その日も古い新聞を読んでいて、下段の広告に目がいった。
絵画の写真の横にクリムト、シーレという画家の名前を見つけた。何処でやっているのだろうかと会場を見ると「苫小牧市美術博物館」とある。息子の住む街。「観覧無料」おまけにまだ開催中だ。
同じ頃、苫小牧市文化交流センターで「ヒロシマ原爆資料展」もやっていることをニュースで知り、息子に会うついでに見てこようと思った。
8月21日日曜日、お昼少し前に夫の車で苫小牧に到着した。息子の部屋で、手製のサンドイッチとコーヒーで腹ごしらえをしてから、苫小牧市美術博物館へ行った。
息子のアパートから近い。
私も高校生のときに良くこの周辺に来ていた。あれから45年以上経過した。あの頃の風景からは大きく変貌を遂げている。
大昔は苫小牧の駅前からここ迄来たらあっという間に街は終わり。とてもコンパクトな街だった。
今も相変わらずコンパクトではあるけれど、45年前と比べたら、街は随分大きく広がっている。
昔はなかった、苫小牧市美術博物館。
今回の催しは、大手自動車メーカーの30周年記念事業だった。
「芸術の都ウィーンとデザインの潮流」と題した催しで、クリムトとエゴンシーレの絵画を期待して訪れた。古いヨーロッパの家具や調度品などの展示もあり、見る機会のあまりない物を見ることができ、とても興味深かった。
アンケートに答えたらポストカードをいただけた。うれしい。
左がグスタフ・クリムト「人生は戦いなり(黄金の騎士)」大きな作品だった。
右がエゴン・シーレ「カール・グリュンヴァルトの肖像」
工芸品は日本の影響を受けた作品も多い。
古い木製家具もオシャレだ。
「バルセロナチェア」というたいへんシンプルなデザインで、素敵な椅子が展示されていた。
バルセロナチェア体験コーナーで座ってみた。
わかりづらいが、写真右上に写っているのがバルセロナチェアの全貌。交差した椅子の足がスタイリッシュで素敵だ。
現在でも販売されている高額な椅子なのだが、とても良い座り心地で、欲しくなった。買えないけど。
この展示室を出て、この苫小牧市美術博物館のもう一つの見どころの博物館を見た。入場料300円は安い。
博物館の入口へ向かったときに、私達の背後から、恐らく学芸員さんと思われる女性が
「引き出しも引き出してご覧ください」と言ってくれた。その声がなかったら、館内をサラリと通り過ぎてしまっていたかもしれない。
壁の展示物の下側は4段ほどの木製の引き出しだった。
私は、多分そこにあった引き出しの9割以上は、開けてみたと思う。引き出しは結構重たかったので、汗が出るほどだった。
アンモナイトの化石群から始まり、鉱石、動植物、昆虫などなどその収蔵物の多さに驚いた。
動物の剥製もあったが、その展示方法がまた良かった。
小動物や小鳥は目の高さのケースの中に、生息する環境を模した中に、生き生きと配置してあった。
これまでもいろいろな博物館を見てきたが、コンパクトなケース内展示というスタイルは、他所ではあまりない。
大抵は等身大の自然環境を模して、高い木の一角に小さな野鳥などが配置されたりしている。それだと、細部まで良く観察できないので、今回のような小さなショーケースは、身長の低い子供たちにとっても見やすい良い展示方法だ。
少し大きめの剥製は開放的な場所での展示。
キタキツネの剥製は、子別れのシーンを再現したドラマチックな配置。その隣にはオスのエゾシカの角を突き合わせた迫力ある戦いのシーンなど、これもあまり見ない剥製の展示スタイルだ。とても臨場感に溢れ、ダイナミックな自然を感じられて楽しかった。
シカの隣には、巨大なトドの剥製も展示されていた。
昆虫標本も壁に整然とかけられたものも美しかったが、それ以上に、引き出しの中の昆虫類がすごかった。
外国の大型昆虫にはビックリ。また、世界で一番美しいと言われるモルフォ蝶も引き出しの中に何匹もいて、昆虫ファンにはたまらない場所だと思う。
もし、行かれた際は、ぜひ引き出しを引き出して見ることをおすすめする。
うちの家族以外で引き出しを引き出している人は残念ながらいなかった。
アイヌ民族のコーナーや縄文時代の土器などもあり、見応え十分。
出口を目指しながら、この建物の一階スペースを占拠する巨大なマンモスの親子像をしげしげと見る。実物大だそうだ。実に大きい。
こんなマンモス相手に戦っていたのかと思うと、大昔の人は偉大だなあとつくづく思えてくる。
苫小牧市美術博物館を出て、次に目指すのは苫小牧市文化交流センターだ。
続く