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激動の世界 希望ある未来(2)

2025年01月01日 17時24分23秒 | 一言

日中関係――言うべきことを言いつつ、良い方向に向かうよう、対話を続けたい

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(写真)「東アジアの平和構築への提言―ASEANと協力して」をテーマに講演する志位和夫議長=2024年4月17日、衆院第1議員会館

 小木曽 各論に入っていきます。「東アジア平和提言」は、北東アジアの諸問題の外交的解決についても具体的な提案を行っています。

 まず日中関係では、23年3月30日に発表した「提言」――「日中両国関係の前向きの打開のために」をあらためて位置づけています。「日中提言」は、日中両国政府間に、「双方は、……互いに脅威とならない」など三つの点で「共通の土台」があることを強調し、それを生かして両国関係の前向きの打開をはかることを呼びかけたものでしたが、一昨年、日中両国政府の双方から肯定的な受け止めが表明されました。昨年、中国側との話し合いはどうなっているのでしょうか。

 志位 中国共産党、中国大使館との話し合いを行っています。「東アジア平和提言」の内容を伝え、こうした意見交換は有益だとなり、続けることにしています。

 昨年6月、緒方靖夫副委員長は、中国上海の復旦大学日本研究センターの招きで訪中し、同センター主催の学術交流会で基調報告を行い、「東アジア平和提言」の内容を紹介しました。両国関係の前向きの打開のための三つの「共通の土台」を強調するとともに、尖閣諸島問題、台湾問題、歴史問題での「提言」の内容を紹介しました。

 討論では、緒方さんの報告の内容にかかわって、中国側の政策と立場が語られました。同時に、「提言」については全体として肯定的評価が語られました。司会を務めた日本研究センター所長は、「きわめて重要な提言を紹介してもらいました。尖閣と台湾については賛成しないけれども、異なる意見があっても、それを含めて対話をすることが大切です。このような交流をさらに発展させましょう」とコメントしました。

 わが党と中国の党の間には、大きな意見の違いが存在します。同時に、中国は、世界で重要な役割を担っている隣国であり、対話をとぎれなく続けていくことが大切だと思います。さまざまなレベルで、言うべきことを言いつつ、両国関係が良い方向に向かうよう、対話を続けていきたいと考えています。

朝鮮半島問題――非核化を断固追求しつつ、平和体制構築を一体的に

 西沢 朝鮮半島問題についてうかがいます。「東アジア平和提言」は、困難は大きなものがあるが、軍事的対抗の悪循環から対話による平和的解決への方向転換をはかることが急務として、2018年~19年の南北、米朝首脳会談の教訓を踏まえて、朝鮮半島の非核化と平和体制の構築を一体的、段階的に進めることが、唯一の現実的方法だと強調しています。

 志位 私たちは、この間、「提言」をもとに、国内外の専門家と朝鮮半島問題についても話し合ってきました。共通した結論は、たいへんに困難だが、「提言」の方向が唯一の筋のとおった解決方向だということでした。

 この問題に精通している韓国のある政治家は、昨年、私との会談のなかで、次の3点を強調しました。(1)北朝鮮を事実上の核保有国として扱うのは非常に危険だ。北朝鮮は核保有国だと主張するが、断固として拒否しなければならない。(2)困難ななかでも交渉をしっかりとやって朝鮮半島全体の非核化につなげるべきだ。(3)戦争状態を終わらせ、地域の平和体制を構築すべきだということを支持する。

 トランプ氏が米国次期大統領に選出され、バイデン大統領とは違った対応をとることが予想されるもとで、朝鮮半島の非核化を断固として追求しつつ、それと一体に平和体制を構築する、合意できたものから段階的に実施する、こうした「提言」の立場がいよいよ大切になってくると思います。

 日中関係でも、朝鮮半島問題でも、軍事を絶対に選択肢にしてはなりません。解決の道は外交しかありません。「提言」にもとづいて可能な外交努力を行う決意をのべるとともに、平和構築に向けた国内外の世論を起こしていくことを呼びかけるものです。

ガザへのジェノサイドを止める――連帯したたたかいを急速に強めよう

 小木曽 「東アジア平和提言」では、ガザ危機とウクライナ侵略を、国連憲章・国際法を最大の基準にして解決することを訴えています。打開の方向をお話しください。

 志位 ガザへのジェノサイドを止めるためにいま何より重要なのは、国際世論による包囲の輪を強めていくことです。

 この間、国連総会では即時停戦を求める決議、パレスチナ国家の国連正式加盟を支持する決議、占領の1年以内の終了を求める決議が圧倒的多数で可決されています。国際司法裁判所(ICJ)は、ガザでのジェノサイド防止を求める暫定措置を発表し、国際刑事裁判所(ICC)はイスラエル首相らに逮捕状を出しました。

