佐藤匠(tek310)の贅沢音楽貧乏生活

新潟在住の合唱指揮者・佐藤匠のブログです。

吹奏楽考~小論・吹奏楽と合唱の比較(その1)~

2006年09月21日 22時37分37秒 | 合唱

 

 今日書こうと思っていたネタがあったのですが、

急遽変更。

 

 

 

 というのは、昨年ギャラクシー賞を取った

所さんの番組での特集「吹奏楽の旅」を

今更チラッと見たから(笑)。

夕食を食べながら、僕はHDDにたまった録画番組を

よく見るのですが、そこにそれがほったらかしになっていた(笑)。

というより、見るのに精神力が必要だと思って、

敢えて避けていました。

通常番組の時の放送をチラチラとは見ていたので、

大体は分かっていたのですが。

 

 

 だいぶ前に、吹奏楽と合唱の比較を書いたのですが、

もう少し踏み込んで書いてみたいと思っています。

しかしやらないといけないことが沢山あるので、小出しで。

 

 

 

 僕は中学生の頃、吹奏楽部でした。

合唱は特設部。期間限定でした。

楽器はトランペット。

小学校5年生の時のマーチングバンドが最初で、

中学校でもそのままトランペットを。

しかし、実は最初、優良部活生ではなかったのです。

この辺の話は今日は端折りますが。

 

 

 吹奏楽は合唱に比べると非常に盛んなイメージです。

本当は客観的な数字を出したかったのですが、今度。

団体数で言うと、中学・高校・大学までは吹奏楽が隆盛です。

しかし一般になると、合唱の方がはるかに多い。

それもおかあさんコーラスは山のようにある。

しかし一般の吹奏楽団は、それに比べればそれほどの数ではない。

 

 

 若い人たちの吹奏楽を支えているのが、コンクールであることは

間違いの無い事実だと思います。

合唱の分野では、中高がコンクール一辺倒と言うことが

言われていますが、吹奏楽に比べればそうでもない気がします。

今日も「吹奏楽の旅」を少し見ましたが、

入れ込み方が尋常じゃないですね。

まあ、合唱で全国に行く団体もそうなのかもしれません。

 

 

 僕自身はコンクールという活動に正直

それほどの重きを置いていないので、

コンクールに吹奏楽の様に打ち込むことは

真似する必要は無いと思っています。

ただ、合唱が吹奏楽に学ばないといけないことがあります。

 

 

 

 

 個人練習です。

 

 

 

 

 吹奏楽において、団員が一生懸命な理由。

それの一つに、

 

「個人の責任の重さ」

 

があると僕は考えています。

 

 

 僕の中学校の吹奏楽部では、確かAの部で、

35人以下の編成でした。

トランペットはだいたい全部で4人。

それを、1st、2nd、3rdに分ける。

つまり、一パート1人。

僕は3年生のとき1stで、地区大会では

相当のプレッシャーがかかりました。

だって一人しかいない。

結局失敗したのですが(苦笑)。

人数的なことは、他のパートも大抵同じ感じです。

 

 

 

 対して合唱。

ソプラノ、アルト、テノール、バス、の4パート。

中学校にいたっては混声三部。

少しディヴィジョンがあるだけで、団員は騒ぎます。悪い意味で(笑)。

 

  

 簡単に言ってしまうと、

合唱においては、個人の責任が軽い。

 

 

 

 あくまでも言っておきますが、

これは、僕の考えではなく、一般論です。

僕はこの一般論が悲しいですが。

 

 

 「一人だと歌えないけど皆と一緒なら歌える」

これは合唱団員の多くの偽らざる心境だと思います。

しかしですね、ブラスの世界でこれを言ったら、

ブラスは成り立ちません。

要は、良い演奏をするためには、個人練習を沢山して、

一人演奏しても確実に演奏できないといけないのです。

そう、音は沢山鳴っていても、

小編成なら一人一パートという状況が普通。

間違えたら目立つ。だから練習する。

勿論、どの団もそう一生懸命だと言う訳ではないですよ。

 

 

 

 僕は提言したいのです。 

 

 

 

 

 

「合唱団員は、もっと個人練習をしないといけない」

 

 

 

 

 

 合唱団員が、「個人として」責任が軽い傾向になるのは、

練習の仕方にあると思っています。

恐らくですが、中高大の合唱部において、

基本的な練習というのは、全体練習とパート練習です。

そこに「個人練習」という時間は存在しません。

ヴォイストレーニングがあるじゃないかという方もいるかもですが、

合唱団のヴォイトレを受けるために、

皆さんは個人練習をしますか?

