1月上旬のことで、もう一ヶ月前にもなるが、
嘉麻市にある織田廣喜美術館へ、展覧会を観に行った。
"Chikuhou Cute Collection 描かれた乙女たち"展だ。
開催会場となっている、嘉麻市の織田廣喜美術館のほか、
田川市にある田川市美術館,直方市にある直方谷尾美術館。
福岡県の筑豊地区にある、3つの美術館が所蔵する作品を持ち寄っての企画展。
今回は"描かれた乙女たち"というテーマで、
少女を中心に女性を主体に描かれた作品が集められての展示会。
持ち寄り展は今回で2回目らしい。
1回目のテーマって何だったんだろう?
出展作の作者一覧。
ザラ紙で、すごく低予算なこの目録・・・。
一般入館料だけで観られるのだから贅沢は言うまい。
1月上旬にとれた連休の2日目。
1日目は、大分へのドライブ旅行を楽しみ、2日目はぽっかりと空いた。
とくに予定は立てていなかったが、なんとなく美術館のサイトを覗いてみた。
そこでこの持ち寄り展が開催されていることを知り、すぐ近くだしと出かけた。
織田廣喜美術館へは、数年前に行った大河原邦男展以来だ。
あ、その後に甥っ子連れて、昆虫標本展に行ったっけ。
このブログ記事にはしてないけれど。
織田廣喜美術館
美術館へ着くと、駐車場がいっぱいで車が止められない!
あれ?
田舎町の辺鄙な場所にある美術館。
この日は成人の日で祝日。
とはいえ、あの大河原邦男展のときだって駐車場は、ここまで埋まっていなかったぞ。
祝日とはいっても、現在 開催中の企画展がそんな集客ある展覧会とは思えない。
隣にある図書館や郷土資料館にも来館者の姿があったけれど、それほどの人数にも思えない。
いつ来たって空いているのに、なんで今日はこんなにも混んでいるんだ?
不思議に思いつつも、Uターンして隣の図書館の方に戻って、
一台ぶんだけ空いていたスペースに車を止める。
相変わらず外からだと開いてんだか閉まってんだか判らない入口。
わざわざ案内看板に「開催してます」なんてデカデカ書くくらいなら、
もうちょっと外からも開いてると判るような入口にしなさいよと。
図書館の駐車場から、美術館まで歩く。
とはいっても、100mあるかないかの距離。
入口で、相変わらずだなあと苦笑する。
ガラスのドアも周りのガラスにも、カーテンのような装飾で覆われていて中がまったく見えない。
やってんのかやってないのか判らない。
自分はもう何度か来ているので判っているのだけど、
これ初めて来たひとは絶対に戸惑うよな。
自分も初めて来た時は、え!?今日休みなん!?って、入口で止まったもん。
受付で入館料を支払う。
今回の持ち寄り展、特別料金は要らなくて、通常の入館料のみで観覧できる。
これはリーズナブルだ!
そう思っていたら、手渡された作品リストで納得する。
ザラ紙で作られた、一枚の粗末な紙きれ。
作者の一覧と、作品リストが掲載されている。
予算ないんだろうな・・・。
そう悟って、それを手に会場へ行こうとしたら・・・!
奥の方から美術館らしからぬ、すごい賑やかな行列がやって来る!!
地元の園児たちだろうか?
なんか動物だのロボット?だの、ピカチュウだの・・・。
切ったり貼ったり色塗ったりされ、思い思いに加工された段ボールに身を包んで、
幼児たちが、その保護者とおぼしき大人たちと一緒にぞろぞろと出てきた。
え!え!?
なにこれ?!!
ハロウィンって今日だったっけ??
あっけにとられ、思わず通路の脇に避け、その仮装行列をやり過ごす。
なんかイベントやってたんだろうな・・・。
駐車場が埋まっていたのはこのためか!
作品リストの一部。
気を取り直して、展覧会場へと進む。
入れ違いに、マダム二人が出てきた。
「やっぱね、あのタッチは真似できないのよ!」
「そうよね、色遣いが独特ですものね!」
よく判らないけれど、このマダム二人も絵をたしなんでいらっしゃるのだろう。
展示されていた誰かの作品に触発でもされたのだろうな?
言葉づかいから察するに、筑豊のひとじゃあないな。
そんなことを考えながら、展示室へ--。
織田廣喜氏のポストカード。
上の二枚は代表的な少女シリーズ。
「少女」というタイトルで、赤い帽子(青もある)をかぶった少女の、似たような絵がたくさんある。
この美術館に名を冠している、
嘉麻市出身の洋画家、織田廣喜氏の代表作、少女シリーズをはじめ、
その息子である織田廣比古氏や、築山節生氏,立花重雄氏など、
筑豊に縁のある画家たちの作品が並ぶ。
グラフィックデザイナーの、松永真氏のよく見かけるロゴマークの原画までも。
なかには、これ少女・・?