 世界の市民社会が虐殺と占領を止めるために連帯を強めることに力をそそぎたい。私も、この間、ベルリンの国際平和会議、プノンペンのアジア政党国際会議で、「ストップ・ジェノサイド」の連帯を訴えましたが、ヨーロッパでもアジアでも「虐殺と占領をやめよ」という大きなうねりが起こっていることを肌身で感じました。

 西沢 これだけの国際的な批判を浴びても、イスラエルはガザ住民の「最後の頼みの綱」といわれている国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の活動を今年1月から禁止するという暴挙に出ています。イラン、レバノン、シリアを攻撃し、戦火を中東全体に広げつつあります。

 志位 なぜイスラエルが無法をやめないのか。アメリカがイスラエルへの軍事援助を続けているからです。アメリカの軍事援助がなければ、イスラエルは一日たりとて無差別攻撃を行うことはできない。この根本に迫るたたかいが重要です。

 日本政府の立場が問われています。日本政府は、国連総会での即時停戦決議案、占領終結決議案などに賛成しています。ならばイスラエルによる無法を本気で止めるために行動を起こすべきです。何よりもアメリカにイスラエルに対する軍事支援を「やめろ」と迫るべきです。日本でのたたかいを緊急に強めることを心から訴えます。

ウクライナの流血を終わらせ、「公正な和平」を実現するために

 小木曽 ウクライナ侵略開始から3年近くになろうとしています。この間、さまざまな和平交渉の提案がなされていますが。

 志位 昨年、8月にベルリンで行われた国際平和会議で、私は、ウクライナの流血を終わらせるために、国際社会に「和平協議に道を開くあらゆる努力」を求めるこの国際会議のイニシアチブに強く賛同することを表明しました。この戦争は戦場で決着することはなく、交渉による停戦・和平の道しかありません。そのさい二つの点が重要になることを訴えました。

 一つは、和平は、国連憲章、国際法、ロシアによる侵略を非難し、即時撤退を求める4度にわたる国連総会決議にもとづく「公正な和平」であるべきということです。「国連憲章を守れ」の一点で世界の圧倒的多数の国ぐにが団結することこそ、この戦争を終わらせる道だということを訴えました。かりに和平交渉が開始されたとして、国連決議にそった「公正な和平」の実現までには時間差があるかもしれませんが、この目的をあいまいにしてはならない。これがわが党の立場です。

 もう一つは、「公正な和平」を阻んでいるものは何かという問題です。米国などG7(主要7カ国)の側の最大の問題点は、「ダブルスタンダード」にあります。ロシアを非難するが、イスラエルを擁護する。これこそが国際社会の団結の最大の障害になっています。私は、ベルリンの国際平和会議で次のように訴えました。

 「ウクライナ人、パレスチナ人、イスラエル人の命に異なる価値をつけることで、どうして世界が団結できるでしょうか。誰に対してであれ、国連憲章と国際法は、平等に適用されなければなりません」

 トランプ氏の再登板はウクライナ戦争にも影響を与えることが予想されますが、それだけに原則的立場の主張がいよいよ重要になってくると考えます。

被爆80年の年に「核兵器のない世界」への前進を――「人道的アプローチ」が大きなカギ

被爆者の声が世界を圧し、世界を動かした

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(写真)NPT再検討会議に出席・発言した(右から)谷口稜曄さん(故人)と児玉三智子さん(現被団協事務局次長)らと交流する日本共産党の志位和夫委員長(当時、右から4人目)と笠井亮国際委員会副責任者(当時は衆院議員、その左)=2010年5月2日、ニューヨーク市の国連本部前

 小木曽 日本被団協のノーベル平和賞受賞に、日本国民は喜びでわきにわきました。議長自身はどのように受け止めましたか。

 志位 私も喜びで熱いものがこみあげてきました。授賞式での田中熙巳(てるみ)被団協代表委員の講演にも深く心を揺さぶられました。

 私は、これまで国際舞台で、被爆者の方々とご一緒に活動する機会が何度かありましたが、被爆者の声がいかに巨大な力をもつか、「被爆者の声が世界を圧し、世界を動かした」という場面を何度も目にしてきました。