音取りじゃなくて、自分個人の発声技術を伸ばすために、

「一人で」普通に声を出して、「一人で」練習をするか、ということです。

いくら団でヴォイトレを雇っていても、しないですよね、多分。

 

 

 

 僕は、ここに大きな問題があると思っています。

「一人だと音が取れない」

「上手く歌えない」

「声量がない」

確かに、一人一人がブラスの楽器以上に、

個性の強いそれ自体が楽器であることは、

合唱における大きな特徴です。

 

 

 しかし、それを逃げ道にしていないだろうか。

「一人だと音が取れない」

「良い声じゃないから」

だから一人の責任が薄まるのか。

違いますね。

 

 

 実際、吹奏楽でも、楽器を手にするのは、

ほとんどが中学生くらいからでしょう。

テレビでもしていた「淀川工業」の吹奏楽は、

8割が初心者からのスタートだと言っていました

(因みに、ここの合唱部も、ほとんど初心者からですが)。

そういう意味では、スタートの問題ではない。

 

「楽譜が読めないからパート練習」

 

これも理由にならない。

というより、山ほどある部活の時間をもって、

合唱部を卒業しても、楽譜が読めない人がいるのは何故なのか。

 

 

 

「個人の能力を上げることから目を伏せて、

全体練習でまとめてしまおうとしていないか」

 

 

 

 ここに問題提起してみます。

 

 

 

 今回、本来僕が好きではない「極論」に近い形で

敢えて書いたのは、その問題性を

よりクローズアップさせるためです。

 

 

 

 一般の合唱団にいると、余計にそう思うのです。

週1回の練習ではやれることが限られる。

そういう意味で、

せめて合唱部で歌っていた人には、

歌っていたなりの能力を身に付けて、ここにやって来て欲しい。

勿論、初心者にも、一般合唱団は門戸を開かないといけない。

しかし、週1回の練習という限界を考えないといけない。

勿論、一般合唱団でも、個人のレベルを上げることから

逃げてはいけない。

でも、そこには明らかな限界がある。

 

 

 そういう意味で、中高大の現場にいない僕が言うのは

ズルいかもしれないが、

部活動を受け持っている先生には、大きな責任があると思う。

その3年間なり、6年間なり、大学4年間なりを、

有り余るほど時間があるその時間を、どう使うか。

これこそが、先生に与えられている最も大きな責任だと思う。

 

 

 歌う喜び、合唱の喜びを伝えるのは、教師なら「当たり前」。

これだけ時間があるのなら、個人ののスキルアップに

もっと時間を割かないといけない。

その、「個人の責任の重さ」が、そのまま、

「個人のスキルアップへの意識・責任」となり、

「上達への興味」

「吹奏楽自体への興味」

となっていくように思うのは僕だけだろうか。

合唱団員のそういう一人一人の意識が、

合唱自体に対する興味を喚起しないことになっているのでは、

というのが今日の小論のまとめです。

 

 

 

 勿論、これが途中で終わってしまうことは、

吹奏楽界の大きな問題だと思うけど。

このブログ閲覧者は、kodamanさんやめるさんなど、

ブラスの経験者や、オケ畑の人も結構いるので、

そういう視点から、コメント頂けたらとも思います。

「それは違うぞ!」とかも。

 


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9 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
普段から難しいことは何も考えていない私ですが、... (con)
2006-09-21 23:39:03
普段から難しいことは何も考えていない私ですが、今年の夏は大人数での合唱に複数参加して、「大人数だと個人が危うくても何とかなってしまう危うさ」を実感しました。普段の少人数合唱ではありえない出来事とかもあり…。そんな中であらためて個人が個人でできること、やらなきゃいけないこと、というのも考えさせられました。かく言う私も個人練習は充分とはとても言えず…耳が痛いです。
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そう言われるとないですね。 (aki)
2006-09-22 13:14:38
そう言われるとないですね。
個人練習という感覚が余りなかった・・・
不思議ですね。
ソロで歌う時と変わらないはずなのに。
意識改革ですね~
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やってた年齢もあると思いますが、ちょっとずつか... (roofs)
2006-09-23 00:17:12
やってた年齢もあると思いますが、ちょっとずつかじった私は
ブラスはバリバリ吹いてコンクールとか調和とかあまり意識せず、オケは全体の中の自分の位置を常に考え、合唱は音楽や流れを楽しむ感覚でした。ブラス、オケは個人練習の記憶、あまりないです。全員でやるロングトーンなどの基礎練と少人数で合わせることが多かった。吹奏楽=見た目のカッコよさ、派手さ、部活で毎日練習→大人になると手入れできない、場所がない。って感じかなぁ。総人口を見ると同じくらいなのでしょうか?お互いの不足を補えるヒントがありそうですね。スポーツなどにも。
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私は中高と、いわば「コンクールバンド」で吹奏楽... (kodaman)
2006-09-24 01:01:36
私は中高と、いわば「コンクールバンド」で吹奏楽を過ごしてきていたので、バンドは、「個人→パート→バンド」と音づくりをしていくのが当たり前だと思っていました。
合唱は、個人の音作りが比較的簡単な気がするのは私だけでしょうか。実際、私が所属する合唱団でも、音取りを部屋でこっそりやってたこともありましたし(楽器の練習はまず無理)。
中高ではその時間が部活動で保証されていますが、社会人になるとなかなか難しいのは、吹奏楽も合唱も同じでしょうね。近所迷惑にならない程度にできるなんて、まずないですよね(笑)。

