よく行く図書館の近くにある治療院(鍼灸接骨院)が張り紙を出していた。
「根本治療コース プロの技術で根本から治します」
「根本治療コース」があるってことは、それ以外のコースは根本治療ではないのだろう(笑)。
それはともかくとして、HPを見ると「根本治療」「根本療法」をうたっている治療院が少なからずある。「単に痛みを取るだけの治療ではありません。根本から改善させます」と。
かくいう私だって
「ここは痛みを取るだけの治療院ですか?」
と聞かれれば、
「そんなことありません。痛みを取ることを目標としているわけじゃなく、もっと深いレベルで治療してます。その結果として痛みも改善するということです」
と答えるだろう。
けれども私は自分がしていることが「根本治療」だとは少しも思っていない。というより、そもそも「根本治療」って何だ?
治療院を始めた時、参考のため新聞折り込みやポスティングされた治療院のチラシを集めていたことがある。その中のあるカイロプラクティック院のチラシは、今でも鮮明に記憶に残っている。そこには、こんなことが書かれていた。
「カイロプラクティックは根本治療です。なぜなら症状が出ている部分ではなく背骨を矯正することで治療するから」(注:もうチラシの現物がないので実際の文言はこれとは異なっていたかもしれないが、意味としてはこういうことだった)。
「症状のある部位とは違うところに施術するから根本治療だ」とは、ずいぶんとお気楽な根本治療があったもんだ。それをいうなら、症状のある部位とかけ離れたツボに施術する鍼灸などは根本治療の最たるものだと思うのだが(ちなみに、そのチラシにはカイロの機序も書かれていたが、どこかの文献から丸パクリしてきたのが見え見えで、その先生はカイロプラクターを名乗っていても自分の言葉でカイロを説明することもできないのだろう、と思った)。
大体、治療家なんて単純なもので、自分の施術で改善があったかどうかは
・硬かったところが柔らかくなった。
・制限されていた可動域が広がった。
・左右の脚長差が解消された。
・弱化していた筋肉が正常化した。
・重心の偏りがなくなった。
・頭蓋や仙骨の周期的な律動が整った。
…
といったことで判断しているに過ぎない。それどころか上に挙げた、たった6つの項目でさえ、全てをチェックしている人もそうはいないのでは? しかも、この6項目も単にある側面での変化を捉えたに過ぎないわけで、仮に全てを満たしていたとしても「これで根本的に改善した」なんてちゃんちゃらおかしい。
治療に限らず、人にとって自らの認識の及ばない範囲は存在していないに等しい。しかし、それは「その人にとっては存在していない」というだけであって、実際に存在していないのとは違う。自分が認識できる範囲だけを見て、どれだけ「これで完璧だ。根本的に治った!」と言ってみたところで、その言葉に一体どんな意味があるのだろう?
もしあなたが「根本治療」をうたう治療家なら、自分の治療がどんな理由で根本治療なのか説明できるだろうか? またあなたが「根本治療」を標榜する治療院の患者なら、その先生になぜそれが根本治療と言えるのかを尋ねてみるといい。
ついでに、それを(コッソリとでもいいので)私に教えてもらえたら、とてもうれしい。
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