これまでに様々な初見課題曲を作った。ピアノはもとより、ヴァイオリン、ビオラ兼チェロ、フルート、オーボエ、クラリネット兼サクソフォン、ファゴット、トランペット、ホルン、トロンボーン、ユーフォニウム、そして声楽…。
能力に長けた奏者なら難なく弾け、未熟な奏者ならボロボロになる、そんな曲。
自由曲だけでは本当の演奏能力が分からない。得意な1、2曲だけを半年程みっちり練習すれば、素人さんでもかなりの演奏をするからだ。
初見課題曲では単にソルフェージュ力を見るだけに留まらない。プロの音楽講師として、このくらいは当然初見で弾けなければならない、という常識的な技術レベルに設定している。
これまでにいかに多くの色んな傾向の曲を、どれだけスピーディーにさらってきたか否か…そんな包括的な審査を目的としている。
演奏能力の審査に使うのだから、作る側は楽器や声楽について熟知していなければならない。中級程度の楽器の教則本を参考にしたりもした。つまり敵情視察。
だれもまともに弾けない曲では、曲に欠陥がある事になる。それは作曲全般におけるのと同様。
時にはこちらの理解不足のため、曲に物理的な無理が生じてしまう場合もあるが、受験者はみな同じ条件なのだから、その無理をどう克服するか、という見方もできる。
そんな時はしかし、申し訳ない気持ちが先に立つ。いずれ改訂しなければならない。
作ったばかりの課題曲が初めて審査に使われる時は、こちらも出来を試されるようで、緊張と期待が入り混じる。
これもまた、初演。