詩に関してはうとい私だが、随分前に知った一編の詩は何だか妙に共感して、私の心に残っている。
詩の作者は花田英三。作品は「豆」。豆を喰いながら
なにかかんがえるつもりでいたが
ふと気がつくと
おれはいっしんに豆を喰っていた
この詩を読んだ時、私はすんなりと「あるある、こういう事あるよね」と、非常に共感したのだ。
今改めてこの詩を読んでみると、「食う」という本能の行為と、対極にある「考える」という理性の行為が並べられている。結局、理性が本能に駆逐された形だ。人間はしみじみと動物なのだなあと感じる詩だ。「考える事」より「食う事」に夢中になっちゃうんだから。
この詩が私にとっていつまでも忘れられない詩であるのは、多分私が食べる事が大好きな食いしん坊だから。
それと、格調高い文学者である詩人花田英三の詩に共感することで、少し詩人が身近に感じられたから。
最終行の「おれはいっしんに豆を喰っていた」が、たまらなく好きだ。
「いっしんに…喰う」私は多分、好物をこんな風に食べていると思う。
「うまそうに食うなあ」と大昔、よく父や他人に言われた。
おまけに食べるのも早いから、家で夫と同じ物を食べても、私のほうが先に食べ終わってしまう。それで夫から呆れたように「もう食べたの」と何度言われているか知れない。
我が家では、食に執着のある者は私以外には居ない。
子供たちは小さな頃から食が細く、量もあまり食べない。夫も然り。
まさに今「食欲の秋」だ。ひんやりした空気に触れると、献立はおでん、鍋物、シチューなどあったまる食べ物が次々に浮かぶ。
私も以前よりは食べられなくなったとはいえ、最近食欲が止まらない。
やがてやってくる北海道の寒さに備え、脂肪を蓄えるべく、動物的本能が私を食へと誘うのだ。
Don't eat! Think!