内外政策評論 TheOpinion on Global & Domestic Issues

このブログは、広い視野から内外諸問題を分析し、提言を試みます。
Policy Essayist

「天下り」原則禁止は何のため行うのか

2007-05-31 | Weblog
「天下り」原則禁止は何のため行うのか

 公務員の「天下り」禁止につき、政府が促進する意向を明らかにし、官僚が抵抗するのでその実現には半信半疑ではあるが、多くの国民は見せ掛けではない意味のある措置を期待している。しかし、各省庁の人事当局による「斡旋」に代え、「人材センター」による集中管理方式の現実性などを巡って、一部の官僚・官僚OBや官僚の事業企画や予算獲得等で依存しているいわゆる「族議員」の根強い反対はなかなか沈静化しない。
これを反映して、「官僚いじめ」であるとか、国家公務員の人材確保困難にし、特定国立大学からの応募者が減少しているなどを指摘する論調も出始めている。
 1.確かに、国民はこれ以上の官僚の質の低下は望んでいないのであろう。しかし同時に、国民は、納税者として、また、年金や雇用保険の拠出者、各種の公共料金の支払い者として、談合による公共事業コストの吊り上げや膨大な施設建設、補助金・委託費支出による浪費が継続することは望んでいない。バブル経済崩壊後の10年余に亘る長期の景気の低迷の中で、国民は税や年金料率その他の引き上げに耐え、更に、既定の路線とも見える増税と、年金給付の後退などにより、将来不安を抱いており、国民こそが公務員や議員の既得権益と浪費の被害者であり、これ以上いじめられるのは御免だと思っているのではないだろうか。
 これまで、官僚による不正支出や流用、プール金慣行、談合などにより、公費の浪費が報道されるたびに「綱紀の粛正」や厳格化がなされて来たが、その後も次から次へと不正不祥事が続き、官僚自らが国民感情を理解し、真剣に自己改革する姿勢は見えてこない。聞こえてくるのは、「官僚いじめ」や「天下り禁止反対」、既得権擁護などでしかない。地方公務員も同様だ。国民は、何時まで公務員や議員の既得権益や公費の浪費のために税金や各種の料金を支払わなくてはならないのだろうか。
 監督官庁が「関係団体」や「関係企業」に職員を「斡旋」「派遣」することは、職業の機会を確保するということではあるが、それに伴う給与や可なりの退職金の形での「利益提供」を得るということに他ならない。関係団体や関係企業は、一般的な「能力」ではなく、むしろ直接、間接に、監督官庁よりの補助金、委託費等の予算の継続や公共事業、納品等を期待して受け入れており、それは、予算、即ち税金等の公的資金を前提としている。そこに「天下り」の制度的問題があるのではないのか。「天下り」は、単なる「職業斡旋」ではない。監督官庁よりの「天下り人事」が継続する限り、特殊法人や独立行政法人、各種の公益団体などの政府関係団体は、時代のニーズが低下しても維持され、増殖し続けるのであろう。誰のための政府組織か。誰のための公共事業、調達等であるのか。これらの事業は、国民のニーズの程度や変化により、3、4年毎など、一定期間ごとに精査され、廃止、民間事業への移管などが行われるべきだ。
2、監督官庁毎の「天下り」を廃止して、集中的な「人材センター」にするとの案が検討されている。しかし、これについても、一方で実践可能性、他方で談合体質は変わらず、効果に疑問など、両サイドからの疑問が呈されている。
 確かに、公務員だけに政府管理の特別の「人材センター」が何故必要なのであろうか。結局は形を変えて、より複雑で、重層的な「天下り」が制度化して行くのではないのだろうか。苦労しているのは公務員だけではない。
職業斡旋機関は、公的なハローワークの他、民間の多くの職業斡旋機関やボランテイアー団体等があり、個々人がその能力と希望する仕事や活動に応じ選択して登録、応募することも出来るようになって来ている。それを促進・強化すると共に、政府関係団体のポストについても、「利害関係者」を排除しつつ、一般から「公募」する形態として、一般国民に門戸を開いて行くことが望ましいのではないであろうか。
重要なことは、監督官庁や関連機関から、各種の政府機関や公益法人、関係企業への就職を原則禁止することであろう。株式の売買においても、原則自由ではあるが、市場の公正を保つため「インサイダー」取引を禁じている。同様に、公務員が、直接の「利益関係団体や組織・企業」に再就職することは好ましくなく、ましてや監督官庁が斡旋等する慣行を常態化すべきでもない。
3.公務員の人材確保は重要であり、必要な待遇は確保して行かなくてはならない。しかし、「天下り」ポストの確保など、適正を欠く利益により、公務員の人材を確保して行くべきなのであろうか。
談合の他、公務員による多くの不正や不祥事が絶えない。公務員や準公務員の質の向上は急務であろう。そのためには、公正な待遇を確保すると共に、既得権益目的ではなく、国家、国民のために働く意思と能力のある「志の高い人材」を採用、育成して行くことが必要であろう。
そのため採用も、新卒主義、エスカレーター人事ではなく、必要な人材を公募し、中間採用をもっと活用し、広く国民から志のある人材を募ると共に、国民の行政への参加の機会を拡大して行くべきなのであろう。
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