内外政策評論 TheOpinion on Global & Domestic Issues

このブログは、広い視野から内外諸問題を分析し、提言を試みます。
Policy Essayist

 Tokyo Olympics proves No Truce with Corona Virus !

2021-08-04 | Weblog

 Tokyo Olympics proves No Truce with Corona Virus !

  The Tokyo Olympics started on July 23rd, 2021, and athletes from across the World are competing each other for medals. There are so many good records and dramas. Bur outside the Olympic sites, the Wuhan-originated Corona Virus(Covid-19) and its Variants are spreading quickly particularly in Tokyo and neighboring prefectures. The Japanese Government had declared the Fourth Emergency State against Corona Virus on June 21st till August 22nd for Tokyo, in anticipation of a decrease in new cases before the opening of the Olympics. But, in spite of such Emergency Declaration, Corona Virus, especially Indian variant, continues to spread rather rapidly in Tokyo and other areas. About 155 Olympic related persons including some foreign athletes were also infected as of 27th July,2021. So far over 37 thousand Olympic related foreigners arrived in Tokyo. Procedurally it seems to be relatively well managed.

  1.No Olympic Truce with Corona Virus and its Variants

  IOC President T. Bach has been in Tokyo since mid July to check the preparations including accommodations for athletes and facilities, and to meet authorities concerned including Prime Minister. He said to TV interviewers that even at a time of difficulty, athletes from across the World gather in Tokyo and would deliver excitements and solidarity to the World.

  He visited the City of Hiroshima and the Atomic Bomb Museum there, and pray for a World Peace. It is expected as a basic spirit of Olympics that any war should be suspended, and a truce should be upheld during the Olympic games even if there is one. We appreciate his consideration and efforts.

  But Corona Virus never agrees with any truce with the human society nor the international community. It will spread day and night wherever people gather. There might be some Virus Mix in Tokyo. And such Coronavirus Mix might be spread not only in Japan but also in the rest of the world after the Olympic games. We are at war with Wuhan-originated Corona Virus and its variants. The Pandemic will never agree with a truce.

 2.Corona Virus has not been conquered yet

  Not only Japan, but also many countries in the World are still fighting against the Corona Virus pandemic. Delta variant, which spread very fast and widely in India and caused near collapse of hospital capacities, spread in Asia and other parts of the world. In Indonesia, it is spread widely, leading near collapse of the hospital capacities.

  Vaccines are effective and it is hopeful to overcome the Pandemic sooner or later. But it takes more time for wanted people to be vaccinated throughout the world. The IOC says that most Olympic athletes are vaccinated and tested often during the Olympic period. But there are so many people in the world waiting for such opportunity. Also we should not forget that even with the vaccines, corona virus itself including variants do not disappear from the World. It will exist for long.

  Many people expect safe and successful Olympic games. There are many Olympic fans. At the same time, over 80% of the people in Japan are worried about an additional surge of the Pandemic according to most opinion polls carried out even before the Tokyo Olympins. How can people enjoy the Olympics without worry in the face of the surging new cases and death by the Corona Virus. (2021.7.28.)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日韓間の「不都合な」事実―竹島(独島)問題―再掲

