K馬日記

映画や美術、小説などの作品鑑賞の感想を徒然なるままに綴っていきます。

ある男

2023年11月19日 | 文学
最近映画ばかりなのでたまには小説でも、ということで平野啓一郎の『ある男』のご紹介です。丁度先日同氏の『本心』を読了いたしまして、せっかくなら平野啓一郎のヒューマニズム三部作の感想は書こうじゃないかと思い至ったわけです。弁護士の城戸は、かつての依頼者である里枝から、「ある男」についての奇妙な相談を受ける。宮崎に住んでいる里枝には2歳の次男を脳腫瘍で失って、夫と別れた過去があった。長男を引き取って14 . . . Read more

キュー

2021年06月12日 | 文学
久しぶりの更新です。4月・5月全く更新せず気づけば梅雨入りが目の前に……時の流れの残酷さは誰にでも平等ですね。今回は敬愛するSF作家上田岳弘氏の『キュー』をご紹介いたします。さあ、今から「世界最終戦争」を始めよう。人類を終わりにするために。平凡な医師の僕が突然拉致された先では、世界の趨勢を巡る暗闘が繰り広げられていた。その中心には、長年寝たきりのはずの祖父がいるという。そして明かされる祖父の秘密、 . . . Read more

上田岳弘『ニムロッド』

2019年08月27日 | 文学
今回は久し振りに小説で更新。敬愛する上田岳弘氏による第160回芥川賞受賞作『ニムロッド』です。仮想通貨をネット空間で「採掘」する僕・中本哲史。 中絶と離婚のトラウマを抱えた外資系証券会社勤務の恋人・田久保紀子。 小説家への夢に挫折した同僚・ニムロッドこと荷室仁。……やがて僕たちは、個であることをやめ、全能になって世界に溶ける。「すべては取り換え可能であった」という答えを残して。 ……講談社BOOK . . . Read more

岩竹千佐子『おらおらでひとりいぐも』

2018年05月02日 | 文学
とうとうゴールデンウィークに突入しましたね2018年も1/3終わったというおなじみのフレーズがこの歳になると笑えなくなってきます。 寄る年波に勝ちたいただけーまです。 久しぶりに小説で投稿します。今回は最年長の63歳で文藝賞(第54回)を、75歳黒田夏子さん(『abさんご』)に次ぐ高齢で芥川賞を受賞した岩竹千佐子さんの『おらおらでひとりいぐも』の読書感想文です。 《Story》 74歳、 . . . Read more

上田岳弘『太陽・惑星』より「惑星」

2017年10月18日 | 文学
こんばんは。いよいよ秋も深まり肌寒くなって来ましたね。 今回も前回の続きで、上田岳弘さんの『太陽・惑星』を紹介します。前回更新した「太陽」と対となる、後半に収録された「惑星」についての所感です。 《Story》 アフリカの赤ちゃん工場、新宿のデリヘル、パリの蚤の市、インドの湖畔。地球上の様々な出来事が交錯し、飽くなき欲望の果て不老不死を実現した人類が、考えうるすべての経験をし尽くしたとき . . . Read more

上田岳弘『太陽・惑星』より「太陽」

2017年10月12日 | 文学
こんばんは。季節の変わり目で喉をやられてしまったただけいまです。アラサーなので健康には気をつけたいですね。 今回も前回に引き続き上田岳弘さんの小説を取り上げたいと思います。『太陽・惑星』という単行本で、第45回新潮新人賞を受賞した「太陽」と対となる「惑星」が収録されています。 今回は、前半に収録されている「太陽」の所感を記しました。近日中に「惑星」の感想も書きます。 《Story》 アフ . . . Read more

上田岳弘『私の恋人』

2017年09月21日 | 文学
こんばんは。秋といえば読書の秋!ということで、久しぶりに小説ネタです。 昨年末に読み終えた小説、上田岳弘さんの『私の恋人』を紹介します。 アメトークの読書芸人でピースの又吉さんが推薦していた本です。人生の3週目に入った主人公という設定が気になって試し読みし、冒頭で引き込まれて購入してしまいました。 《Story》 時空を超えて転生する「私」の10万年越しの恋。 旧石器時代の洞窟で、ナチス . . . Read more

平野啓一郎『マチネの終わりに』

2017年04月23日 | 文学
こんにちは。最近あったかくなりましたね。初ヨーロッパで慌てふためいているただけーまです。 今回は久しぶりに小説の感想です。昨年、アメトークの本大好き芸人でも話題になった平野啓一郎さんの『マチネの終わりに』です。※特設サイトにリンクします。 マチネ(matinee)とはフランス語で「朝・午前」を意味する単語ですが、とりわけクラシックの世界では「昼の演奏会」を意味します。 クラシックギタリスト . . . Read more

澤村伊智『ずうのめ人形』

2016年09月28日 | 文学
こんばんは。最近ホラーに接する機会が多いただけーまです。 今回は新進気鋭のホラー小説家、澤村伊智さんの二作目『ずうのめ人形』の紹介です。 <Story> 不審死を遂げたライターが遺した原稿。オカルト雑誌で働く藤間は、作中に登場する「ずうのめ人形」という都市伝説に惹かれていく。読み進めるごとに現実に現れる喪服の人形。迫り来る怪異を防ぐため、藤間は先輩である野崎に助けを求めるが―は . . . Read more

村田沙耶香『コンビニ人間』

2016年08月22日 | 文学
こんばんは。書くべき案件が溜まりすぎて更新が追いついていないただけーまです。オリンピック意外と面白いですね。ふと見たシンクロで感動してしまいました。 さてさて、今回は久しぶりに小説で更新。巷で話題の芥川賞受賞作、村田沙耶香さんの『コンビニ人間』を読みました。 「コンビニの店員」としてしか生きられない合理主義を徹底する非人間的な主人公が、共有概念の浸透した社会で人間的な在り方を模索していく話 . . . Read more