおおもとのアプライド・キネシオロジー(AK)自体がさまざまな治療法の集合体のようなものだが、それが単なる「各種療法の寄せ集め」にならなかったのは、筋肉テスト(筋力テスト)と筋反射テスト(筋肉反応テスト)があったからだ。この2つのテストを幹にして、そこに各種療法を枝のような形で結びつけることによって、AKという1つの大きな体系が成立している。
ということは、その幹に接ぎ木する枝を変えれば、本家のAKとはまた違った体系をいくらでも作り出すことができるワケだ。そのためキネシオロジーには数多くのバリエーション、発展形があって、それが実際に使われている。私が臨床で使っているクリニカル・バイオホログラフィック・システム(CBS)も、そうしたものの1つ。
で、最近ネットでキネシオロジーについて調べていく中で、さまざまなキネシオロジーの使い手たちが自身のセッションの内容を紹介している、いくつかのブログに行き当たった。セッションの過程を詳細に書いてくれていて、そこには私のやっているのとはまた違う考え方や手法が含まれているため、読んでいると非常に面白い(なかなか他の人のやっているセッションを見せてもらうという機会もないし)。「これは!」というネタもあって、臨床での参考にさせてもらっている。
その中の1つが、漫画家でキネシオロジーセラピストでもあるsatsukiさんの「キネシオロジーとまんがとわたし」である。satsukiさんは別に「読むだけキネシオロジー講座」というのもネットにアップしているのだが、かなり高度な事柄が非常に読みやすくまとまっていて、キネシオロジーをやっている人は読んでおいて損はない内容だ。
その「講座」の第4回を読んでいた時、ちょっと見慣れない言葉に遭遇した。ブロッキング…? 本文中では「セッションの本番中に突然、筋反射テストができなくなる現象」として紹介されているのだが、初めて見る言葉だし、AKの基本文献である『アプライド・キネシオロジー シノプシス』(科学新聞社刊)の中にもそうした言葉は見あたらない。治療(セッション)の途中でスイッチング(注)が現れる、というケースは見たことがあるが、それとは違うものなのかを知りたくなって、ブログに質問のコメントを書いたところ、satsukiさんから丁寧な回答をいただいた。
(注)日本語では神経学的混乱と訳される。何らかの条件下(例えば、患者がある方向に視点を向ける、施術者が患者の周りを右(あるいは左)回りに歩く、など)で突然、筋肉の強弱が変化してしまう現象を言う。スイッチングを持った状態ではキネシオロジー的なテストができないため、施術の前には必ずスイッチングの有無を調べ、あればそれを除去しておかなければならない。
回答の要旨は、satukiさんの「師匠」からの言葉として
・ブロッキングはAKでは「高緊張状態」として記されているもので、フローズンマッスルや、オーバーファシリテーションとも言われる。
・ブロッキングという用語自体は、スリーインワンなどのスペシャライズドキネシオロジーで出てくる。
また、satsukiさんは
・スイッチングとブロッキングはおそらく違うもの。
と書いていたが、その中の「ブロッキング=高緊張状態」という点が妙に引っかかった。
まず『アプライド・キネシオロジー フローチャート・マニュアル』(科学新聞社刊)の上巻には
とある。つまり、フローズンマッスルとは抑制過剰(オーバーインヒビション)のことであることがわかる。
異常な筋肉の状態には、促通低下(アンダーファシリテーション UF)、促通過剰(オーバーファシリテーション OF)、抑制低下(アンダーインヒビション UI)、抑制過剰(オーバーインヒビション OI)の4種類があり、それぞれ異なるが、筋反射テスト用に使う筋(これをインジケータ筋 IMと言う)は、あらかじめこうした異常がないことを確認しておかなければならない。「師匠」氏の言うように、ブロッキングがフローズンマッスル(OI)やOFなのだとしたら、それは単に「IMとして使えないはずの筋をIMにしてしまった」というだけになってしまう。
そこで再度satsukiさんに「フローズンマッスルとは、途中で起こるスイッチングのことか、単に異常な状態にある筋肉をIMとして使っていた、というだけなのでは?」という質問をしたところ、
・心理的抵抗が主要因で起こるブロッキング(という定義?)とは印象が異なる。
・ブロッキングというものの存在を教わったかどうかで、ブロッキングを認識できたりできなかったりするのでは?
