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25年ほど前、ヒマラヤ登山隊に医師として同行したことがあります。
パキスタンはカラコルムの標高5千メートルの氷河の上に設営したベースキャンプに1ヶ月間滞在しました。
あの頃はフリーズドライのインスタント食品などはまだ一般的には普及していませんでした。
遠征中は隊の料理人が作ってくれるチャパティやロティと呼ばれる全粒粉の小麦粉を水でこねて焼いたパンのようなものを毎日食べていました。
明日はベースを引き払って下山するという前夜、登山家用行動食として日本から持ってきていたレトルトパックのお赤飯が余っていたので、私達の荷物を背負って運んでくれる地元の人たちにお礼の気持ちでふるまいました。
すると翌朝、私のテントの前に人だかりができているではありませんか!
みな一様にお腹を押さえてつらそうです。
チャパティを主食としている彼らには、もち米は重すぎたんですね。
悪いことをしました。
お正月にはお餅を食べる方が多いと思いますが、もち米はもっとも消化しづらい穀物で、胃腸に負担をかけます。夜に食べるのは避けたほうが無難です。
食べ物の消化はすでに口の中から始まっています。
ご飯よりもお粥のほうが消化が良いと思われがちですが、ろくに噛まずに飲み込んでしまうお粥よりも、ウシのようにご飯を甘く感じるまでモグモグよく噛んで食べるほうが胃は楽なはずです。
静かなお正月を迎えていることと思います。
心穏やかに、五感をフルに使って、自分の心とからだの変化に意識を向けつつ、孤独なグルメを楽しみましょう。
そうすれば食べすぎも防げますし、ウィルスも撒き散らしません。
健やかで明るい年になりますように。
今年もどうぞよろしくお願いいたします。