K馬日記

映画や美術、小説などの作品鑑賞の感想を徒然なるままに綴っていきます。

【2022年】個人的映画ランキング

2023年07月31日 | 映画
非常に今更なんですがブログ上では書けていなかった昨年の映画ランキングベスト10を発表します。昨年は社会問題に切り込んだ作品に感銘を受けていたのか、社会派映画が多かったですね。比較的エンタメ寄りだった2021年の映画ランキングと見比べると傾向が違い過ぎて…


【第1位】アテナ(Athena)
ロマン・ガヴラス監督
製作国:フランス
日本公開日:2022年9月23日
 


昨年No.1はロマン・ガヴラス監督の『アテナ』でした。過去観たNetflix映画の中で今のところベストです。フランス パリの移民を標的にした極右勢力による悲劇。まさに今同じようなことがパリで起こっています。警察官による移民青年の射殺、まるで予言のようにピタリと本作のストーリーと合致します。
実は同じテーマでラジ・リ監督による『レ・ミゼラブル』というフランス映画が2020年に公開されており、彼は本作の脚本製作にも携わっています。※『レ・ミゼラブル』の感想はこちら
まず衝撃的なのは冒頭11分の1カットシーン。導入部分からクライマックスの炎上シーンまでの迫力が圧巻過ぎて思わず笑ってしまいます。Netflixで『アテナ: 制作の舞台裏』というコンテンツが配信されるほど。これはもう観てみないと伝わらないのでぜひ観ていただきたいところです。


【第2位】ナワリヌイ(Navalny)
ダニエル・ロアー監督
製作国:アメリカ
日本公開日:2022年6月11日
 


プーチンが名前も呼びたくないというロシア民主主義の象徴、アレクセイ・ナワリヌイのドキュメンタリー映画。ロシア産神経毒ノビチョクで瀕死となったナワリヌイが、政府の暗部に切り込んでいき理不尽な形で投獄されるまでを映す。正々堂々と追い詰めていく正義が理不尽なやり方で負けていく無力感はメキシコの麻薬カルテルを追った『カルテル・ランド』のホセ・ミレレス医師や『コレクティブ 国家の嘘』でルーマニアの汚職事件に切り込んだ元保健大臣のヴラド・ヴォイクレスクを彷彿とさせます。
正義は必ず勝つとは限らない―という眼を背けたくなる現実を見せると同時に、鑑賞者の正義感にも問いかけるような作品です。


【第3位】チェチェンへようこそ ―ゲイの粛清―(Welcome to Chechnya: The Gay Purge)
デヴィッド・フランス監督
製作国:アメリカ
日本公開日:2022年2月26日
 


ロシアを構成するイスラーム国、チェチェン共和国におけるセクシャルマイノリティへの迫害を扱ったドキュメンタリー映画。イスラーム教では同性愛行為は禁じられており、「チェチェンにゲイは存在しない」と言い切るカディロフの独裁者ぶりたるや。個人が特定されないようディープフェイク技術を活用して作られており、言われなければ違和感に気付かないほど。


【第4位】シン・ウルトラマン(Shin Ultraman)
庵野秀明監督
製作国:日本
日本公開日:2022年5月13日
 


庵野監督のシンシリーズ。個人的に『シン・ゴジラ』が刺さっていなかった(ハリウッド版の方が良かった)ので不安でしたが、『シン・ウルトラマン』は面白かった。異星人を中心とした原作愛を感じるストーリー。ゼットンを兵器とする発想よ…結局『シン・ウルトラセブン』はやるのですか!?メトロン星人と人情味溢れるやり取りを繰り広げてほしいところです。


【第5位】ゴースト・フリート 知られざるシーフード産業の闇(Ghost Fleet)
シャノン・サービス/ジェフリー・ウォルドロン監督
製作国:アメリカ
日本公開日:2022年5月28日
 