という回答だった。
その後も、この件についてモヤモヤした感じが晴れずにいたのだが、風呂の中でボンヤリと筋反射テストをしていた時のこと──。
私は練習を兼ねて日常のさまざまな場面で筋反射テストを使っているのだが、ここ2,3年くらいに気づいたことがあった。筋反射テストでは一般にYes/Noという二者択一の答が得られると考えられているが、実はそうではなかった。それ以外の答になることもあるのだ。私が知るYes/No以外の答とは「どちらでもいい」「わからない」「教えてあげない」の3つである(これらについては、また別の機会に詳しく述べたい)。そして、「心理的抵抗が主要因で起こる」というブロッキングとは、この中の「教えてあげない」のことなのではないか、ということに思い至った。
たまたま風呂に入っていた、その時、その「教えてあげない」が出ていたので、「講座」にあったブロッキングの修正法を試すと、それが効くことが確認できた。
よって、ブロッキングについての現時点での私の結論は、
何らかの心理的抵抗が要因で起こると考えられるブロッキングは、スイッチングとは異なる現象
また、ブロッキングはUF、OF、UI、OIのような筋肉の異常とも無関係
というものである。
ということは、その幹に接ぎ木する枝を変えれば、本家のAKとはまた違った体系をいくらでも作り出すことができるワケだ。そのためキネシオロジーには数多くのバリエーション、発展形があって、それが実際に使われている。私が臨床で使っているクリニカル・バイオホログラフィック・システム(CBS)も、そうしたものの1つ。
で、最近ネットでキネシオロジーについて調べていく中で、さまざまなキネシオロジーの使い手たちが自身のセッションの内容を紹介している、いくつかのブログに行き当たった。セッションの過程を詳細に書いてくれていて、そこには私のやっているのとはまた違う考え方や手法が含まれているため、読んでいると非常に面白い(なかなか他の人のやっているセッションを見せてもらうという機会もないし)。「これは!」というネタもあって、臨床での参考にさせてもらっている。
その中の1つが、漫画家でキネシオロジーセラピストでもあるsatsukiさんの「キネシオロジーとまんがとわたし」である。satsukiさんは別に「読むだけキネシオロジー講座」というのもネットにアップしているのだが、かなり高度な事柄が非常に読みやすくまとまっていて、キネシオロジーをやっている人は読んでおいて損はない内容だ。
その「講座」の第4回を読んでいた時、ちょっと見慣れない言葉に遭遇した。ブロッキング…? 本文中では「セッションの本番中に突然、筋反射テストができなくなる現象」として紹介されているのだが、初めて見る言葉だし、AKの基本文献である『アプライド・キネシオロジー シノプシス』(科学新聞社刊)の中にもそうした言葉は見あたらない。治療(セッション)の途中でスイッチング(注)が現れる、というケースは見たことがあるが、それとは違うものなのかを知りたくなって、ブログに質問のコメントを書いたところ、satsukiさんから丁寧な回答をいただいた。
(注)日本語では神経学的混乱と訳される。何らかの条件下(例えば、患者がある方向に視点を向ける、施術者が患者の周りを右(あるいは左)回りに歩く、など)で突然、筋肉の強弱が変化してしまう現象を言う。スイッチングを持った状態ではキネシオロジー的なテストができないため、施術の前には必ずスイッチングの有無を調べ、あればそれを除去しておかなければならない。
回答の要旨は、satukiさんの「師匠」からの言葉として
・ブロッキングはAKでは「高緊張状態」として記されているもので、フローズンマッスルや、オーバーファシリテーションとも言われる。
・ブロッキングという用語自体は、スリーインワンなどのスペシャライズドキネシオロジーで出てくる。
また、satsukiさんは
・スイッチングとブロッキングはおそらく違うもの。
と書いていたが、その中の「ブロッキング=高緊張状態」という点が妙に引っかかった。
まず『アプライド・キネシオロジー フローチャート・マニュアル』(科学新聞社刊)の上巻には
1980年代のICAKミーティングでDealは、筋は“凍結”するというアイデアを発表した。それは筋が、その拮抗筋の収縮により通常起こる抑制が不可能になるというものである。
この状態では拮抗筋が弛緩しないため可動域が減少する。
とある。つまり、フローズンマッスルとは抑制過剰(オーバーインヒビション)のことであることがわかる。
異常な筋肉の状態には、促通低下(アンダーファシリテーション UF)、促通過剰(オーバーファシリテーション OF)、抑制低下(アンダーインヒビション UI)、抑制過剰(オーバーインヒビション OI)の4種類があり、それぞれ異なるが、筋反射テスト用に使う筋(これをインジケータ筋 IMと言う)は、あらかじめこうした異常がないことを確認しておかなければならない。「師匠」氏の言うように、ブロッキングがフローズンマッスル(OI)やOFなのだとしたら、それは単に「IMとして使えないはずの筋をIMにしてしまった」というだけになってしまう。
そこで再度satsukiさんに「フローズンマッスルとは、途中で起こるスイッチングのことか、単に異常な状態にある筋肉をIMとして使っていた、というだけなのでは?」という質問をしたところ、
・心理的抵抗が主要因で起こるブロッキング(という定義?)とは印象が異なる。
・ブロッキングというものの存在を教わったかどうかで、ブロッキングを認識できたりできなかったりするのでは?
という回答だった。
その後も、この件についてモヤモヤした感じが晴れずにいたのだが、風呂の中でボンヤリと筋反射テストをしていた時のこと──。
私は練習を兼ねて日常のさまざまな場面で筋反射テストを使っているのだが、ここ2,3年くらいに気づいたことがあった。筋反射テストでは一般にYes/Noという二者択一の答が得られると考えられているが、実はそうではなかった。それ以外の答になることもあるのだ。私が知るYes/No以外の答とは「どちらでもいい」「わからない」「教えてあげない」の3つである(これらについては、また別の機会に詳しく述べたい)。そして、「心理的抵抗が主要因で起こる」というブロッキングとは、この中の「教えてあげない」のことなのではないか、ということに思い至った。
たまたま風呂に入っていた、その時、その「教えてあげない」が出ていたので、「講座」にあったブロッキングの修正法を試すと、それが効くことが確認できた。
よって、ブロッキングについての現時点での私の結論は、
何らかの心理的抵抗が要因で起こると考えられるブロッキングは、スイッチングとは異なる現象
また、ブロッキングはUF、OF、UI、OIのような筋肉の異常とも無関係
というものである。
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