 2010年のNPT再検討会議で、被団協を代表して長崎の被爆者・谷口稜曄(すみてる)さんが、原爆で赤く焼けただれた背中の写真を微動だにせず高く掲げ続けて「私を最後の被爆者に」と訴えたことは、会場を埋めた各国代表に大きな感銘をあたえ、この会議での大きな成果へとつながりました。

 2017年の核兵器禁止条約の国連会議で、被団協を代表しての広島の被爆者・藤森俊希さんの「同じ地獄をどの国のだれにも絶対に再現してはならない」との訴え、広島の被爆者でカナダ在住のサーロー節子さんの「この条約は世界を変えるし、変えられます」との訴えは、議場を圧し、割れんばかりの拍手がわき起こりました。核兵器禁止条約の成立という歴史的成果への巨大な後押しとなった光景は忘れられません。

「人道的アプローチ」が、核固執勢力を追い詰める大きな力を発揮している

 西沢 被爆者の訴えが、世界の核軍縮交渉にどういう影響をあたえていったのかについて、お話ししていただければと思います。

 志位 私がとくに強調したいのは、被爆者が痛苦の体験をもって、核兵器が人類と共存できない究極の悪の兵器だと訴え続けてきたことが、核軍縮交渉に「人道的アプローチ」と呼ばれる新たな観点をもたらしたということです。つまり、それまでもっぱら安全保障の観点から行われてきた核軍縮交渉を、核兵器の非人道性に光をあてた議論――いわば生きた人間の血が通った議論へと発展させたのです。

 その大きな契機となったのが2010年のNPT(核不拡散条約)再検討会議でした。この会議は、核兵器禁止条約への重要な一歩をしるした会議となりましたが、同時に、最終文書で、核使用が「人道上壊滅的な結果」をもたらすと強く警告し、はじめて核兵器の非人道性に言及した会議ともなりました。

 小木曽 被爆者の声がはじめてNPTの最終文書に盛り込まれたのですね。

 志位 そうです。この合意を踏まえて、2013~14年、ノルウェー、メキシコ、オーストリアで、3回にわたって「核兵器の人道的結末に関する国際会議」が開催され、核兵器の非人道性が国際社会の共通の認識となっていきました。この流れをうけ、2015年の国連総会で、「人道的アプローチ」の流れにそった四つの決議が採択されるとともに、「核兵器のない世界」の実現のための「効果的な法的措置」を探求するオープンエンドの作業部会を設置することが決まり、2017年の核兵器禁止条約の成立につながっていきました。

 2024年の国連総会で、核戦争の結果を最新の科学的知見で明らかにすることをめざす新しい決議案「核戦争の影響と科学的研究」が圧倒的多数で採択されたことは、核兵器をめぐる現在の危機的事態を打開し、「核兵器のない世界」にすすむうえで大きな力になるものです。

 「人道的アプローチ」は、「核抑止力」論に対する根本的批判となり、核兵器に固執する勢力を追い詰めていく大きな力となっています。なぜならば「核抑止力」論とは、いざとなったら核を使用する――広島・長崎のような非人道的惨禍を引き起こすことを前提とした議論だからです。

 日本政府は、核兵器の非人道性を認め、昨年の国連決議にも賛成しました。しかし、米国いいなりに「核抑止力」論をたてに、核兵器禁止条約に背を向け続けている。これは根本的に矛盾している。核兵器の非人道性を訴えるならば、「核抑止力」論の呪縛を吹き払って、核兵器禁止条約に参加せよ。被爆80年の今年、この声を大きく広げていきたいと思います。

戦後80年――負の歴史を清算する世界史的うねりのなか、日本の姿勢が問われる

“三つの重要文書”の核心的内容を継承し、ふさわしい行動をとる

 小木曽 今年は、戦後80年。日本が過去の侵略戦争と植民地支配にどう向き合うかが問われてきます。党の基本姿勢をお話しください。

 志位 日本政府は1990年代に、歴史問題について“三つの重要文書”を明らかにしています。「植民地支配と侵略」への反省を表明した95年の「村山談話」、日本軍「慰安婦」問題について、軍の関与と強制性を認め、反省を表明した93年の「河野談話」、韓国に対する植民地支配への反省を表明した98年の「日韓共同宣言」です。これらは歴史問題に対する到達点として国内外から評価されてきました。