あと、部活動顧問の責任、ごもっともです。学生時代は吹奏楽をやっていたが、そのときのコンクール一点張りの活動に嫌気がさして楽器を辞めたという人もたくさん知っています。
合唱との大きな違いは、吹奏楽は社会人となって続ける人が少ないことですね。
私は「社会人になっても、ずっと音楽を楽しんでいけるための活動」というのを根っこで意識しながら活動しています。
だからといって、基礎を疎かにするつもりはありませんが(これは今年度反省していること…)

あ、関係ないかも知れませんが、吹奏楽で誤解してもらいたくないのは、ただバリバリ吹くのを良しとする風潮はなくなりつつあることです。優れたバンドでは、管楽器の音のブレンドを重視して、オーケストラに引けを取らないサウンドをつくっています。弦楽器よりブレンドが難しいのが実状ですが…

学生時代に楽器を吹くのに没頭していた頃が懐かしいです(笑)。

長々失礼しました。
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 conさん、ありがとうございます。 (tek310)
2006-09-25 00:30:26
 conさん、ありがとうございます。
 大人数というのは、責任の面で意識の持ち方が難しいのは事実ですね、残念ながら。でも、多くの人がそうだと思います。

 akiさん、個人練習という感覚は、僕の中では主に発声技術、歌唱技術の向上を念頭に置いています。なので、akiさんは、色々されている方に入ると思いますよ。

 roofsさん、両方かじってらっしゃるのですね。確かに、他分野でのことが参考になることは結構あります。
 ちなみに僕のいた学校の吹奏楽も、そんなにスパルタでなかったので、学校によるのでしょうね。

 kodamanさん、指名にお応え頂きありがとうございます。
 僕の中で、個人練習というのは、主に歌唱技術の向上です。声楽における楽器が、生まれ持ったもので決して購入できないものである以上、そこに投資しないといけないというのが僕の持論です。音取りというのは、個人練習のほんの一部だと考えています。
 確かに、楽器の練習場所は難しいですね。声楽のほうがまだいいかもしれません。でも東京のカラオケボックスでサックスの練習している人がいました(笑)。
 僕も、そんなにブラスを聴けている訳じゃないので、もう少し吹奏楽を勉強しないといけませんね。えっ、何のためだって?何のためだろう。。。(笑)。小千谷のイベントは参加しますか?聴きに行けるかな。。。
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今試しに部活で「個人練習の時間」を作っています。 (こっち)
2006-10-03 22:53:08
今試しに部活で「個人練習の時間」を作っています。
僕が行けないことが多いのですが、ピアニカの音が響いているので、自分たちなりにやっているようです(笑)
どんな練習をしているかをノートに書かせているつもりなんですが、最近点検してないなぁ…。
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 こっちさんは「アイテム」好きですよね。アイテ... (tek310)
2006-10-04 22:28:13
 こっちさんは「アイテム」好きですよね。アイテムというかテクニックでしょうか。
 僕も、毎日部活が見られれば、一からじっくり見ていきたいなと思います。個人の上達あっての合唱団だと思いますので。
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「アイテム」か、久々に聞いた単語だ(笑) (こっち)
2006-10-05 18:43:18
「アイテム」か、久々に聞いた単語だ(笑)

「アイテム」や「テクニック」って共有しやすいじゃないですか。

本当は「音楽」を共有すべきなんだろうけど…。

目指すべき音楽に近づくための「技術」「道具」を構成員全員で共有することが理想。

僕がいなくなっても、他の団に行っても応用できる可能性も高い。

うまく説明できないけれど、「指導する」「育てる」というのは、「アイテム」の使い方や、「システム」の作り方、「テクニック」の身に着け方を自分なりにできるようにする、ということだと思うんです。

ところがそれを重視しすぎるとたまに「音楽」がどっかに行ってしまうことがある。僕も団員も。それが課題。
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 このへんは、僕が「継続して」「自分の責任で」... (tek310)
2006-10-07 00:28:47
 このへんは、僕が「継続して」「自分の責任で」合唱団を指導したことがないから、今ひとつ実感としてつかめないところです。でもこっちさんらしいという気はします(笑)。
 あとは、比較的歌える人がいる合唱団に多く居たからかもしれません。技術的な指導がそれほど必要じゃなかったということもあるかもしれません(勿論、実際はどんなレベルであっても必要ですが)。そういう意味では、ゼロから全てを創っていく作業には憧れがありますね。
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