トウキビ、イモ、カボチャ。
子供の頃から野菜は好きじゃなかったけれど、この3種類は別だ。
私が好物と知って、母は、戦時中に食べたものばかりだと言った。母は白米が大好きなので、イモやカボチャが毎日のように食卓に出て来て辛かったと言っていた。
いくら好きでも、毎日だったら私も辟易したかもしれない。
その3種類の中でも特に私はカボチャが大好物だ。
母方の祖母は生前、庭の畑にカボチャを育てていた。
小学校の帰宅途中に祖母の家があったので、よく遊びに寄った。
祖母はいつも歓迎してくれて、畑で栽培したカボチャの煮物をおやつ代わりに出してくれた。
醤油と砂糖で煮付けた甘じょっぱいカボチャは、ホクホクでも、ベチャベチャでも、私にとっては、どちらも最高に美味しかった。
カボチャは祖母の腕が良かったのか大量に収穫できたらしく、学校の帰りに寄るたびにかぼちゃが出てきた。
次第に私の手の色は、見た目にわかるほどかぼちゃ色に変色した。
それを見た母は「まるで黄疸のようだ」と言った。
黄疸は肝臓の悪い人によく見られる症状で、母の父である祖父は、肝臓の病で亡くなっていた。
私の手の色が、母に祖父の病を思い出させてしまったかも知れない。
もっとも、私の場合はカボチャに含まれる栄養素のカロチンで体全体が染まっちゃったんだから、元気いっぱいだった。
後になって、みかんの食べすぎでやはりみかん色に染まる人が結構いることを知った。
野菜や果物の色素は、大量に取ると体表に現れるものなのだ。
もし、白色人種の人が大量にカボチャやみかんを摂取したら、どうなのだろう。黄色くなるのだろうか。そんなばかな事をふと思った。
最近お気に入りのカボチャ料理がある。
カボチャの具だくさんスープ。食卓に出すたびに、手前味噌だが「あーうまい」と心から思うのだ。
興味のある方へ、作り方を簡単にお伝えしよう。
材料はカボチャ、玉ねぎ、ベーコン、牛乳、バター、塩、コショウ
作り方
鍋にバターを溶かし、みじん切りの玉ねぎと一口大に切ったベーコンを炒め、透き通ってきたら、大きめに切ったカボチャとひたひたの水を加えて、カボチャが、柔らかくなるまで煮て、食べやすい大きさに崩す。
牛乳を好みの量加え、塩コショウで味を整えて完成。
味が物足りなかったら、少量のコンソメなどを加えている。
ポイントは玉ねぎを、よく炒めて甘みを引き出すこと。
高くなくても味の良いベーコンを使うこと。
カボチャのあたりが悪くて甘みが無いときは、隠し味にきび砂糖を少し入れたりする。
バターをたっぷり入れたら美味しいのは分かっているけど、コレステロール値を気にして少なめに使用。
牛乳は低脂肪牛乳を使用し、豆乳も混ぜたりしちゃう。
国産のカボチャを使いたいが、国内の収穫時期を除いては、お高いのでメキシコ産やニュージーランド産をよく買っている。有り難いことに、一年中あるし、味に外れがない。
カボチャは煮崩れてゴロゴロと塊があるのが好き。ベーコンの旨味が出て本当に美味しい。
カボチャの嫌いな夫も、このスープなら喜んで食べてくれるのだ。
オリジナルのレシピでは、この具沢山のスープに、固くなったフランスパンを浸して供する様になっていた。
このスープを食べる時、カボチャの甘みと共に、つくづくと今日生きる幸せを感じるのだ。
子供の歌に、シンデレラのスープという歌がある。
「チャッチャッチャッチャッカボチャのスープ ママが作った自慢のスープ…」
歌うだけで楽しくなる歌で、昔よく子供の前で口ずさんだ。
カボチャ色のスープを飲んだら、私はいつだって元気になれる。
子供達にはすでに伝えているのだが、私の仏壇には必ずかぼちゃを上げてねと。
死んでも食べたいかぼちゃなのだ。