1月13日 (月)
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ふとした偶然から「ミドリムシ」という生物の存在に興味をそそられた。
「ミドリムシ」とは「虫」ではなく昆布や若芽などの藻類に属するという。いまから5億年前に地球に誕生した光合成を行う微生物(体長0.05ミリ)で植物と動物の性質を併せ持つという珍しい存在。
現在では中学か高校の理科の教科書にも載っているとかで一般にも広く知られているようだが、戦前・戦後の教育を受けた私の世代にとってはこれまで聞いたこともなかった新奇の生物である。
そんなミドリムシのことを知っていたかと、念のため化粧品会社の社長をやめ80歳を超えた今となっても大学の研究室を借りて女性の髪の毛を顕微鏡で覗くという理学部出身の旧友Mr.UNに聞いてみたら、大学時代にミドリムシを顕微鏡で見たことがあるという。
なるほどその分野ではむかしから知られる存在だったらしいが、それは極めて特殊な世界でのことだったであろう。
このミドリムシ、学名「ユーグレナ」、(ラテン語でeu美しい、glena目)が発見されたのは17世紀と古いが、1990年代になってからは、無限の可能性を秘めた生物素材として研究が進められ、1990年代に至ってバイオ・エネルギーとして政府が膨大な予算をかけて支援した「ニューサンシャイン計画」の一部にも取り入れられたようだが、成果が出ないまま2000年にはその研究も衰退して終わったといういわくつきのものらしい。
失敗の最大原因はその大量培養が困難だったことによる。それが近時、ある企業が大量培養に成功してからにわかに注目を浴びるようになったと知った。
ところで、その「ミドリムシ」、インターネットで調べれば調べるほど興味が湧いてきた。
こうした特定事項を調べるのにインターネットは大変な威力を発揮する。
昔なら百科事典で項目を索引で探し該当項目の巻を開いて読み、それで満足できなければそれに関連する項目をできるだけ探して読むくらいが関の山だったが、今ではインターネットを駆使すれば専門的論文まで含めて関連サイトに簡単に移行して読むことができる。時間さえあれば知識欲を満足させるのは極めて容易だ。
面白さにつられて、ほぼ一日近くかけてミドリムシのことをあれこれ調べてみた。もちろんあくまでも素人の好奇心からである。
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その過程で「ミドリムシ」の大量培養に成功し、ミドリムシが持つ可能性を最大限に引出し企業化したベンチャー企業が「㈱ユーグレナ」であることを知った。
そして、その会社が展開しようとしているミドリムシ事業を知れば知るほどこの会社に魅了された。「ユーグレナ」はマザーズ市場に数年前に上場されたばかりのベンチャーの会社である。
現在はミドリムシから栄養食品や化粧品を作るくらいが主な事業であるが、ミドリムシの将来性を見据えた企業構想はとてつもないものである。ミドリムシを素材としてバイオマスの5F、すなわちFood(食料)、Fiber(繊維)、Feed(飼料)、Fertilizer(肥料)、Fuel(燃料)など多方面での工業製品を生産することを目指しているという。
なかでもミドリムシから作ったオイルでジェット機を飛ばす燃料を作るというのは凄い。また、ミドリムシから作った食品や飼料で世界の食糧危機をも救うというのも気宇壮大である。
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夢みたいな話だが、インターネットでの情報だけではなんとも頼りなく思い、「僕はミドリムシで世界を救うことに決めました(出雲充)」といういささか大それた題の本があることを知って、アマゾンで取り寄せ一読してみた。ユーグレナの社長が昨年2012年に出版した本である。
内容はベンチャア企業の起業にまつわる話だが、ミドリムシの将来性が必ずしも夢ではなく実現可能な実務構想であることを納得させられ大いに意を強くした。
最初は、少し眉唾な話にも思えたものだが、その後もさらにインターネットを通じていろいろと調べてみると、既にユーグレナと連携し共同研究している大企業は数多く(伊藤忠商事、全日本空輸、電通、日鉱日石、日立、理化学研究所、清水建設、住友共同電力、都下水道局,大阪瓦斯など)、大学との共同研究でも東大、大阪府立大、兵庫県立大、島根大、近畿大などで進められいことも分かった。また、文部科学省や経済産業省など政府機関から補助金を受けているらしい。
そんな企業が描く将来なら、その発展に少しでもお手伝いしたいと思い、マザーズ市場で同社の株価をチェックしてみた。株価は1400円前後、売買単位も100株だとある。これなら私でも買える。
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新興市場への投資は、株の高騰により短期間で大きな利益をねらうのが常道なのだろうが、「ユーグレナ」に関する限り、儲けなどは度外視して会社を応援したいという気持ちが大切である。株を買うとしても短期の保有ではなく、長期間持ち続けてその会社の発展を見ることにあり、もちろんその間の配当などは念頭になく、その「大きな夢」を買うということになる。