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ポジティブな私 ポジ人

通勤電車の人々

今朝はコロナの影響で出社はいつもより遅め。地下鉄の中も、人がまばらでゆったりしていた。

一昔前は少年ジャンプを若いサラリーマンが車内で読んでいたものだが、今は漫画も紙媒体で読む人は少ない。

でも、今日は、斜め向かいのスーツ姿の初老の男性が、珍しく週間漫画を読んでいる。表紙がチラッと見えた。
週間モーニング。
朝からモーニング(笑)。

車内の椅子は大抵は6人が掛けられる。
ある時、揃えたように、ちょっと肥満気味のおんなじ体格の人達が男女混合で5人揃い、6人掛けの椅子が5人で隙間なくびっちり埋まっているのを見て、ちょっと可笑しかった。こんなに隙間なく埋まるのは珍しい。

車内のほとんどの人がスマートフォンを利用している。
利用するその姿はスマホの表面を指でなぞる、タップするなどほぼ同じだが、利用しているその内容となると多岐にわたる。
ゲームをする人、読書する人、調べ物をする人、音楽を聴く人、小説やブログを書く人、計算をする人など様々だ。
一見しただけでは何をしているか分からない。
それが、昭和人間(“はじめ人間”みたい)には実に近未来的図である。

昭和の風景は、人が何をしているかが、容易に想像できた。と言うより、見たまんまである。
新聞を広げている人、書物を読んでいる人、ウォークマンやアイポッドで音楽を聴く人、メモ帳にメモする人等など。
それらの機能が全てスマホにあるとは、隔世の感を禁じ得ない。

今は考えられないが、ガラケーがメインだった頃は、地下鉄全面で携帯電話はメールを打つことすら禁止されていた。
それは、心臓ペースメーカー等“植込み型医療機器”に携帯電話の電波が影響を及ぼすと言われていたからだ。

当時は、車掌さんがいちいち見回って、使っている人がいると、使わない様に指導するという、そんな時代があった。
それで、真面目なオジサン、オバサンが携帯電話を使っている人に注意してトラブルになっている姿も見かけた事がある。

現在は地下鉄の場合「専用席」が“使用禁止エリア”となっており、厳密にはそのエリアではそれらの電源を切らなければいけない事になっている。
携帯の話はこのくらいにして。

ある朝は、スッピンの女性が乗ってきて、大きなバッグから大きめの折りたたみ型のミラーを組み立て、膝に乗せると、下地クリームを塗るところから、ファンデーション、おしろい、チーク、アイシャドウ、ビューラーでまつ毛をカールし、口紅を塗るまでの一部始終を全部見た。別人完成。

どんどん変化していく行程は面白く、失礼にならない程度にチラチラと見て楽しんでいた。

お化粧はプライベートな事だ。
化粧前のスッピンを晒すことは、ちょっと恥ずかしい事に感じるし、大衆の面前で化粧なんて私は考えられない
無神経なのか、あるいはわかっていても時間が無いからしょうが無いと割り切っているのか、何れにしても凄い心臓の持ち主だ。

車内で食事をする人もたまにいる。
大抵は菓子パン1個をかじるくらいのものだが、先日は買ってきた弁当をおもむろに膝の上でひろげ、ゆっくり食べていた。
長旅ならわかるけど、南北線なら中心街への所要時間はせいぜい15分〜20分位のものだが…よっぽど何か電車の中で食べてしまわなければいけない事情でもあったのだろうか。

食べる事もやはり、プライベートな事である。
ゆったりと落ち着いた場所で、味わって食べたいものだ。
食べる姿を周囲に注目されるのも、私には耐えられそうもない。
感覚は人によって正に千差万別である。

食べ物の匂いも、狭い電車内で気になる時もある。
大体、マクドナルドやケンタッキーフライドチキンの香りは、車内に入って直ぐにわかる。
デパートで物産展などあった場合は、お漬物の匂いがちょっと気になることも。

私は風邪でもないのによく咳が出る。
昨年の今頃は、皆が得体の知れない新型コロナウィルスを最も恐れていた時期だ。
私が車内の座席で咳でもしようものなら、私の両サイドの人が飛び上がって席を立ち、私からものすごい勢いで遠ざかって行った。
それだけコロナウイルスに戦々恐々としていたのだ。

しかしコロナ禍も2年目ともなると、私が激しい咳をしても、誰も微動だにしなくなった。慣れとは恐ろしいものである。

コロナ禍になる前の話だが、一度、電車に乗ってきた若い女性が、扉が閉まった途端、入り口近くでバッタリと床に倒れてしまった事があった。
私は少し離れた所で目撃したのだが、直ぐに周辺にいた三人程の人がさっと手際良く動き出した。
電車の乗務員へ緊急ブザーを押して知らせる人、介抱する人、位置を知らせるべく開いた扉から合図する人、その何れもが3~40代の女性だった。
男性も沢山いたのに、真っ先に動いたのは皆女性である。同性として、とても頼もしさを感じた。

その女性は程なくして意識を取り戻し、乗務員が気遣っていたが「大丈夫です」と言い、普通にしていたが、貧血だったのだろうか?あの後何事もなく家路に着いていれば良いが。
突然の出来事でとても驚いた一件だった。

時々、変な人も見かける。
すごく大きな体をした男の人がいた。
お笑い芸人、安田大サーカスのクロちゃんみたいにやや甲高い声で「だいじょうぶ?」と語尾をあげながら、あちこちに声をかけながら歩いてくる。
よくよく見ると、声をかけるのは若くてかわいい女の子ばかり。見る目はあるんだなあ、と思っていると、私の前を通り過ぎた。まあ、オバサンはスルーだわ。

声をかけられた女の子はみんな、うなずいたり、「大丈夫です」と答えていた。
その大きな男の人は、帽子をかぶり眼鏡をかけ、顔は満面の笑みをたたえていた。

また別の日、同じように遠くから、大きな彼が声をかけながら歩いてくる。
今日もやってるんだなあー、と思っているうち距離が近くなった。
「だいじょうぶ?」と、なんと、驚いた事に、私に声をかけてきた。
「えー、あたしー?」心の中で叫びながら、実際にはちっちゃい声で「大丈夫です」と答えた。
どうした彼。かわいい女の子専門だったのに。目が悪くなったのか?それとも…。
変な、形容し難い喜びの様なものが、一瞬だけ湧いた。

そんな様々なドラマが繰り広げられている、地下鉄電車内の空間である。

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