その中には私が小学生の頃から持っていた、大きい消しゴムもあった。その縦の長さは、11センチもあり、どこかのみやげ物だ。
ピンク色の消しゴムには「ジャンボ消しゴム 伊豆の踊子」と書いてあり、着物姿の少女と黄色いお花が描いてある。
更に左側には、川端康成の小説「伊豆の踊子」の一節と思われる文章も書いてあった。
半世紀は経っている代物であるにもかかわらず、ゴムは劣化すること無くまだ弾力があった。
ジャンボな消しゴムには、それに対比するように、長さ3センチほどの小さな「ミニミニ鉛筆」3本が付いていた。
フリマアプリに掲載する際、昭和レトロ品として出してみた。また希少品ということで、やや高めの値段を設定したのだが、程なくして売れた。
ガラクタの中にはビーズで作った腕輪もあった。
これはバラして、他にもストックしてあるビーズと一緒にしようと思い、腕輪のゴムひもにハサミを入れようとした瞬間、ビーズの中に文字が入ったビーズが有ることに気付いた。読んでみると、「お・か・あ・さ・ん」と読めた。あっ、これは母の日に娘が作ったものだった!危ない危ない。永久保存。
そんな事があって、夕方台所にたった時、突然、あの売れたジャンボ消しゴムのことが頭に浮かんだ。
あれは確か父からもらった物ではなかっただろうか?そんな記憶が頭をよぎった。取っておくべき物だった…かな。あー、またやってしまった!と一瞬思った。
いやしかし、あれは持っていても使わない物なのだし、眺めて楽しむようなものでもない。しまい込んだまま、私が死んでしまったら遺品整理で捨てられてしまうだけの物だ。
そう考えたら、喜んでくれる誰かの元へ行った方が、絶対に良いに決まっている。そう思えてきた。
後日、あのジャンボ消しゴムを購入して受け取った方から「とても気に入りました」と言うコメントをいただいた。
ああ、売りに出して良かったなと心から思った。