・・というよりも、まず女性なの??っていうのもあったけれど、
洋画,日本画,版画と、多種多様な作品が並ぶ。
築山節生氏の"秋田おぼこ”ってタイトルの作品群が気に入った。
おそらく秋田美人というか、色白でほっぺの赤い、垢抜けていない少女の絵。
"おぼこ"って、"おんなのこ"って意味かな?
そう思って調べてみたら、秋田山形地方で、"娘"って意味だそう。
まあ外れてはいなかったか。
作品数は決して多くはなかったけれど、
そのぶんひとつひとつの作品を、じっくりと気が済むまで鑑賞できる。
なによりも、ふつう会場の隅っこに座っている学芸員がひとりも居らず、
自分以外に客も誰ひとり居らず、独占貸し切り状態で絵を鑑賞できた。
順路を過ぎても、気になった作品の元へと戻り、また観直すことだってできる。
さっきの仮装行列の子どもたちの騒ぎ声が かすかに聞こえてくるけれど、気にはならない。
企画展を観終えて、常設展示場へ。
ここには織田廣喜氏の作品が、年代別・ジャンル別に常設展示されている。
また、織田氏と親交のあった写真家、林忠彦氏が撮った、
若かりし日の織田氏や家族たちの貴重な写真パネルも展示されている。
毎回、展示品が変わらないのだけど、ここへ来たら、この常設展もひととおり観てしまう。
展示室を出ると、受付のおねえさんが待ち構えていた。
自分の方へと歩み寄ってくる、おねえさん。
え?何!?
「もう全てご覧になられましたか?」
「どの作品の乙女がいちばん好みだったか、投票をしていただいてまして・・・。」
そう説明されて、赤いシールを一枚手渡される。
出口の横の壁に、企画展に展示されていた作品のリストが貼られていた。
よく見ると、個々の作品の下に枠があり、
そこへ自分がもらった赤いシールがペタペタと貼られている。
これまで来館して、この企画展を観た客たちが投票していった跡だ。
うーん・・・どれにしようか、悩む。
本当にかわいらしく描かれたものもあったし、
エロティックで官能的なヌード画もあったし、
リアルタッチなものもあれば、デフォルメタッチなものもあったし・・・
!
自分の真後ろで、シールくれた おねえさん、ずっと笑顔で立っている!
おいおい、おねえさん、俺がどれに投票するのか見るのかよ!
これはエロいのに貼ったら、
「うわー助平!!」とか思ったりするんじゃ・・・!
そんなしなくてもいい心配をしつつも、投票する作品を決めた。
やっぱり築山氏の秋田おぼこのなかの、女車掌さんの絵かな?
雪国で働く若い女性の、なんともいえない味のあるタッチが印象的だった。
よし、それにしよう!
おっと・・・既に誰か一票投じている!
自分以外にもこういう、オツな好みなひとが居たのね。
筑豊地区3つの美術館のパンフレット。
直方谷尾美術館だけ行ったことないや。
小規模な展覧会だったが、まあまあ良かった。
あの段ボールの子どもたちのイベントもそうだけど、
筑豊の美術館も色々とアイデアを絞って企画しているみたいだ。
低予算で集客し、いかにして運営を続けて行くべきか・・・。
地方の小規模の美術館は運営が厳しいのだろうな。
最寄りの田川市美術館だって、数年前、市の"事業仕分け”によって、
不採算な美術館運営が真っ先にやり玉に挙げられた。
それによって各地を巡回する、大きな企画展が催されなくなり、
もう地元の児童絵画展とか、市民の作品展とか、
そういったもの主体の美術館になってしまって久しい。
たまに企画展が来るけれど、絵本原画展とかで、
どちらかというと芸術作品を鑑賞するのではなく、
ファミリーで、その世界観を楽しむような、そういった企画展ばかり。
大規模に土地を整地して、企業を誘致しようとしても、
治安の悪さや良質な労働力不足から、新たに工場や倉庫ができるわけでもなく、
地元土建屋が議会に名を連ね、生活保護受給者と、でっかいパチンコ店が増えていくばかり。
こんな状況家で財政状況が厳しいのは誰が見ても明白で、
文化振興やスポーツ振興などには、満足に拠出できないってのが現状なんだろうな。
そんな寂しい現実を考えながら、美術館を後にした。
織田廣喜氏のフレーム切手が販売されていた。
2シート購入したものの、額面が80円だったので、
これ実際に使おうと思ったら、別に2円切手が要るな・・・。
織田廣喜美術館のロゴマークは、氏の代表作、少女シリーズの赤い帽子がイメージされている。
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