 それを逆行させたのが戦後70年に出された「安倍談話」でした。歴史問題はもう解決ずみだ、これからは謝罪だの反省だのは言わないようにしよう、“三つの重要文書”を事実上お蔵入りにしてしまおう、これが「安倍談話」でした。この10年間は、「安倍談話」の線でことがすすめられ、それが日本軍「慰安婦」問題でも、「徴用工」問題でも、解決の重大な障害になってきました。

 西沢 これからは反省を言わないというのは、加害国の言うことではありませんね。

 志位 そうです。反省を未来の世代まできちんと引き継いでこそ、本当の友好をつくることができます。「東アジア平和提言」では、戦後80年にあたって、「安倍談話」による逆行を清算し、“三つの重要文書”の核心的内容を継承し、それにふさわしい行動をとることを求めています。その重要性が国民共通の認識となるよう力をつくしたいと考えています。

英連邦首脳会議で奴隷貿易問題での前向きの合意――世界は大きく動いている

 西沢 世界に大きく目を向けてみると、植民地支配と奴隷制度の責任を過去にさかのぼって明らかにし、謝罪を求める大きなうねりが広がっていますね。

 志位 そうです。大会決定では、オランダ、ベルギー、ドイツ、メキシコなどの政府から、過去の植民地支配と奴隷制度への公式の謝罪が行われたことを列記しています。2001年9月に発せられた国連「ダーバン宣言」は、「植民地支配が起きたところはどこであれ、いつであれ、非難され、その再発は防止されなければならない」「奴隷制と奴隷貿易は、人道に対する罪である」と明記しましたが、それから20年をへて、人類史は着実な進歩を見せている。ここにも世界の構造変化の力が働いています。

 この点で、昨年10月、南太平洋のサモアで開催された英連邦首脳会議(英国と英国の旧植民地など56カ国加盟の連合体)の動きは注目です。アフリカやカリブ海地域諸国の主張を受け、全参加国が署名し採択された「サモア声明」で、「ダーバン宣言」の重要性を確認したうえで、奴隷貿易の被害国への補償について協議を始めることが明記されたのです。

 西沢 世界は、たとえ数世紀前の出来事であっても、過ちは過ちとして清算するという方向に動いているのですね。

 志位 そうです。この問題に「時効」はないのです。そうした世界史的なうねりのなか、日本政府の姿勢が問われます。戦後80年にあたって、日本の政治もこうした道理ある方向に動くよう、侵略戦争と植民地支配に命がけで反対を貫いた党として奮闘していきたいと思います。

「個人」「市民社会」が平和をつくる主体に――草の根からの運動で平和をつくろう

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(写真)「いま東アジアの『平和の準備』をどう進めるか」と題したシンポジウム。左からパネリストの纐纈厚、志位和夫、佐々木寛の各氏=2024年7月24日、東京・明治大学駿河台キャンパス

 小木曽 お話をずっとうかがって、「平和をつくる主体」として、個人の役割、市民社会の役割が大きくなる時代が来ているように思います。この点で、昨年7月に全国革新懇などの主催で行われたシンポジウム「いま東アジアの『平和の準備』をどう進めるか」の討論に注目しました。

 志位 私自身、あのシンポジウムでは学ぶところが多かったです。私は、東アジアに平和構築をしていくうえで、草の根の運動の重要性を訴えたのですが、討論では、「平和をつくる主体は何か」が焦点となりました。

 室蘭工業大学教授の清末愛砂さんは、「個人」の役割、「個人の尊厳」を強調されました。戦争に向かわない社会をつくろうとすれば、社会を構成する個人が他に対する暴力や支配の考えに依拠しない個人でなければならないし、社会にはそうした個人を育てていくことが求められるというお話でした。新潟国際情報大学教授の佐々木寛さんは、世界のさまざまな「市民社会」の動きを紹介して、「平和をつくる主役」として、「地域に根差した市民社会のネットワーク」の重要性を強調されました。

 私は、お二人の発言に強く共感しますと発言しました。この間の動きは、言語に絶する苦しみを体験した一人ひとりの被爆者の発言――「個人」の発言がどんなに大きな力を発揮するかを示しました。平和や人権をつくる主体として、NGOの役割が急速に高まっています。国連経済社会理事会との協議資格をもつNGOは、1945年には41組織だったのが、いまでは6343組織に増加しています。さらに世界には1000万前後のNGO組織があり、約5000万人が働いているとのことです。