タイで行われていた現代奴隷海産貿易の実態に迫ったドキュメンタリー。2017年にノーベル平和賞にノミネートされた、パティマ・タンプチャヤクル(Patima Tungpuchayakul)氏の動向に密着した作品。タイトルの「幽霊船」は、まさに拉致した漁民を人として扱っていない漁業業界を痛烈に非難しているように感じます。


【第6位】親愛なる同志たちへ(Dear Comrades! )
アンドレイ・コンチャロフスキー監督
製作国:ロシア
日本公開日:2022年4月8日
 


スターリン死後のフルシチョフ政権下、エリート共産党員のリューダと民主主義に傾倒する娘スヴェッカの絆を描いた史実ベースの物語。ソ連史上最大の労働者蜂起であるノボチェルカッスク事件で娘が行方不明となり、共産党員としての誇りと娘への愛情の狭間で揺れるリューダの心情が見どころです。「きっと良い未来になる」と呟くラストシーンの美しさよ。


【第7位】アネット(Annette)
レオス・カラックス監督
製作国:アメリカ・フランス
日本公開日:2022年4月1日


スパークスが音楽を手がけたミュージカル映画、予告編によると「DARK FANTASY ROCK OPERA」というジャンルらしいです笑 スパークスが「So May We Start」をレコーディングするシーンからそのまま本編に入っていく冒頭シーンがクール。話自体は予測しやすいヒューマンドラマですが、音楽とアネット人形の不気味さが癖になる作品です。



【第8位】ハッチング ―孵化―(Hatching)
ハンナ・ベルイホルム監督
製作国:フィンランド・スウェーデン
日本公開日:2022年4月15日


個人的に好みの北欧ダークファンタジー。『テルマ』にも通じる完全な個人の趣味嗜好によるランクインです。幸せな家族像をSNSで発信するカティヤの母親は体操選手という嘗ての自分の夢を娘に押し付ける毒親。思春期を迎えた娘のストレスが拾ってきた卵から孵化したのは…成長するにつれて自分の姿に近づく不気味な鳥!最後の結末も秀逸な作品でした。


【第9位】犬王(Inu-Oh)
湯浅政明監督
製作国:日本
日本公開日:2022年5月28日


室町時代に観阿弥世阿弥と人気を二分した実在の能の名手、犬王(道阿弥)をポップスターとして描いたミュージカルアニメ映画作品。琵琶法師×ロック音楽という設定が新鮮で、松本大洋のキャラ造形や湯浅政明の独特なアニメーションの組合せにジャパニメーションの粋を感じます。犬王を演じた女王蜂のアヴちゃんが歌うクイーンを感じさせるロック音楽も◎




【第10位】ファイアー・オブ・ラブ 火山に人生を捧げた夫婦(Fire of Love)
サラ・ドーサ監督
製作国:アメリカ・カナダ
日本公開日:2022年11月11日


雲仙普賢岳の噴火に巻き込まれ命を落としたフランス人火山学者、クラフト夫妻の生涯を追ったドキュメンタリー映画。火山の映像そのものが持つエネルギーも見応えがありますが、冒頭のシーン直後に放たれるナレーション「翌日、二人は亡くなる (Tomorrow will be the last day)」の衝撃。ミランダ・ジュライのナレーションも耳心地良いです。 


今年も半分過ぎましたがやはり日本に居ないせいか鑑賞数はガクッと減りました…今後何本観られるかわかりませんが、今のところ『ホエール』が圧倒的に1位ですかね…次点で『イニシェリン島の精霊』かな?
今は『THE FIRST SLAM DUNK 』と『君たちはどう生きるか (英題 "The Boy and The Heron")』がロンドンで公開されることを祈るばかりです。

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2 Comments

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Unknown (けまお)
2023-08-05 13:04:11
社会派だね
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Unknown (tadakeima)
2023-08-05 19:43:14
@もう1人のけまおさん やはり社会派映画の方が骨太な印象がありますね。
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