風にまかせてふわふわり。。。

生きていると色んなことがある。

回顧録

2021年03月06日 23時34分29秒 | 子どものこと

今朝、外から聞こえる子どもらの声に、あるエピソードを思い出した。


今から30年ほど前のこと。
保育士だった私は、3歳児15人を1人で担任していた。

その日はお散歩で、図書館へ借りている本を返しに行こうとしていた。
排泄をすませ、それぞれのリュックにそれぞれが借りた本を入れ、用意のできた子から靴を履いた。

「行けへん!」登所時から機嫌の悪かったT。
この子が機嫌を損ねると、他の14人が振り回されることは多々あった。
言い分を聞くが、家での朝の出来事を引きずっているので、保育士だけでは対応のしようがない。
「お母ちゃんにゆーとくから」ぐらいでは、首を縦には振らない。

時間だけが過ぎていく。
散歩に出るタイムリミット。

Tを置いていくことに決めた。
詳細は省くが、ここを譲るとこれからずっと散歩に行けなくなる…と踏んだからだ。

Tにその旨伝えて、一緒に散歩に行く筈だった主任保育士にTを委ねた。
Tも主任保育士も了解してくれた。

30年前だからできたことだろう…
散歩に来ている子どもらを眺めながら懐かしく思った。
今の時代なら、Tの保育を放棄したと言われかねない。

…で、散歩から帰ったらTが寄ってきた。
そして決まり悪そうに小さな声で「ごめん」と言った。

それからだ。
Tは素直に甘えてくるようになった。
待てるようにもなった。
描く絵が変わり、お話を語ってくれるようになった。

置いて行った2時間ほどの間に、何があったのかは分からない。
けれど、そうしたことで、Tとの信頼関係が深まったことは間違いないだろう。



大学を出て、地域の青年団で子どもらの面倒を見ている…と耳にしたのは、かれこれ10年ほど前。
きっと、いい大人になっているんだろう。

昔受けた講座で、講師の秋葉英則先生が仰った。
子どもは本気で向き合ってくれる大人を見逃さない。
誤魔化しは効かない。
」と。

私の子育てを支えた言葉の1つ。
大人以上に、子どもって本物。


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