K馬日記

映画や美術、小説などの作品鑑賞の感想を徒然なるままに綴っていきます。

ジュリア・デュクルノー『RAW〜少女のめざめ〜』

2018年04月09日 | 映画
春ですね。もう2018年も1/4が終わってしまったという…あな、おそろしや!

今年は全然更新できていないのですが、既に最高の一本に出会えたのでお知らせします。ジュリア・デュクルノー監督の『RAW〜少女のめざめ〜』がもうとんでもなく良かった!




《Story》
16歳のべジタリアン、ジュスティーヌは、両親と姉と同じ獣医科大学に入学する。初めて親元を離れて、見知らぬ新しい環境である大学の寮で暮らし、生活する不安に駆られる彼女。(中略)そこで生まれて初めて自発的に肉を、ケバブを口にしたジュスティーヌは、肉の美味しさに衝撃を受け、がつがつとむしゃぶりつく。その後も夜中に無性に腹が減り生肉にかぶりつくなど、さらなる変化に戸惑うジュスティーヌは、次第に自分の内に秘めた恐ろしい本性と秘密に気づくことになる……。(「『RAW〜少女の目覚め〜』公式サイト」より)


監督の初長編作品とは思えないほど面白かったです。まず、主役のジュスティーヌを演じたガランス・マリリエンヌのなんとも言えない魅力!ルーニー・マーラとかエル・ファニングみたいなタヌキ顔好きだな。

舞台は大学の獣医学部。神童として期待されていたジュスティーヌは、厳格なベジタリアンの家で育った禁欲的な女の子。
しかし、母は車中で足をダッシュボードの上に投げ出し、店員にもクレームをつける「欲」を露わにする人格だった。この、厳格なベジタリアンという禁欲の性質と、母譲りの果てしない欲望の均衡が、家を離れたことで崩れていくという話だ。家を出て大学に入学したジュスティーヌを待っていたのは欲望のひしめく大学生活の洗礼。これは日本人学生にも馴染みあることだろう。その大学では飲酒はもちろん、ドラッグやセックスなど、ある種のダークな欲も解放されていた。





そんな欲望に満ちた大学生活でなお、優等生ぶりを発揮するジュスティーヌ。しかし、先に入学していた彼女の姉アレクシアは既に肉食の禁を破っていた。周囲が欲に塗れていく中で、彼女の抑圧された欲望も次第に顔を表す。それは最初痒みという体の異変として現れ、肉を貪り、人肉の味を知ることで完成する。姉の血を舐めた時の表現と言ったらもう最高過ぎる!特にBGMの煽りが秀逸で、抑圧されていた欲の解放とともにBGMも解放される。そして、それが後半の物語のテーマにもなっていく。





後半は姉やゲイのルームメイト アドリアンとの交流がメイン。なんと姉のアレックスも人肉の旨味を知っていたという急展開。姉は食料を確保するために交通事故を誘引し、死亡者の人肉を食らっていた。ジュスティーヌは、抑えきれない欲望を紛らわすようにアドリアンと初の性交する。その際も食人欲は現れるが、性交後はおとなしく眠るジュスティーヌ。ここで、愛情による食人欲の抑制という解決策が提示される。(アドリアンがゲイである故結ばれはしないのだが)





光明が差したように感じられたが、屍肉を求める姿を見られ異常者としてのレッテルを貼られたジュスティーヌが孤立。アドリアンは側に寄り添い眠るが、翌朝ジュスティーヌの隣には食い散らかされたアドリアンの姿が。姉アレクシアによる犯行だった。秘められていた食人欲は明るみになり、アレクシアは刑務所と入れられる。ジュスティーヌも自宅療養の立場に。
そして、最後に父親の告白によって明らかになる事実。彼女らの母親にも嘗て食人欲があったのだという。しかし、母は一人の女性として生活を送っていた。それは、夫という、自らの肉を捧げてくれる愛する存在が側に居たからであった。
少女が欲望に身を任せていく姿やその葛藤を類まれな表現方法で捉えた本作!個人的に好みドンピシャ過ぎる!

今年これを超える作品は現れるのだろうか。


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