私は呼吸器内科を専門とする医師ですが、現在職場では、検査科の管理職という立場で働いています。
ですから、自分の専門外の、色々な患者さんの検査数値を眺めることが多くなりました。
急激な数値の変化や、かなり正常値から逸脱した数値が見られた場合、それを「パニック値」といって、検査担当の技師から口頭で必ず主治医に報告することが義務付けられています。
以前はそれだけで終わっていましたが、私が検査科管理職に就いてからは、パニック値が検出された時点で直ちに私にも報告してもらうように変更しました。
パニック値報告があると、私は患者さんの電子カルテを開き、なぜそのような数値になったのかを、病態から考察しています。
場合によっては、原因を明らかにするために、追加の検査が必要と思われれば、臨床側に情報提供することもあります。
また、すぐに対応しないと命にかかわるような電解質異常などは、念のため担当看護師たちにも情報提供して、医師に速やかに対応するよう促すことを助言したりもします。
毎日こういう作業をするようになって、私は患者さんを実際に診ているわけではありませんが、色々な患者さんの病状を数字から思い描けるようになってきました。
時には、カルテを眺めながら、悶々とした気持ちになることがあります。
輸液をしたほうがいいのでは?
痛み止めをモルヒネに変更したほうがいいのでは?
血糖コントロールのために、もっと助言できることがあるのでは?
等々
けれども、実際に患者さんを診ないことには、適切な判断はできないので、治療に関して口を出すことはしません。
私がすべきことは、患者さんの状況を検査技師さんたちに説明し、検査データから病態を理解する力を育てる手助けをすることです。
そのとき、私の悶々とした気持ちも同時に共有してもらっています。