内外政策評論 TheOpinion on Global & Domestic Issues

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Policy Essayist

テロ特措法の「条件付」延長を提案する (その3)<不許無断転載・引用> 

2007-10-02 | Weblog
テロ特措法の「条件付」延長を提案する (その3)    <不許無断転載・引用>
―A Proposal for a Qualified Extension of the Law on the Special Measures against Terrorism ―
                                                                   2007.9.22.

1.日米同盟優先か、国連の枠組み重視か (その1.参照)
2.集団的自衛権の制限的行使か、国際貢献か (その2.参照)
3.テロ特措法の「条件付」延長を提案する
 アフガニスタンにおける国際テロ制圧活動は、米国の「テロとの戦争」の一環として「不朽の自由作戦(OEF)」の作戦名で開始されたものであり、これに友邦国が加わった多国籍の枠組みの活動であるが、基本的には米国始め参加各国の主権国としての行動である。無論、国連は、各国の自衛活動を妨げるものではない。
 他方、国連安保理もこのようなテロ活動を「国際の平和と安全への脅威」との認識を明らかにし、取締りの強化などの防止措置等を世界に求めており、各国はテロの撲滅に向けての協調、貢献を求められている。また、アフガン領内については、「国際治安部隊(ISAF)」が編成されている。従って、安保理は、インド洋における軍事行動や軍事的措置を求めているわけではないが、インド洋における艦船行動を含め、現在のアフガンに対する行動はテロ制圧を目的とした国際的な協調行動と言って良いのであろう。
問題は、インド洋における活動を含め、テロ掃討活動を既に6年間継続し、また、アフガンのタリバン勢力を政権の座から降ろし、暫定政権を経て、2004年10月の大統領選挙でカルザイ大統領の下に新政権を樹立してから3年余になるにも拘わらず、従来のインド洋での海上行動を継続すべきか否かである。01年9月の安保理決議(1368号)において、「あらゆる措置を取る用意がある」とされているにも拘わらず、その後、インド洋における「海上阻止行動」については、上述したアフガン領内での国際治安部隊の継続決議の前文で言及されているものの、何らの「措置」も取られていない。アフガニスタンにカルザイ政権が樹立されて3年が経過している一方、タリバン勢力は山岳地帯などで一定の勢力を維持し、また、イスラム過激派アル・カイーダ・グループは、アフガンやパキスタン領内だけでなく、イラクや英国その他の国においてネットワークを拡大していると見られている。選挙に基づくカルザイ政権が樹立されていることを前提として、国連安保理は、同国の治安維持能力の強化を含め、国連としての新たな「措置」と国際的な支援、協力の枠組みを検討すべき時期であろう。
 このような考え方を背景として、次の通り、テロ特措法の「条件付」延長を提案したい。
(1) テロ特措法を1年を限度として延長するが、イント洋における給油と給水活動
を削減することとし、「計画」を変更する。「計画」は、6カ月後に更なる削減を念頭に再検討する。その他の措置は実施しない。
インド洋における日本の補給活動は、参加各国の責任において実施しているものである
が、「国際の平和と安全への脅威」として国連安保理が認定している国際テロ撲滅のための米国を中心とする国際的な協調行動の一環である。ブッシュ大統領など米国の要路のみならず、メルケル独首相やハワード豪首相などよりも、日本の活動を評価し、給油継続の要請がなされている。また、米国については、ブッシュ共和党政権のみならず、民主党が多数を握る下院において、イラク、アフガニスタンにおける「テロとの戦争」に対する日本の支援に謝意を表明する決議が採択されており、政権内外から一定の評価がなされている。
このような状況の中で直ちに活動を停止することは、どの政権であれ、日本政府の国際的信用を傷付けるだけでなく、国連等による次の「措置」を検討する機会も与えないこととなり、国際テロ撲滅への圧力を低下させる恐れがある。他方、アフガンに対する活動は6年余になり、また、同国には選挙に基づく政権が樹立されており、従来の活動の恒常化には弊害が予想されるので、1年を限度に延長し、補給量・頻度の削減を行う。
 なお、安倍総理が9月のAPEC首脳会議後の記者会見において、インド洋における給油は「国際公約」になったとし、また、福田康夫総理も自民総裁選挙中に同趣旨のことを述べ、給油継続の必要性に言及している。しかし、行政措置で済む話ではなく、テロ特措法の延長のため国会の承認を要する事柄である一方、7月の参院選で参議院は与野党が逆転しており、参院第一党の民主党が同法延長に反対している以上、国会での見通しの無いまま、「対外約束」することは、国会軽視等との指摘を受けても仕方が無い。しかし、自国総理の発言であるので、日本政府の国際的信用の維持の観点から、国会としても一定の配慮をする必要があろう。
