先月、Iさんの誘いでTさんの家の片付けに2度ほど行った。
私たち3人は子供を通じて知り合った友人同士。一番年下のIさんは片付け上手。真ん中のTさんは片付けが苦手。3人の中で最年長の私も片付けは苦手なのだが、Iさんのお手並みを拝見しながら、勉強するつもりで行ったのだった。
Tさんの家は吹き抜けのある大きな一軒家だ。
Iさんの指揮のもと、ウォーキングクローゼットから片付け始めると、捨てるものの他に、まだ十分着られるけど不要だという衣類が大量に出た。ほぼ全てがブランド品。
「これ、フリマで売ったら高く売れるんじゃない?」私は思わずつぶやいた。
Tさんが「3万円にでもなれば、3人で温泉に行けるね」と言う。
無職で暇人の私なら、梱包好きの私なら、楽しんで出来そうだ。
名付けて“PROJECT TREASURE”
「お宝計画」
ということで、段ボールや大きな袋に詰め込まれた大量の衣類や本を、Iさんの車に積み込み我が家に持ち込んだのだった。
計画は、今年一年をかけて全て売り尽くそう。売りさばく役割の私が、勝手にそう決めた。フリマアプリへの出品は、一日3品ずつ位で、のんびりと進めることにした。
朝起きて、成すべき事が有るということは、良いことだ。毎日にハリが出る。
先ずは予備調査。
フリマアプリで過去に売れたブランド品を参考までに見てみる。日頃は目もくれないブランド品。ブランド品とは縁遠い私だ。
すると、驚いたことに、汚れていても破れていても、売れるものは売れていた。ブランド品は「腐ってもタイ」なのだった。
ブランド名が入った紙袋さえも売り物になるのだから、そう考えると「ブランド」という物の力の大きさを改めて知る。
“ブランド“恐るべし!
取り敢えず、今は主のいない息子の部屋を作業部屋に借用。早速膨大な量の衣類から少しずつ手を付ける。
衣類に付着したゴミや毛玉を取り除き、飛び出した糸などをハサミで始末。商品として、より見栄えを良くする。そして撮影。
君は写りがいいねえ、なんて画像をチェックしながら心の中でつぶやく。
私のスマホは実物よりも美しく撮れてしまう。ねぼけた色も鮮やかに。
衣類の表面、裏面のシミや汚れ部分も拡大して撮影。素材やサイズの書かれたタグも写す。
それから商品名と、詳細な説明。シミや汚れ、破れなどがある場合は、包み隠さず正直に告知。
写真の写りがあまりに鮮やかすぎる時は、実際の色合いとは違う事も記載する。
最終的に、品物相応の値段を考慮。この値段で売れたらいいな、という値段に若干上乗せして高めに設定。値引き交渉に備える。
そして、出品。
本類も、表紙の汚れを拭き取り、破れや折れが無いか中身をチェック。相場を調べるため、書名をネットで検索したりする。すると、友人の本の中に、希少価値のあるとんでも無い「お宝本」も出て来たりした。
これら一連の作業をやっていると、あっという間に時間が経過する。
日々チマチマ出品し続けたTさんの不用品は、今や150品を超えた。だから、毎日何かしら売れる。フリマアプリのチェックは欠かせない。
ある日、紳士用シャツにコメントが来た。
「250円でいいです」
250円にして下さいという意味だろうか?設定出来る最低金額は300円。
無理だなあと考えていると、もう一つ、ウールのベストにもコメントがあった。同じ人からだ。
「これもどうですか」
相手のハンドルネームから察すると、どうやらアジア系の外国の方の様だった。
合わせて考えると、どうやらシャツとベストを合わせて500円にしたい、ということらしい。
物の価格を値切る事に慣れていると見えて、大胆な値下げの要求ではあった。
そのまま希望価格を鵜呑みにするのはちょっとなあー。でも、彼らにとっては異国の、それも物価高の日本で頑張っているのだ。
しかし、“お宝計画”で「銭婆ぜにばばあ」と化した私は、「550円でどうですか」と返し、結局交渉が成立した。
また、ある日は未使用の女性用下着「スリップ」を出品すると、直ぐに「いいね」が付いた。
最近は限定セールが出来る機能が追加されたので、私は直ぐに限定セールのボタンをタップして値段を下げた。すると、直ぐに売れた。
ハンドルネームを見ると、明らかに男性だった。奥様用に買ったのかしら?妄想が始まる。止まらない…。
時折値段の設定のため、様々な物を検索するのだが、ある日奇妙な画像を発見した。
それはどう見ても、自宅にあるアルミホイルで帽子状の物を手作りしたものだ。
奇妙な長い商品名も付いている。おまけに値段が、2万円を超えていた。
出来が粗雑な、私にも作れそうな代物に万超えの値段!
好奇心から、売っているサイトへ飛ぶと、私も利用しているフリマアプリの掲載品だった。
その方の信頼度を示す評価を見ると、私がこれまで見た中でも最低の評価だった。コメント内容を見てみると、ドリンクを購入した方々からの数件のクレームが入っていた。
出品者はドリンク類を多く出品しているのだが、それぞれに本数の記載がない。掲載写真はドリンク缶1本のアップ画像。値段3,000円。
クレームをコメントに上げた購入者たちは、一箱の値段だと思い込んで購入したのだが、届くのはたったひと缶だったという。一缶3,000円。信じられない売り方だ。
フリマアプリを利用する上で最も大切なのは、先ず「出品者の評価の高さ」と「商品の詳細確認」だと改めて、肝に銘じた。加えて、送料が“出品者負担”になっていることも確認しておかないと、こちらが送料を支払うことになりかねないので注意。
こんな風に脱線しながら、午前中は出品作業、午後からは発送をしている。
その他に、出品した商品が売れたら、“帳簿もどき”も付けている。電卓片手に、手数料と送料を差っ引いて、収益を記載する。
まるで小さなお店屋さんごっこ。
これまでに売れた品数は20ほど。塵も積もれば何とやらで、収益は1万円を超えた。
もし、セカンドショップの買い取りをお願いしていたら、この半分も行かなかっただろうと思うと、やったかいがあったというものだ。
温泉旅行の旅費3万円まで、頑張るぞっと。
フリマアプリは出品だけでなく、購入者としても私は利用している。
誰かの不用品は、誰かの必要な品物に。
SDGsにもかなっている。
フリマアプリの中で経済が回っている。
「フリマをネットで展開する」このシステムを考えた人は、すごいなあ。
そんな事を感じながら、日々フリマにフリマわされている毎日なのである。楽しみながら…。