 西沢 討論では、ジェンダー平等と平和が一体だということも深められましたね。

 志位 はい。ガザでの犠牲者の7割は女性と子どもです。それは「女性に対する戦争」とまで言われています。同時に、真の意味でのジェンダー平等社会ができたら、つまり人間が人間を支配するような権力的関係がなくなる社会になったら、それは戦争のない平和な社会になるという展望をもつことができると思います。

 一人ひとりの「個人」、その力をあつめた「市民社会」が、各国政府とともに、平和をつくる主体になっている。ジェンダー平等と平和を一体に追求することの重要性に光があてられている。そういう時代を迎えていることをふまえて、「東アジア平和提言」を手に、草の根からの運動を大いに発展させ、アジアと世界の平和をつくるために奮闘しようではありませんか。

「日本共産党はなぜ102年間続いたか」の問いに答えて

最も困難な時代に先輩たちを支えたもの――科学的社会主義への世界観的確信

 小木曽 今日、もう一つ、お聞きしたいのは、私たちの世界観――科学的社会主義の問題です。議長は、「毎日」のインタビューのなかで、「私たちの戦いは資本主義との戦いです。それが人類が最後に到達した理想の体制だとは思っていない」「その時々の資本主義のゆがみと戦ってきたからこそ共産党は102年(今年で103年)続いている」「資本主義が行き過ぎた今、我々の出番です」とのべています(12月9日付夕刊)。日本共産党の存在意義ここにありと、新鮮な感動をもって受け止めました。

 志位 実は、あのインタビューで、私に投げかけられた質問は、「日本共産党が102年続いている理由を一言でお願いします」というものでした。私は、党創立100周年記念講演などで、100年続いた理由として「不屈性」「自己改革」「国民との共同」を強調したこともありましたが、「一言で」と言われたのでいろいろ考えて、こうお答えしました。

 「日本共産党という党は、その名が示すように、資本主義という体制を人類が到達した最後の体制と思っていません。人類はこの矛盾と苦しみに満ちた体制をのりこえて、その先の社会――社会主義・共産主義に進む力をもっている。この信念・確信を、日本共産党は、どんな苦しい時代にも、ひと時も失ったことはないのです。それが102年続いた理由です」

 小木曽 なるほど。

 志位 たとえば、戦前の苛烈な弾圧のもとで、私たちの先輩たちのたたかいを支えたものは何だったか。反戦平和と民主主義を貫いて12年の投獄をたたかいぬき、戦後の党の発展にも大きな足跡を残した宮本顕治さんは、「獄中12年の支えとなったものは」との問いに、「一口にいえば、共産主義の原理に深い確信をもっていたから」だ、「社会発展の法則が、たとえ共産党が弾圧されようが組織がこわされようが、かわらず発展していくんだという確信」だったと答えています。

 あらためて宮本さんの暗黒政治のもとでの公判記録(1944年)を読んでみますと、宮本さんは法廷で、「我々の究極の目的は社会の必然的発展を促進」することにあるとのべたうえで、日本の歴史の発展について、原始共同体、奴隷制、封建制、資本主義と、スケール大きく諄々(じゅんじゅん)と語り、資本主義の矛盾を解決するために社会主義を追求していると語り、「このような矛盾を排除するための行為は刑法の道義的観念に照らして罰せられるべきものではない」と喝破しています。

 西沢 まるで法廷が歴史学の教室に変わったかのような……。

 志位 堂々たる弁論の展開です。私は、この間、戦前、迫害と不屈にたたかい、24歳の若さで命を落とした4人の女性党員――飯島喜美、伊藤千代子、高島満兎(まと)、田中サガヨについてそれぞれ話す機会がありましたが、どの先輩たちも科学的社会主義の古典を懸命に読み、自らの血肉にする努力をしていたことがとても印象的でした。

 社会発展の法則を明らかにした科学的社会主義への世界観的確信、資本主義の矛盾があるかぎりわれわれの事業は不滅だという確信こそ、どんな困難のなかでもたたかいの支えとなり、103年という党史を刻んだ根本的力だと思います。

欧州の新しい発展の動き――資本主義の矛盾があるかぎり私たちの事業は不滅

 西沢 いまのお話を聞いて、議長が、欧州歴訪の報告会で、「資本主義の矛盾があるかぎり、社会進歩をめざす運動は必ず起こり、必ず発展する」と強調されたことを思い出します。

