「仏教思想概要3:《中観》」の第8回です。
中観思想の本論の終盤に入っています。
今回は、ナーガールジュナ以後の中観派として「後期中観派」、そのうちのシャーンタラクシタの思想について取り上げます。
3.2.後期中観派(瑜伽中観派)
次に後期中観派の思想概要についてみてみます。後期中観派についてもすでに第1章でその概要を説明していますが、ここではその代表者でもあるシャーンタラクシタ、ラトナーカラシャーンティ(ラトナーカラ)の2人の思想を中心にみてみます。
3.2.1.インド仏教哲学の発展と二つの知識論
シャーンタラクシタの思想をみる前に、当時の仏教哲学の状況をまずみてみます。
(1)インド仏教哲学の発展状況
五世紀ごろ(世親の活躍時代)のインド仏教哲学及び以後の状況を整理してみると以下のようになります。(下図4参照)
(2)二つの知識論
各学派の主張を整理してみると、小乗系(有部と経量部)と唯識系それぞれが知識論においては、二派(無形象知識論派と有形象知識論派)にわかれていることも分かります。(下表34参照)
3.2.2. シャーンタラクシタの批判哲学
(1)シャーンタラクシタの哲学体系分類
シャーンタラクシタの批判哲学の説明に入る前に、彼の考える哲学体系をまずみてみると、次のように整理できます。(下図5参照)
(2)シャーンタラクシタの各会派批判
上記体系を基に、シャーンタラクシタの各会派の批判・評価内容を整理すると、次のようになります。(下表35参照)
シャーンタラクシタは、唯識を有部や経量部より高いもの、一般の理解においてはもっともすぐれたものと評価しました。
中観と唯識を馬車の二つの手綱にたとえて、二学派の理論を習得してはじめて大乗仏教者いえるといっているのです。
本日はここまでです。次回は「後期中観派」の実践面と、ラトナーカラシャーンティ(ラトナーカラ)の思想について取り上げます。そして、次回が最終回となります。
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