 削減して浮いた予算は、明年日本でG8サミットが開催されることを念頭に置いて、空港、港湾等における国際テロ対策の強化などに充当する。
(2) その上で、国連安保理が新たな「措置」を検討するよう、政府より米国他関係
諸国及び国連安保理に要請する。
具体的には、参加国のイニシアテイヴと責任において実施されている現在のインド洋における多国籍活動の枠組みに代えて、国連の「指揮統制(Command & Control)」の下での平和維持活動とする枠組みを検討すると共に、アフガン領内で実施されている国際治安部隊(ISAF)についても同様の枠組みとするよう要請する。
また、アフガン政府の統治能力や治安維持能力の向上を中心とした支援措置を検討することが望まれる。日本としても、政府の統治能力などの向上のための研修生や学生の受け入れや第三国での研修支援など、協力し得る分野は多い。警察や場合により治安部隊の治安維持能力の向上についても、「国連の枠内での活動」であれば、研修を中心として支援方法を検討すべきであろう。
 要すれば、同法「延長」に伴い、与野党協議の上、国連安保理による新たな「措置」の検討を求める国会決議を採択するのも一案であろう。
 因みに、現在アフガニスタンにおいて、米国を含む北大西洋条約機構(NATO )諸国等37カ国で構成する国際治安部隊(ISAF)が設立され(01年12月、安保理決議1386号)、首都カブール及び周辺地域において治安維持活動を行っているが、26カ国が同盟関係にあるNATO諸国であることもあり、指揮系統はNATOが担っている(当初は参加国輪番制)。従って、参加部隊の「指揮統制」は、基本的にNATOと参加各国に委ねられており、日本は、憲法上の制約から自衛隊は派遣していない。また、ISAFが地方展開するようになってから、地方復興チーム(PRT)が設置され(安保理決議1510号)、地方における国際援助活動の実施のための治安環境の改善などを目的とした小規模の部隊が展開され、米英等27カ国が参加しているが、武力衝突が起こった場合の対応は参加部隊に委ねられることから、同様の理由で日本は派遣していない。アフガニスタンでは、「ブーツを大地に(Boots on the Ground)」とは行かなかったのである。
 しかし、国際治安部隊(ISAF)やその他の国際平和維持活動が、国連安保理において、国連の「指揮統制(Command & Control )」の下で各国から派遣される部隊が編成、展開されることになれば、日本が自衛隊を派遣しても、国連の「指揮統制」に従い、日本の「国権の発動としての武力の行使や威嚇」を伴う海外派遣とはならないので、参加は可能となる。もっとも、国連の「指揮統制」の下に服することになるので、派遣される要員は、命令ではなく、自主的な参加となるので、参加を希望する要員の事前登録など、体制整備に向けての準備が必要であろう。
 なお、国連憲章は、安保理の下に軍事参謀委員会を設置し(憲章第46、47条)、国連の「指揮」に服する正規の「国連軍」の編成を予定しているが(憲章43条)、米国等が軍隊の「指揮統制」を自国の主権のもとに保持することを望んでおり、これまで一度も組織されていない。東西冷戦も終わり、地域的な紛争や部族対立、そして国家ではない国際テロ・グループとの戦いなどが中心となっているので、正規の「国連軍」の編成も検討されて良い時期であろう。日本としても、憲法改正問題はそれとして検討するとして、「国連軍」、又は、それに類似する国連の「指揮」の下での平和維持活動の編成を検討するよう要請するなど、実質的な国連機能の強化、改革にもっと努力すると共に、実現した際の参加に向けた環境作りなどの検討に着手すべきであろう。
(3) 同法の延長ではなく、給油・給水活動に絞った新法の提出については、新法提出
後、支援の根拠や憲法解釈という基本概念からの審議が必要となり、そもそも論で行き詰るおそれがある。その上、テロ特措法の「延長」が断念されれば、現行の給油活動は中断されることになる上、新政権の国際的信用に影を落とすなど、デメリットが大きいと予想される。現存のテロ特措法であれば、既に国会の審議を経た既存の法律であり、且つ、上記(1)、(2)の「条件付」の延長であるので、歯止めは掛けられていると言えよう。
 「条件付延長」が困難な見通しであれば、給油、給水に限定した新法の提出ということになるが、現行法は失効することになり、改めて給油、給水のみを行う新たな情勢の変化や新たな大義などを国民に示す必要があろう。国際貢献の必要性については、多くの国民の理解を得れるであろうが、それを「国連の枠組み」の下で実施するか、或いは、憲法上の制約はあるが、「集団的自衛権の制限的行使」や「同盟国との関係」を重視して行うかの選択であり、本質的な検討が必要となろう。
 他方、対イラク支援特別措置法の再延長については疑義が残る。
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