見出し画像

ポジティブな私 ポジ人

友人が書いた本

友人が2冊目の本を出版した。

本の題名は「モータルmortal」。

mortalとは、研究社の新英和中辞典によると、名詞だと「死すべき(運命の)もの,人間」とある。

元々彼女は自身のブログ「ネルの階段フェルトの廊下」で、仕事の合間をぬってコツコツと「モータル」を書いてはアップし続けていた。長い時間をかけて書きため、今回書籍という形に成し遂げたのだ。その情熱と行動力に敬意を表する。

作品冒頭、
「狢(むじな)はプシプシと足音を立てて私たちの愛の部屋(カトマンザ)にやってきた。」から始まる。
この「プシプシ」という足音の表現が魅力的だ。



舞台は、愛の部屋カトマンザ。
「部屋といえども屋上や森を有する日常とは異なる仕組みを持った不思議な空間」。
座り心地の良い大きなソファーの「緑のカンファタブリー」、エノキダケのように小さなキノコだが、大きなテーブルへと変化する「ヨーラ」、土壁から生えている紅茶色の毛におおわれた一対の耳「レグナ」、声だけの「カプリス」、大きな目玉の「スージー」等など、作者の頭の中から生み出された、不可思議なキャラクターたちがたくさん登場する。

そこの住人であるフォレストグリーンの瞳を持つナンシーによって提供される、美味しいパンと、その人の気持ちに寄り添った味付けのスープ。それはどんな味なのか興味が湧く。

カトマンザを訪れる者は訪問者(トリッパー)と呼ばれ、既に訪れて久しい包帯男のラッキーやカナデ、新しく訪れた狢、亜美、汰央などがいる。

彼らがカトマンザで過ごす様子は心地よく、穏やかに描かれている。その一方で、彼らが現実世界で体験したそれぞれのシビアな物語も合間に語られる。一人ひとりの物語が語られることで、更に登場人物は増え、以外なつながりやサプライズもあり、物語は膨らんでいく。

ファンタジーな世界とトリッパーたちの家族の死にまつわる物語を行き来しながら、次第に癒やしの部屋としてのカトマンザが、心地よく大きな魅力となっていく。

彼らがカトマンザに積もる”邪悪の灰“を消し去るための「月の涙」を探す冒険は、要となる物語で絵本的な面白さを持っている。この部分だけでも、十分に一冊の本として成り立つのではないだろうか。
特にソレミヨ階段のくだりは、示唆に富んでいて深いと感じた。

日頃、ノンフィクションやエッセイを読むことが多い私は、登場人物が多いと混乱するので、友人である作者に頼んで、彼女が“配役はこの人”とイメージして描いた鉛筆画を送ってもらった。

包帯男のラッキー

カナデ

亜美

汰央

ここに紹介したのはほんの一部だが、何れも作者が自ら描いた作品。嫉妬する程絵が上手い。

エジンバラ卿

このエジンバラ卿が登場する章(邪悪の灰にまつわる冒険)では、エジンバラ卿の声や仕草が西田敏行さんと重なり、思わず笑えた。

登場する地名や物の名前は、作者の想像から生み出されたものから、現実にある物、ダジャレに置き換えられたもの等様々で、なかなか楽しませてくれる。
それらが実在するのかどうか、検索の為スマホの使用頻度は自然と多くなる。

エジンバラ卿の好物の「月寒あんぱん」は実在の物だ。
作者のその美味しさの表現は、
「ほどよい甘さは味蕾をとりこにし、翻弄された舌根が上顎にくっ付いて不用意に嚥下の音を立てた」
月寒あんぱんは私も食べたことがあるが、この表現を読んで、すぐさま買いに走りたくなった。

作者の語彙力にも敬服する。見慣れない、聞き慣れない言葉が多く登場し、勉強になった。「犇く(ひしめく)」が読めるようになって嬉しい。

また、カトマンザの中に出てくる有名な家具調度品の名称が色々出て来るのだが、そういう事に不案内な私はスマホで画像を呼び出し、イメージを膨らませていった。マッキントッシュのラダーバックチェア、信山のベークコーム、クムのペルシャ緞通、チェスターフィールドのソファ等など。

作者とは子どもを通じて知り合って、かれこれ20年以上だが、彼女の事を私はまだ何も知らないのかも知れないと本書を読んでつくづく感じた。それほどみっしりと私の知らない彼女が詰まっている本でもあるのだ。

ただわかっているのは、彼女が愛に溢れた人だということ。そしてこのカトマンザを舞台に描かれる小説も、また愛が全てを救うと訴えているのだと感じられた。








コメント一覧

ポジ人
書評などというレベルのものでは…無いですよ。読書感想文としてもかなりひどいのに、喜んでくれてありがとう!
「かくこと」に優れているのだから、体育も数学も不要だ。
伊藤美樹
著者です、身に余る光栄に眠気も吹き飛びました。嬉し過ぎる書評、心に沁みます!
私「かくこと」以外は全然ダメで、体育は5段階評価の2、数学はいつも赤点でした。あえて言うなら好きこそものの上手なれ、自分の書いたものを読み返しては満足するというナルシストです。愛の人なんて想像の産物ですよ〜😆
ポジ人
@nognogblack ノグブラックさん、今晩は。

彼女はデザイン学校出身なんですよー。ホントに上手いんです。彼女に追いつくように、頑張ってみようと思ってるところです。
芦田愛菜ちゃんの完成度、凄いですよね~。
nognogblack
えっ!小説作者の方が絵も描いたと云う事ですか?
もし、そうならどっちでも食べて行けそうですね😅
才能のどっちかは、他の人の為に残しておいて欲しいです💦

芦田愛菜ちゃんのファンなので、これは欲しいです😍
名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「本」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事