Deep Purple - Speed King (1970)
ハードロックとは、若者の暴力衝動を音楽で表現したものではないか?というようなことを音楽評論家の渋谷陽一氏が1975年ごろ論じていたような気がする。
ハードロックは、ヘヴィ・メタルに進化して、その後、先鋭化して、スラッシュ・メタル、デス・メタルと過激な方向に展開していくわけだが、こうして元祖ハードロックを聴くと、やっぱり最初から暴力的だと感じる。
若者のモヤモヤした気持ちをスカッとさせる音楽であったのだ。
この曲が収録されている「イン・ロック」はディープ・パープルがサイケデリック・ロック的な音楽性からガラリとハードロックという音楽に方向性を変えて初めて出したアルバムだが、かなり音がとんがっている。
なぜ、彼らがハードロックという始まったばかりの音楽にかじを切ったのかわからないが、その決断は正しかった。
この手の音楽はすでに、レッド・ツェッペリン、ブラック・サバスが始めていたと思うのだが、彼らはもっとも単純にハードというところにこだわって音作りをして、異彩を放った。
彼らはアメリカという最も重要なマーケットではそこそこの成功しか収めていない。ツェッペリンのような大ヒットは飛ばしていないし、信奉者も少ない。
ブルース由来のハードロックではなく、クラシック臭がするロックはアメリカではやはりイマイチなのだろう。
でも、日本を主とするアジア各国、ドイツに代表されるヨーロッパ諸国には受けた。
そして、世界各国に病的なハードロックマニアたちを育ててしまうのである。
後に、世界的にヘヴィ・メタル・マニアが根付くのだが、その礎を作ったのがディープ・パープルであり、その分派のレインボーだと推察する。
さて、インロック~バーンの時期のパープルで最も面白いのはイアン・ペイスのサーカスばりの派手なドラムだ。
彼は、80年代には大人になってしまって、シンプルなスタイルになってしまうのだが、当時は派手派手で、ギターやキーボードに負けていない。パープルにやたらと勢いを感じるのは彼の存在が大きい。
映像を見るとドラムセットがあまりにもこじんまりしてるのでびっくりしてしまうのだが、音数はめちゃくちゃ多い。影の立役者のような気がする。