きんえんSwitter

医者の心の目で日々を綴ります

レッドカードのまえに

2018年06月22日 | 禁煙治療
朝の申し送りの時間帯のことでした。
ナースステーションがいつになくざわついていました。


タバコ臭い患者さんがいる・・・
入院中、時々抜け出してタバコを吸っているようだ・・・
病室で吸殻を見つけた・・・


さて、こんな患者さんと出会ってしまったら、どんなふうに声をかけましょうか?


「タバコ、吸ってませんか?!」


たぶんこれが普通、ですね。

では、そう言われた患者さんはどう答えるか?


「吸ってませんっ」


”反射的に”即答します(笑)。
後ろめたさを感じているときほど、心とは裏腹な言葉を発してしまう・・・人間の悲しいサガです。


こうなると、もう会話は続けられません。



「ウソばっかり!」

「素直に認めればいいのに(怒)」

「治療する気があるのかしら?」


裏切られた、ウソをつかれた、信頼関係ゼロ!という気持ちになります。
患者さんにより良い治療をと、毎日一生懸命働いているスタッフがそう思うのは当然です。
ウソが重なれば、「ルールを守れないなら即刻退院!」と患者さんにレッドカードを突きつけたくなるかもしれません。



でも、タバコを吸っていることは疑いのない事実であることは、患者さんも、私たちも、知っているのです。

だからいまさら、「吸ってるの?」なんて白々しく訊かなくていいんです。



白衣の天使の心で優しく声をかけてみてください。


「タバコがまんするの、大変でしょう?」




すると、喫煙していることを全否定していた患者さんも素直に「ハイ」って答えてくださいます。

ここで大切なのは、「定期的に襲いかかってくる喫煙欲求のつらさを私は理解していますよ」というメッセージを伝えることです。


そうすると患者さんは、過去に禁煙を試みて挫折した経験があったことや、現在もミントガムを噛んだりしてがんばっているがどうしても吸いたくなってしまう、といった打ち明け話をしてくださいます。

ひとしきり話を聴いてあげたら、ミントガムよりもっと効果のあるお薬がありますよと教えてさしあげるのです。



実はタバコをやめたいと思っている喫煙者にとって一番つらいのは、「タバコが吸えないこと」ではなく、「タバコが吸いたくなること」なのです。

ですから、吸いたいのをガマンすることに疲れ果ててしまっている患者さんなら、「その薬、使ってみたいです」とおっしゃいます。



今日も読んでいただいて、ありがとうございました。

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