映画:「ぼっちゃん」公開中、大森立嗣監督 秋葉原無差別殺傷事件がモデル、被告を完全否定してもいいのか
毎日新聞 2013年03月25日 東京夕刊
公開中の映画「ぼっちゃん」は、秋葉原無差別殺傷事件の被告がモデル。常識や規範の外側から社会を描いてきた、大森立嗣監督の新作だ。
取材はしたが「説明になってしまう」と実際の事件をたどるのはやめた。自意識と劣等感に縛られた主人公梶の、友情や失恋、孤独感を、時に喜劇風に、時にスリラー調に重ねていく。
「通り魔事件の犯人を完全に否定していいのか。法治国家だから処罰されるのは当然だが、彼らも前日まで、我々と同じルールの中で生活し、同じ風景を見ていたはず。映画なら、ある状況を作って俳優の肉体を投げ込むことで、法や裁判で明らかにならない何かに触れられるのではないか」。低予算のこの映画でも、方法論は一貫している。
梶は理解できない他者ではなく、屈折してはいるが平凡な人間として現れる。「撮影中に梶に愛着がわいて、秋葉原に行かせるのをやめようかと迷った。といって現実はそんなに能天気ではないし」。映画の最後に、監督の希望と憤りが重なっている。【勝田友巳】
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