2021-08-04 | Weblog

日韓間の「不都合な」事実―竹島(独島)問題―再掲
 2012年1月24日、玄葉外相が通常国会冒頭における外交演説において、「竹島問題」に触れたのに対し、翌25日、韓国外交通商部は趙報道官名で、「玄葉外相が韓国固有の領土である独島に対し、不当に領有権を主張したことについて強く抗議し、直ちに撤回することを求める」旨の声明を出し、強く反発した。
 竹島は、韓国では「独島」(Dokdo)と呼ばれており、日本と連合国とのサンフランシスコ平和条約発効(52年4月28日)を前にして、李承晩・大韓民国(韓国)大統領が、1952年1月18日、「海洋主権」を宣言し、周辺海域に「漁船立ち入り禁止線」、通称「李承晩ライン」を設定し、同島は韓国の支配下にあると一方的に宣言して以来、日韓間の喉もとの小骨となっている。玄葉外相が「竹島」問題と述べたことから、日本側が韓国側の呼称、領有権を認めず、同島への灯台や桟橋の建設など、韓国が行っている各種の行動を認めていないと受け止められたためと見られている。しかし玄葉外相は、外交演説の中で韓国を「基本的な価値観を共有する最も重要な隣国」と位置付けた後、「竹島問題は,一朝一夕に解決する問題ではないが、韓国側に対して受け入れられないものについては受け入れられないとしっかりと伝え、粘り強く対応する」旨、しごく当たり前のことを述べたに過ぎない。韓国側の声明は、外交通商部の報道官レベルのものであり、それ程強いものではないとも受け取れるが、過敏、過剰な反応と映る。日本での韓流ブームなどで象徴される両国間の文化、観光交流や活発な経済交流などの実体からからすると違和感を受ける動きであり、両国政府間が協調の精神で知恵を出し合い、問題が解決されること期待したい。
 1、 日韓の古くからの接点、竹島(独島)の歴史
 同島は、東西2つの岩礁島からなっており、日比谷公園と同程度の面積しかなく、また定住出来るような環境にはないが、1905年1月28日、日本政府は、閣議で「竹島」と命名し、「島根県隠岐島司」の所管とした。日本が、韓国(大韓帝国)を併合(1910年8月)した5年以上も前のことである。
しかし、同島を巡る日韓両国の交流は、両国の沿岸漁民を中心として古くからあるようであり、1618年には、日本人2名が江戸幕府の許可を得て同島に渡航し、また、1692、3年頃には、これら2名が周辺島嶼から2名の朝鮮人を日本に連行したことから、日本と朝鮮の間に紛争(「竹島一件」)が発生したなどの記録があり、この頃より周辺海域での接触、紛争が活発になって来たようだ。
 もっとも、その頃は韓国側の「鬱陵島」を「竹島」と呼び、現在の竹島を「松島」と呼んでいたようである。また1849年、フランスの捕鯨船Liancourt号が同島を発見し、リアンクール島と名付け、その後日本では、「りゃんこ島」とか「リアンクール岩」とも呼ばれたことがあるようで、同島(岩礁)を巡る両国の交流の歴史にも混同がありそうだ。因みに、米国国務省がホーム・ページで公表している各国別地図では、日韓双方に、Liancourt Rocks(リアンコート岩礁)の名称で記載している。
いずれにしても竹島(独島)は人が住める状況にはない岩礁であるが、両国沿岸には大小多くの島が点在しており、恐らく古くから漁民などが同島周辺を往来していたのであろう。韓国側にもいろいろと記録があるようであるが、従来人が住んでいるわけではなく、同島周辺海域、島嶼を巡る往来のようであり、正に両国双方の接触の「最外延点」である。
 このような古くからの交流の歴史を考えると、竹島(独島)問題は、靖国神社参拝やいわゆる「(侵略の)歴史問題」とは関係がないのである。韓国側も、歴史的事実は事実として認識して欲しいものである。他方日本とは反対側の韓国からの見方もあろうから、双方の専門家で同島の歴史を客観的に研究し、相互の理解を深める努力も必要のようだ。
それはそれとして、同島が両国の古来の接触の「最外延点」であるという歴史的背景を踏まえ、同島問題の早期解決を模索できないものであろうか。

 2、両国に求められる竹島(独島)問題の早期解決
 この問題は、日本政府としては1954年以来国際司法裁判所に付託することを韓国側に提案し来ているが、韓国政府が同意していないため実現していない。
 竹島は韓国により事実上占拠されており、韓国側はこれを「実効支配」と称している。しかし本来「実効支配」とは、「政府承認の重要な要件」の一つとして、特定国の政府が国内全域において実効的に支配が確立出来ているか否かを判断する概念であり、日本が領有を主張する竹島を「実力行使」で占拠しても、日本が領有を明確に表明している限り、実力行使による「占拠」でしかない。日本側とすれば、韓国が国際司法裁判所への付託に同意するまで要請を続け、領有権において譲歩する必要はないとの意見もあろう。しかしお互いに本件を巡り「消耗戦」を継続し、両国関係改善の阻害要因とすることは両国国民の健全な交流をも阻み、真の「日韓新時代」などは幕開けしないであろう。国際司法裁判所への付託が実現し難い場合には、両国がこの問題に冷静に対処し、同島の共同管理・共同統治の道を速やかに模索するなど、早期の解決が望まれる。
(2012.01.26.)(Copy Right Reserved.)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

米国、北朝鮮両国首脳、越えた軍事境界線―‘南北和平’へ動く!? (再掲)

2021-08-04 | Weblog

米国、北朝鮮両国首脳、越えた軍事境界線―‘南北和平’へ動く!? (再掲)
2019年6月30日午後、トランプ米国大統領は、大阪でのG20首脳会議の後、韓国を訪問の上、板門店を訪問し軍事境界線を挟んで北朝鮮の金正恩委員長と握手し、南北国境線を越え北朝鮮側に立ち、改めて握手し、挨拶を取り交わした。両首脳はその後トランプ氏と正恩氏は軍事境界線に接する韓国側施設「自由の家」に入り、非公式な意見交換を行った。これは北朝鮮の非核化に関する公式会談ではないが、米国大統領が北朝鮮の領土に立ったのは朝鮮戦争後初めてのことである。
米・朝両国は休戦状態にあるが、トランプ大統領が北朝鮮側領土に立ち、軍事境界線に接する韓国側施設「自由の家」で非公式であれ会談したことは、外交関係上、国家承認以上に事実上の‘和平’への方向性を意味する歴史的な1ページと言える。
2018年6月12日の両国首脳の初めての会談に際し、「米国、北朝鮮両国が事実上の国家承認」(2018.6.2.付)との評論を掲載した。
(2019.6.30)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