 志位 それは欧州歴訪の強い実感でした。旧ソ連・東欧の崩壊によって、欧州の左翼・進歩勢力は大きな困難に直面しました。しかし、それから30年余たったいま、欧州を訪問してみますと、さまざまな発展の動きが起こっているのです。激動のなかで姿を消した党もありますが、新しく生まれた党もあり、新しく再生した党もある。困難ななかで前途を開くために苦闘している党もある。マルクス主義の立場に立って頑張っている党もあれば、そういう立場ではないが、それぞれなりの立場で資本主義を乗り越えた新しい社会をめざしている党もある。

 その全体の姿に接し、私は、資本主義の矛盾があるかぎり私たちの事業は不滅だという強い確信をあらたにしました。そして、格差拡大、気候危機など資本主義の矛盾が深まるなかで、いよいよ私たちの出番だということを感じました。

 日本共産党の前途を考えた場合、今後も山あり谷あり、さまざまな困難や曲折は避けられないでしょう。しかし、どんな状況のもとでも揺らぐことのない力を身につけること、私たちの事業の生命力・不滅性に対しての大局的な科学的確信をもつこと、そうした世界観を育んでいくことがいま大切ではないでしょうか。

「共産主義と自由」――理論と実践を大きく発展させる年に

どこに力を入れてまとめたのかのポイントについて

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(写真)『Q&A 共産主義と自由』

 小木曽 いまのお話ともかかわることですが、昨年は、「共産主義と自由」について新しい開拓を開始した年になりました。党大会決定で「人間の自由」と未来社会についてのまとまった解明が行われ、それを受けて民青主催の「学生オンラインゼミ」、それをまとめた『Q&A 共産主義と自由』、全国学習・教育部長会議での講義――「『自由な時間』と未来社会論――マルクスの探究の足跡をたどる」などの探求、それにもとづく学習と対話が開始されました。その理論的ポイントを短くお話しいただけませんか。

 志位 短くというのはなかなか難しいのですが、どこに力を入れてまとめたのかのポイントをお話しします。

 まず大会決定でも、『Q&A 共産主義と自由』でも力を入れているのは、「資本主義はほんとうに『人間の自由』を保障しているか」という問いかけです。ごく一握りの超富裕層とグローバル大企業が空前の繁栄を謳歌(おうか)する一方、労働者に賃金の押し下げ、不安定雇用、女性や少女に無償のケア労働を強いる社会が、自由な社会と言えるか。気候危機は、人類の生存の自由という、「自由」の根源的土台を危険にさらしているではないか。そうした問いかけから始めています。

 西沢 資本主義への批判的な問いかけが対話の入り口になるということですね。

 志位 そうです。青年・国民の生活の実態から出発して、こうした問いかけは無数にできるのではないでしょうか。

 そのうえで、『Q&A 共産主義と自由』では、「人間の自由」をキーワードにして、社会主義・共産主義の本当の姿について、三つの角度から明らかにしています。

 第一の角度は、「利潤第一主義」からの自由です。ここでは「生産手段の社会化」と「人間の自由」とが深く結びついていることに一つの力点をおきました。「生産手段の社会化」というと「人間不在の統制経済」を連想する方も多い。しかしそれはまったく違います。それは「自由な生産者が主役」の社会の実現に道を開くものです。それはまた、貧困や格差からの自由、恐慌や気候危機からの自由など資本主義の害悪からの自由を保障するものとなります。「人間の自由」が大きく拡大することを明らかにしました。

 第二の角度は、すべての人間の自由で全面的な発展を「基本原理」(マルクス『資本論』)とする社会だということです。自分自身がもっている力をのびのびと豊かに伸ばすことを願わない人はいません。万人が自由で全面的に発展できる社会はどうやったらつくれるか。マルクスは、1850年代~60年代の経済学の本格的研究のなかで、十分な「自由に処分できる時間」=「自由な時間」を得ることこそ、その最大のカギだということを突き止めていきます。昨年6月の講義「『自由な時間』と未来社会論」では、マルクスの探究の足跡を時系列でたどる作業をしてみました。

 第三の角度は、発達した資本主義国から社会主義・共産主義に進む場合には、「人間の自由」という点でも、計り知れない豊かな可能性があるということです。綱領では、発達した資本主義がつくりだし、未来社会に継承・発展させる、「高度な生産力」「自由と民主主義の諸制度」「人間の個性」などの「五つの要素」を明らかにしていますが、『Q&A 共産主義と自由』では、ただ「継承」させられるだけでなく、「発展」させられることに力点をおいて論じました。

