全国の原子力発電所の建設費用は約13兆円。原子炉建屋は大手ゼネコン5社が独占受注。粗利益率は3割にも。政界にもカネが流れ、ツケは電気料金で国民に―。原発マネーをめぐる癒着構造の一端が新資料と証言でわかりました。 取材班
「ゼネコンヘの発注実績は、できるだけ隠したかったのに…」
編集部が示したリストを前に、東京電力元幹部が語りました。
原発の建設費用は最終的に電気料金などとして国民が負担します。いわば“公共工事”と同じ。なのに電力会社は「民間企業だから」と発注金額や受注企業などをこれまで公表しませんでした。
福島第1原発事故後、日本共産党の吉井英勝衆院議員の要求で、経済産業省資源エネルギー庁がようやく提出してきたリスト。ここには、全国の原発57基を受注した原子炉メーカー、原子炉建屋や土木工事を受注したゼネコン、建設費実績が記されていました。
57基の総建設費実績は約13兆円。消費者物価指数による現在価値に換算すると14兆5千億円にものぼります。
原子炉メーカーは、一部外国企業を除き大手3社(三菱重工、東芝、日立製作所)が独占。原子炉建屋も、大手ゼネコン5社(鹿島建設、大林組、大成建設、竹中工務店、清水建設)が独占受注(共同企業体では幹事会社)。多くは競争入札なしの特命受注です。
受注した大手ゼネコン幹部が語ります。
「粗利益率は20~30%と公共工事以上に高い。1号機をとればその後も受注でき、廃炉までやると50年以上、仕事が切れない。本当においしい仕事だ」
前出の東電元幹部も「ゼネコンにはもうけてもらっている」とあっさり認め、その理由を語ります。
「原発立地の段階からお世話になる。用地買収から、政治家対策や説明会の“動員”など“裏”の仕事も頼む。電気料金に転嫁できるから、自分たちの懐は痛まないよ」
東電元幹部「ゼネコンに“裏”仕事」 見返りは受注独占
もうかる仕組み
「原発工事は文字通りトップセールスだ」
こう言い切るのは大手ゼネコン幹部。原発工事受注活動の一端を明かします。
「電力会社で新社長が就任した際には、お祝いを持っていく。数百万円だ」
原発工事の多くは、電力会社が独自の判断で業者を指名する特命発注です。
その理由を東京電力元技術系幹部は説明します。
「原発は固有の技術が求められるというが、それは表向きの理由だ。実は、ゼネコンには原発立地の段階からさまざまな“裏”の仕事をやってもらっている」
その一つが、電力会社などの依頼で、原発用地をひそかに買収することです。これまでに明らかになっているだけでも…。
―東北電力が計画していた巻原発の建設予定地を鹿島の下請け会社などが買収。
―関西電力などが計画していた珠洲原発の建設予定地を清水建設の関係会社などが買収。
さらに、原発の新設や増設の際に開かれる公開ヒアリングや説明会の際にもゼネコンは“裏”で暗躍していました。前出の東電元幹部は明かします。
「国などの主催だが、実際は東電が準備する。警備上の理由で、会場の入り口を狭くしたりするが、これらの費用は国などからは出ない。地元対策も含めゼネコンに汗をかいてもらっている」
「しんぶん赤旗・日曜版」 2011年9月18日号 1面 より