母の居室の押入れの奥から、封をしたままの平べったい段ボール箱が3つ出てきた。
未使用の額が一つ、他の二つは額装した母の書。その一つ、横長のものをもらった。
汚れを取るために分解すると、額装は日曜大工の様で、父の手によるのだろうか。両親の合作であればなお、見知らぬ画家の現代絵画を購入するよりも励みとなる。
「何が書いてあるのか」よりもまず、純粋にアートとして鑑賞する。ラインのフォルム、墨の濃淡のリズム、意表を突く文字の配置…。
母に聞けば、テキストは西行法師の歌で、字体、改行、字の配置、空間の作り方、すべて自分で考え、師匠の添削を受けて数枚書いた内の最良のもの、50~60歳の作との事。
「すごいね!」と驚くと、「どうってこと無い、これくらい当たり前」。
ピアノの部屋に架けた。西洋音楽の鳴る部屋にミスマッチと思いきや、却って面白い。
読み取れるのは、春夏秋冬の情景。
==フランス人Anethさんのコメント==
この書はきっとあなたに霊感をもたらす事でしょう!あなたの内なる根源を象徴する品が存在することは、あなたが芸術のあらゆる可能性を探るのを助ける以外にあり得ません。
しっかりと根を張った木が、倒れずに容易く枝を遠くに広げることが出来るように。