 小木曽 全体が「共産主義には自由がない」という誤解への回答になっていますね。

 志位 そうです。ただ、そうした議論への反論から入るのでなく、共産主義こそあらゆる意味で人間の自由が豊かに花開く社会だということを攻勢的に論じるなかで、そうした誤解も解きほぐしていくという論じ方にしました。

このテーマでの対話の楽しさ――「価値ある生き方とは」「本当の富とは」が議論に

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(写真)教職員のつどいで質問に答えながら交流する志位和夫議長=2024年11月17日、名古屋市昭和区

 西沢 議長は、「高校生サマーセミナー」や、「あいち教職員のつどい」、ベルリンでの理論交流などでも、このテーマで対話をされています。一連の対話を通じて実感されていることをお話しください。

 志位 このテーマでの対話は実に楽しい、ということが実感です。「人間にとって本当に価値ある生き方は何か」「人間と社会にとっての本当の富とは何か」といった、深いところの議論になっていくのです。

 高校生との対話では「競争づけで自由な時間がない」という悩みが語られ、そこから日本の教育をどう変えていくかが議論になりました。教職員のみなさんとの対話では、「未来社会での教育の役割はどうなるのか」という質問が出され、「人格の完成」という資本主義のもとで人類が追求してきた民主主義的教育の大方向が、未来社会ではより豊かなものとして発展させられるだろうという展望を話しました。

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(写真)サマーセミナーで参加者と語り合う志位和夫議長。その左は坂井希青年・学生委員会責任者=2024年8月24日、党本部

 小木曽 このテーマでの対話をつうじて、人間の生き方、社会のかかえるさまざまな問題を深く考えるきっかけになるのですね。

 志位 そういう楽しさがあると思います。また、対話をつうじて、さらに理論的に頭の中が整理されてきた問題もあります。

 小木曽 どういうことでしょう。

「富とは何か」を考える――マルクスはとても豊かな捉え方をしていた

 志位 たとえば、「富とは何か」という問題です。一般に「富」といえば、労働がつくりだす物質的富――衣食住の諸条件も含めて――がまず頭に浮かびます。人間が生きていくうえでそれは前提条件であり、必要な物質的富がなければ人間らしい暮らしはなりたちません。

 同時に、物質的富さえあれば豊かな生活といえるでしょうか。収入があっても「働いて、食べて、寝るだけ」の生活では、人間らしい暮らしとはいえない。自分自身を豊かに伸ばすための、家族とのだんらんのための、社会的活動を行うための「自由な時間」があってこそ、本当に人間らしい暮らしといえるのではないでしょうか。マルクスは『資本論草稿』のなかで、「自由に処分できる時間こそ、社会と人間にとっての真の富」だという言葉をのこしています。

 さらに、「自由に処分できる時間」が生み出すものは何でしょうか。「人間の自由で全面的な発展」です。社会にとってこれ以上の富はあるでしょうか。ありません。社会は人間によって構成されているのですから。

 もう一つ、忘れてはならないのは、「自然」こそがあらゆる「富」の土台だということです。マルクスは、1875年に執筆した『ゴータ綱領批判』のなかで、「労働はすべての富の源泉」だという議論を批判し、「それは間違いだ。自然は、労働と同じように富の源泉だし、労働そのものが自然力の現われではないか」と語っています。

 このようにマルクスは、「富とは何か」について、とても豊かな捉え方をしています。労働がつくりだす物質的富、自由な時間、人間の自由で全面的な発展、そして自然そのもの――その総体を「富」として捉えていると思います。

 西沢 物質的富だけではないということが大事なところですね。

 志位 そう思います。逆に言えば物質的富があふれるように拡大しても、そのことによって、「自由な時間」、人間の発展、そして自然を犠牲にするようでは、本当に豊かな社会とは言えないということになりますね。

 マルクスは『ゴータ綱領批判』のなかで、「共産主義社会のより高い段階」で、「協同組合的富のすべての源泉がいっそうあふれるほど湧きでるようになる」という展望をのべていますが、ここで言われている「協同組合的富」とは、物質的富だけでなく、自由な時間、人間の全面的発展、そして豊かな自然、それらの全体についてのべていると読むべきではないかと考えています。

