昨年11月下旬に完成間際で中断していたカルテットの作曲を、先月上旬ひとまず完成させた。
演奏上の技術的な問題に関して、知人のヴァイオリニストにビオラのパートまで見て頂けることになり、何度も試演して頂いた結果の第一報が届いた。
全体的に指定通りのテンポで弾くのは無理、との事。
「無理」の間にも「多少遅めにすれば出来る」ものから「かなり遅くしなければ不可能で、指定されたテンポのイメージとはかけ離れてしまう」ものまで、実例と理由を挙げて示してくれた。
さて改善案として何通りか考えられる。
1)やや遅めのテンポに改める…殆ど応急処置。
2)テンポもリズムも変えず、音を弾き易いように変える…音型や質感が重要で、素材としての音の高さにはこだわらない場合。
3)テンポも音も変えず、リズムをより緩慢にする…テンポを遅く出来ず、音の高さや強さに重要な意味がある場合。
4)弾きにくい原因となっている音を削除する…2)のさらに思い切った対処法。この場合、削除した音(たち)を、別のパートの楽器に分担させれば結果的には殆ど変わりが無い。
5)ボーイングを変える…スタッカート⇔スラー
こうして直した物を再度見てもらい、さらに改訂が必要になる事もあるだろうから、今月一杯はこの作業に掛かってしまいそうだ。
なぜこうなったか……原曲があったから。それも「完全なピアノ曲」だったらまだ用心したところ、「右手だけ」だったので、片手で弾けるのだから弦でも大丈夫だろう、と高をくくり、殆ど原曲のまま機械的に弦の譜面に移し変えてしまったからだ。考えてみれば弦楽器は擦弦楽器、音をこすり出す楽器。弓を当て、擦って音が出るまでには僅かな時間が掛かり、それが弦の音色らしさを生む。
そこで今度は原曲を忘れることにした。カルテットの譜面として適切か、そこに焦点を定める。
そして第2稿が出来た。自分で実際にヴァイオリンに指を置き、そのテンポで演奏可能かどうか、あらゆる音を確かめた。
ビオラやチェロのパートも移調して、かつ指が開く幅も考慮し、ヴァイオリンで確かめた。確かに調弦や指の動きを無視した音の運びが多い。
親指以外に指が5本無いと弾けないフレーズもあった。音をどれか一つ削る。
速いテンポで疾走する箇所。ここも持続音を1拍短くして休符を入れたり…。
最初は泣く泣く削っていたのだが、削ってみるとそっちの方がずっと面白い。予測の出来ない動きになったりした。音が減ったことで個々の音がはっきり聴こえる様にもなった。
壁紙と同じか…壁紙は2枚、3枚と重ねれば色、形は複雑になるが、同時に暗く、濁っていく。やはり1枚がすっきりしていて丁度良い。
ならば最初からカルテットのつもりで作曲していたら、もっと問題は少なかったのでは?しかし問題の少ない仕事に独創性は無い。ありきたりの決まり文句ばかりになってしまう。
この様な作業こそが自分の技術を高めるものだし、ちょっとした音の改訂が曲全体に有機的に作用し、連鎖的にそれ以外の部分に対しても思っても見なかった変化や新しい楽想を生むとしたら…。
あえてミスマッチからスタートして、突破口を開きたい。その上でカルテットの純粋―proper―な表現に叩き上げる。
(写真:オルガン曲の入賞祝い)
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます