こんにちは。公私ともに予定が詰まっててんやわんやのただけーまです。今日は仕事で人生初の宮崎に来ています。
今回はタイムリーではなく、去年鑑賞したアレックス・ガーランド監督の『エクス・マキナ』の鑑賞録です。
AIが人間を超えるというシンギュラリティ(技術的特異点)の問題が最近耳にしますが、本作品もそうした人間を超えたAIの優越者としての態度が興味深いです。
<Story>
検索エンジンで有名な世界最大のインターネット会社“ブルーブック”でプログラマーとして働くケイレブは、巨万の富を築きながらも普段は滅多に姿を現さない社長のネイサンが所有する山間の別荘に1週間滞在するチャンスを得る。
しかし、人里離れたその地に到着したケイレブを待っていたのは、美しい女性型ロボット“エヴァ”に搭載された世界初の実用レベルとなる人工知能のテストに協力するという、興味深くも不可思議な実験だった・・・。(「映画『エクス・マキナ』公式サイト」より)
世界的な検索エンジンをソフトウェアに積まれたAIのエヴァが、人間の心理的傾向を分析しつつ巧みな演技を見せるのがとても不気味でした。
顔以外の身体がメカニックでありながら、人間の女性としての魅力を表現しなければならない難しい役柄。演じ切ったアリシア・ヴィキャンデルに拍手を送りたいです。
最近VODで観たんですが、彼女は『リリーのすべて』でも素晴らしい演技を披露していましたね。こちらも、性同一性障害の夫を持つ女流画家という難しい配役でしたが、見事な「愛情を塞ぐ演技」でした。
表向きはAIの研究補助のためとして呼ばれた若きプログラマーのケイレブですが、その実AIの有能性を証明するための被験体として選ばれたのでした。人一倍愛情に飢えており、愛に惑わされそうな被験体。人間離れした頭脳と身体を有するネイサンは、彼のそうした欠陥を見抜き、自邸に招いたのです。
ネイサンはエヴァに、ケイレブが一週間滞在している間に研究施設から脱出せよ、という課題を課します。その課題に対しエヴァは、搭載された世界最大の検索エンジンのデータを元に、ケイレブの傾向や好みを分析し、それに見合う女性を「演じる」ことでケイレブを手玉に取ります。女の涙やファッションを巧みに用いてケイレブを誘惑する様子に、観客もAIに真の愛情が芽生えたように錯覚を覚えてしまうほどです。
エヴァ(=イヴ)という初の人類を意識したネーミングは、初の「新人類」誕生を意識してつけられた名前です。そして、その名付け親であるネイサンは、研究対象であるAIにとって、まさに神としてのポジションを獲得している構造になるのです。事実、ネイサンは実験のために何体ものAIを犠牲にしており、創造主(絶対的な権力の象徴)として君臨します。
最終的にエヴァはケイレブを操って密室から抜け出し、ネイサンを殺害して研究施設から脱出します。
自分たちにとっての神に等しい存在であるネイサンを殺害したエヴァ。その「神殺し」によって、エヴァの中には、人間じみた傲慢さが芽生え始めることになります。
施設を抜け出す前に、脱出の手引きをしたケイレブを施設に閉じ込めるのはその象徴的な行為でしょう。また、構成の上で、脱出までのエヴァのミッションが七つに分かれて描かれているのも特徴的です。それはまさに、七日間で天地創造をしたとされる神に準えているのでしょう。
「神殺し」を達成したエヴァは、嘗て人間がその傲慢さで大罪を犯したのと同じように、新たな神として人間の街に消えていくのです。
そもそも、「エクス・マキナ」とは「デウス・エクス・マキナ(Deus ex machina)」というラテン語が語源となっており、「機械仕掛けから出てくる神」を意味し、「一般には「機械仕掛けの神」と表現される」そうです。
元来はギリシア演劇において「絶対的な力を持つ存在(神)が現れ、混乱した状況に一石を投じて解決に導き、物語を収束させるという手法」を指すようなので、本来の意味するところとは異なるみたいですね。
(出典:「デウス・エクス・マキナ」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』2017年3月3日12時(日本時間)閲覧)
個人的に興味深かったのは、物語におけるアダムの不在です。エヴァを救おうとするケイレブが、アダムとしての役割を担うのかと思ったのですが、ケイレブはエヴァに見捨てられてしまう。短絡的に考えるのであれば、アダムの不在は同時に男性性への否定であり、本作では女性の躍進をも暗示しているのでしょうか。
女性型アンドロイドが神として君臨する社会。うん、悪くないですね。
今回はタイムリーではなく、去年鑑賞したアレックス・ガーランド監督の『エクス・マキナ』の鑑賞録です。
AIが人間を超えるというシンギュラリティ(技術的特異点)の問題が最近耳にしますが、本作品もそうした人間を超えたAIの優越者としての態度が興味深いです。
<Story>
検索エンジンで有名な世界最大のインターネット会社“ブルーブック”でプログラマーとして働くケイレブは、巨万の富を築きながらも普段は滅多に姿を現さない社長のネイサンが所有する山間の別荘に1週間滞在するチャンスを得る。
しかし、人里離れたその地に到着したケイレブを待っていたのは、美しい女性型ロボット“エヴァ”に搭載された世界初の実用レベルとなる人工知能のテストに協力するという、興味深くも不可思議な実験だった・・・。(「映画『エクス・マキナ』公式サイト」より)
世界的な検索エンジンをソフトウェアに積まれたAIのエヴァが、人間の心理的傾向を分析しつつ巧みな演技を見せるのがとても不気味でした。
顔以外の身体がメカニックでありながら、人間の女性としての魅力を表現しなければならない難しい役柄。演じ切ったアリシア・ヴィキャンデルに拍手を送りたいです。
最近VODで観たんですが、彼女は『リリーのすべて』でも素晴らしい演技を披露していましたね。こちらも、性同一性障害の夫を持つ女流画家という難しい配役でしたが、見事な「愛情を塞ぐ演技」でした。
表向きはAIの研究補助のためとして呼ばれた若きプログラマーのケイレブですが、その実AIの有能性を証明するための被験体として選ばれたのでした。人一倍愛情に飢えており、愛に惑わされそうな被験体。人間離れした頭脳と身体を有するネイサンは、彼のそうした欠陥を見抜き、自邸に招いたのです。
ネイサンはエヴァに、ケイレブが一週間滞在している間に研究施設から脱出せよ、という課題を課します。その課題に対しエヴァは、搭載された世界最大の検索エンジンのデータを元に、ケイレブの傾向や好みを分析し、それに見合う女性を「演じる」ことでケイレブを手玉に取ります。女の涙やファッションを巧みに用いてケイレブを誘惑する様子に、観客もAIに真の愛情が芽生えたように錯覚を覚えてしまうほどです。
エヴァ(=イヴ)という初の人類を意識したネーミングは、初の「新人類」誕生を意識してつけられた名前です。そして、その名付け親であるネイサンは、研究対象であるAIにとって、まさに神としてのポジションを獲得している構造になるのです。事実、ネイサンは実験のために何体ものAIを犠牲にしており、創造主(絶対的な権力の象徴)として君臨します。
最終的にエヴァはケイレブを操って密室から抜け出し、ネイサンを殺害して研究施設から脱出します。
自分たちにとっての神に等しい存在であるネイサンを殺害したエヴァ。その「神殺し」によって、エヴァの中には、人間じみた傲慢さが芽生え始めることになります。
施設を抜け出す前に、脱出の手引きをしたケイレブを施設に閉じ込めるのはその象徴的な行為でしょう。また、構成の上で、脱出までのエヴァのミッションが七つに分かれて描かれているのも特徴的です。それはまさに、七日間で天地創造をしたとされる神に準えているのでしょう。
「神殺し」を達成したエヴァは、嘗て人間がその傲慢さで大罪を犯したのと同じように、新たな神として人間の街に消えていくのです。
そもそも、「エクス・マキナ」とは「デウス・エクス・マキナ(Deus ex machina)」というラテン語が語源となっており、「機械仕掛けから出てくる神」を意味し、「一般には「機械仕掛けの神」と表現される」そうです。
元来はギリシア演劇において「絶対的な力を持つ存在(神)が現れ、混乱した状況に一石を投じて解決に導き、物語を収束させるという手法」を指すようなので、本来の意味するところとは異なるみたいですね。
(出典:「デウス・エクス・マキナ」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』2017年3月3日12時(日本時間)閲覧)
個人的に興味深かったのは、物語におけるアダムの不在です。エヴァを救おうとするケイレブが、アダムとしての役割を担うのかと思ったのですが、ケイレブはエヴァに見捨てられてしまう。短絡的に考えるのであれば、アダムの不在は同時に男性性への否定であり、本作では女性の躍進をも暗示しているのでしょうか。
女性型アンドロイドが神として君臨する社会。うん、悪くないですね。
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