◎欲しかった“自転車”
中学の頃、スポーツタイプの自転車が欲しくて堪りませんでした。 当時は値段が高く、気安く親に買ってもらうのは無理でした。 だからと言って、自分の小遣いで買うのも不可能です。 そこで、自転車の懸賞に応募しようと考え、雑誌に載っていた抽選券を葉書に貼って送ったと記憶しています。(たぶん1枚) 仮に懸賞に当たったとしても、3~4等では希望が叶いません。 ほぼ自転車は諦めていた半年後、1枚の葉書が届きました。「おめでとうございます。中村様に特等が当たりました。この葉書を持参して〇〇自転車店で景品をご受け取りください」 特賞? 確か1等はスポーツタイプの自転車だった筈ですが、その上の特等は何なのか分かりません。 早速、葉書をもって自転車店へ走りました。 店に着いて「ビックリ!」 希望していた“自転車”ではありませんでした。
ブリヂストン製のオートバイ・ 排気量60cc・アップマフラー・W シート・・・・、車体は赤で我が町では見かけないカッコいい“バイク”でした。 カタログを見ると、定価は6万円以上(当時は大金)だったと思います。 勿論、自転車店から我が家まで押して帰りました。(なにせ、13歳の事ですから) 父親に事情をはなすと、呆気なく「免許が取れる年になるまで、物置にしまって置け」でした。
しかし、好奇心旺盛な中学生ですから、免許の取れる16歳まで待てる筈がありません。 1升瓶を持って、ガソリンスタンドで混合ガソリンを買い、夜な夜なバイクを走らせました。 一人では不安なので、いつも同級生が一緒でした。 いつの間にか、親との約束を破って昼間の走行も始まりました。 昔とは言へ、町には警察官が巡回していました。 ある日、二人乗りを注意され停車を求められたのです。 警官「原付バイクは二人乗り出来ないぞ」、 私「このバイクは自動二輪車です」・・・ 警官「そうか、確認のため免許証をみせてくれ」、 私「ありません」・・・、そんな事で補導されました。 後日、家庭裁判所で裁きを受けました。 判事「もう無免許運転はしないと約束出来ますか・・・」、私「二度としません」。 判決は、「君の将来を考え無罪とします」でした。 幸いにも、履歴書に<賞罰なし>と書く事が出来ました。