 小木曽 そういうことも含めて実に楽しい対話になると。

 志位 そう思いますよ。ぜひ今年も「共産主義と自由」にかんする学習と対話を、楽しく、豊かに、大いに広げていっていただきたい。それは、日本の民主的改革の事業に国民の多数を結集するうえでも、大きな力になることでしょう。

「賃上げと一体で、労働時間の短縮を」――「先決条件」とのマルクスの提起にこたえて

 小木曽 「自由な時間」の拡大は、未来社会ではじめて問題になることではなく、現在の日本での熱い焦点の一つです。党が「賃上げと一体で、労働時間の短縮を」という政策提起を行ったことも、昨年の大きな発展でした。

 志位 そう思います。これは何よりも国民の切実な要求になっています。昨年12月、「朝日」が、67職種の調査を行い、男性の労働時間が長い職種ほど、正社員として働く女性の割合が少ない傾向にあることを明らかにする記事を掲載しました。女性が育児と仕事の両立が難しいために非正規雇用を選ばざるをえない。長時間労働が、ジェンダー平等の大きな壁となっている。長時間労働をただし、労働者の自由な生活時間を豊かにすることは、みんなの願いであり、そのための運動に力を入れたいと考えます。

 同時に、この運動を国民全体のものにするためには、「そうはいっても賃金が下がるのでは」「人手不足のなかで難しい」などの疑問にこたえて、時短と賃上げは両立するし、労働条件を改善してこそ人手不足も解消する、それを実行する力を日本経済は持っていることなどを、丁寧に明らかにしていくことが大切だと思います。

 この問題がいかに大切か。『資本論』でも引用されているマルクスの次の言葉を紹介したいと思います。

 「われわれは、労働日の制限が、それなしには他のすべての〔改善と〕解放の試みがすべて失敗に終わらざるをえない先決条件であると言明する」(1866年、「インタナショナル(国際労働者協会)のジュネーブ大会の決議」から)

 西沢 「先決条件」とは重い言葉ですね。

 志位 労働者は、長時間労働に置かれたままでは、知的・精神的発達の道が閉ざされ、社会的交流や運動に参加することもできない、それではその解放をかちとることはできない。労働者階級の解放をなしとげようとすれば、労働時間の短縮は「先決条件」だ――このマルクスの提起は、現代日本にもそっくりあてはまるのではないでしょうか。そうした見地で、この運動を大いに発展させようではありませんか。

「新しい政治プロセス」――多数者革命を推進する党の真価を発揮する時

 小木曽 最後に、今年の日本のたたかいについて一言お願いします。総選挙の審判で生まれた情勢について、党は、国民が自民党政治に代わる新しい政治を模索し、探求する「新しい政治プロセス」が始まったととらえ、新たなたたかいにとりくむことを呼びかけています。

 志位 日本の情勢分析と活動方針については、1月10日~11日に開催される第4回中央委員会総会で明らかにすることになります。私は、「新しい政治プロセス」を前進させるうえでの日本共産党の役割を、党大会決定に立ち返って一言のべておきたいと思います。

 大会決定は「多数者革命と日本共産党の役割」という項で、「多数者革命のなかで共産党は何をやるのか」と問いかけ、“あらゆる社会変革において、その主体となるのは、主権者である国民であって、国民の多数が、自らの置かれている客観的立場を自覚し、どこに自分たちを苦しめている根源があるのか、日本の進むべき道は何かを自覚してはじめて、社会変革は現実のものとなる、不屈性と先見性を発揮して、国民の自覚と成長を推進し、多数者を結集することに日本共産党の役割がある”とのべています。

 いままさに、そのような真価を党が発揮すべき時だと思います。自公の過半数割れという新しい状況で、暮らしでも平和でも国民の切実な要求実現のたたかいをおこし、国民とともにたたかいを前進させるという政治姿勢を堅持して奮闘していきたい。同時に、国民を苦しめている根源に、「企業・団体献金をテコにした財界中心政治」「日米同盟絶対の政治」があることを明らかにし、このゆがみをただしてこそ希望ある新しい政治への道が開かれてくることを語っていくことは、わが党に課せられた重要な仕事と肝に銘じてがんばりたい。

 この仕事をやりぬくならば、党の新たな躍進への道が必ず開けてくる。そういう確信と展望をもち、都議選・参院選勝利のために力をつくし、強く大きな党づくりを成功させる年にしていきたいと決意しています。

 小木曽、西沢 長い時間、ありがとうございました。

 
 

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