原子力発電は、燃料のウランの採掘から各工程にわたり、大量の汚染された核廃棄物(放射性廃棄物)を生み出します。
核廃棄物は、汚染のレベルや形状により、図のように分類されてますが、埋め立て処分が始まっている一番危険度の低い、低レベルの核廃棄物を除き、多くの核廃棄物は処分の方法さえ決まっていません。この低レベルの核廃棄物でさえ300年にわたる管理が必要とされています。
各工程からでる核廃棄物を説明します。まず燃料のウランからです。
ウランを含む鉱石は、オーストラリア・カナダ・南アフリカ・アメリカ・カザフスタンなどで採掘されていますが、その現場では放射性物質を含んだ土ぼこりが舞い、取り出されるウランの何万倍もの残土が発生します。
次にウランの加工です。この図ではを簡略化のため、ウラン濃縮・燃料加工施設として、1つの工場みたいになっていますが、実際はウランを掘り出してから日本の原発の燃料となるためには、いくつもの工場が必要となります(下記参照)。
それらの工場では、毎日、劣化ウランやウラン廃棄物が生み出されています。原発の燃料となるウランを1kg取り出すためには、85tもの核廃棄物が発生します。残土は現場に放置され、劣化ウランは爆弾に使用されます。また、ウラン廃棄物の中には、低レベル廃棄物として埋め立て処分できないものも多く含まれています。
続いて、ウランを使用する原子力発電所ですが、今年9月まで稼動していた大飯原発のような、100万kw級原発1基が1年間稼動するだけで、ドラム缶1000本もの低レベル廃棄物が発生し、発電に使われた30tの燃料はそのまますべての量が、使用済み核燃料となり、今後10万年もの間、管理し続けなければならない、高レベル核廃棄物よりさらに危険な核廃棄物となります。
昨年の8月から今年の9月まで、やく13ヶ月間、大飯原発の2基が稼動しましたが、最低でも500万トンを超える汚染された残土と劣化ウラン・ウラン廃棄物、ドラム缶2000本の低レベル廃棄物、そして近づいただけで即死するという使用済み核燃料が60トンも生み出されました。
そして、これから浜岡をはじめ、いくつもの原発の廃炉作業、および、福島第1原発事故の収束作業や除染作業にともなって、大量の核廃棄物が発生します。
商業炉で初めて12年前に廃炉が始まり、20年完了を目指す原電の東海原発(茨城県)でさえ、工程が折り返しを過ぎた今も処分先は「国との間でもまだ話は出ていない」という状態です。しかしながら、低レベル放射性廃棄物は計2万3500トンにもなる見通しです。この東海発電所の出力はわずかに16万キロワット。これから始まる100万Kw級の原発の廃炉作業には膨大な量の核廃棄物が発生します。
これだけでも頭がくらくらするような状況なのですが、国や電力会社は、さらに図のような核燃料サイクルを推進しています。青森県の六ヶ所村にある再処理工場はすでに完成しており、現在試験操業中です。その隣接地ではMOX燃料加工工場が3年後の完成を目指して建設中です。
この2つの工場では、ウランやプルトニウムを溶かして作業するため、周りの環境を汚染しながら大量の放射性廃棄物が発生します。同じような工場があるイギリスやフランスでは、周辺の住民の子どもたちの白血病にかかる割合が急増しています。
このようなリスクをおかしてまで作ったMOX燃料も2回しかリサイクルすることができないと言われており、一部の専門家は運搬する温度に冷えるまで数10年もかかり、リサイクルどころか一度使ったら、全量が通常の使用済み核燃料よりさらに危険な、大量にプルトニウムを含んだ使用済みMOX燃料になってしまうと警告しています。
上の図を見てください。この埋め立て処分が始まっているもの以外は、処分地どころか処分場所も決まっていないまま、各原発の敷地内や、青森県や茨城県の施設に保管されています。すでに核廃棄物の問題は、出口の見えない深刻な問題となっています。
いまある、核廃棄物だけでも、処分方法など、問題が山積しているのに、国や電力会社、ゼネコン、そして三菱、東芝、日立、富士電機の各メーカーは原発の再稼動や建設を推進し、さらなる核廃棄物を発生させようとしています。この再稼動を進めている原発のなかには、MOX燃料を使用する玄海3号機と伊方3号機も含まれており、核燃料サイクルも、国民の同意がないまま進められています。
原発の再稼動は、安全面だけで審査するのではなく、今ある核廃棄物の処分や、これから再稼動に伴い発生する核廃棄物の処分方法も、しっかりと議論する必要があるのではないでしょうか。
この核廃棄物の問題は、未来の世代、今の若い世代だけではなく、その子どもや何代にもわたる子孫にまで禍根を残す問題となっています。最も危険な使用済みMOX燃料は、人が近づくことさえ出来ないしろもので、安全に近づけるようになるまで100万年もの歳月が必要です。
もう核廃棄物をなくすことはできませんが、私たちの世代はこのような危険なものをもうこれ以上、増やさないようにしなければならないのです。
ウラン燃料加工の流れ
採 掘 → 精 錬 → 転 換 → 濃 縮 → 再転換 → 成型加工
ウラン鉱石 イエローケーキ 六フッ化ウラン 二酸化ウラン 燃料集合体
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