新型コロナウイルス、中国の国際社会での姿勢が問われる                                                                  

2021-08-04 | Weblog

新型コロナウイルス、中国の国際社会での姿勢が問われる

                                                                  2021年1月15日

 中国武漢を発生源とするコロナウイルス伝染病が世界に拡大する中、国連保健機関(WHO)は、発生源である武漢への調査団を中国政府に再三に亘り求めていたところ、1月11日になってやっと中国国家衛生健康委員会が、「WHOのコロナウイルス発生源専門家チームが同月14日に訪中して調査を行う」旨公表した。調査団は同日武漢に到着し、やっと武漢での調査が中国側と協力して進められるようだ。

 WHO調査団は、その前の週にも武漢入りする予定だったが、中国側がメンバーへのビザを交付しなかったため延期された。調査団にはオーストラリアの専門家など各国専門家が入っている。オーストラリアと中国の関係は、アフガニスタンにおいて多国籍軍に参加している豪州兵がアフガニスタンの少年をナイフで威嚇している写真を中国側がツイッターに載せたことから、豪州側が激怒し、相互の貿易制限にも発展し、悪化しているなど、政治外交的理由とみられている。

 1、国際協力を阻む中国

 新型コロナウイルスは、2019年12月に武漢で発生し、翌1月に武漢市で感染拡大が始まった。中国政府が市民への情報公表が遅れたことが対応の遅れとなった。新華社通信によると、同年2月3日、習主席は、感染拡大への対応について共産党政治局常務委員会を開き、患者やその家族に対しお見舞の言葉を述べる一方、政府の対応の欠陥や至らなかった点を教訓として、党、政府ともに国を挙げて予防対策に取り組む考えを示した。

 中国の国内的対応の遅れが、世界への情報提供、公表の遅れとなった。世界が無防備の中で、武漢に滞在していて外国人や中国人が同地を去りそれぞれ本国に戻ることを黙認したことが、コロナウイルスの世界的拡大の要因となった。1月15日現在、世界全体の感染者数 9,243万人、 死者198万人以上となっている。更に増え続けており、世界経済への影響も甚大で、職を失い、困窮する者も多い。中国はこの現実を他人事のように発言しているが、中国は情報の遅れを世界に謝罪すべきであろう。

 しかも中国は、WHO調査団による発生地武漢での調査を1年以上遅らせ、コロナウイルス対策の上で重要な発生源や伝染経路などの調査を遅らせた。感染源は、コウモリ又はこれから伝染した動物とされており、武漢の生鮮市場が媒体とされている。また武漢にはウイルスを研究する中国科学院武漢病毒研究所があり、ここで長年に亘りコウモリを研究している専門家がおり、コウモリを媒体とするウイルス等については可なりの研究がなされているとみられている。従って、生鮮市場や武漢病毒研究所の研究状況、及び現在の伝染状況や変異種の存在と中国側の対応などを調査し、その結果を速やかに世界が共有することが、コロナウイルスへの効果的な対応には不可欠だ。

 その調査を1年以上引き延ばし、更に調査団の武漢入りを遅らせることは、パンデミックに取り組む世界への協力の意志の欠如としか言いようがない。これは単に中国だけの問題では無く、世界の人々の健康の問題であるので、中国の真摯な協力と情報の速やかな公開を望みたい。

 中国政府は、コロナウイルスが世界的に拡大し始めた際、一方で途上国に対しマスクの供給など支援するとし、また最近では中国でワクチン開発を行い、ワクチン供給などにより‘健康のシルクロード’を作るとしているが、他方でコロナウイルス撲滅への鍵となる発生源の国際調査を1年以上も遅らせ、国際協力を阻んでいる。

 中国はまた、2020年5月に開催された国連保健機関(WHO)の年次総会に際し、台湾のオブザーバー参加を「1つの中国」政策に反するとして反対し、更に同年11月の総会においても台湾の参加を阻止した。コロナウイルスは台湾だけで無く、国境を越えて世界70億人の健康に関するものであり、台湾のオブザーバー参加に反対することは世界の健康、国際協力を軽視する姿勢と言えよう。中国はコロナウイルスの発生源であり、国、地域を問わず世界70億人の健康に責任がある。

 


 2、問われる国際社会での中国の姿勢と情報公開

 中国は、香港において民主化運動が活発になっている情勢を受けて、反政府活動や香港独立活動などの取り締まりを強化するため、香港に対し香港国家安全維持法を導入することを決定し、2020年6月30日、交付された。

 同法に基づき、2020年7月以降30人程度が逮捕され、その他多数が拘束などされたが、2021年1月6日には、国家や政権転覆をねらった同法違反の疑いがあるとして、香港立法会の民主派の前議員や区議会議員など53人が警察に逮捕された。

 香港は、1997年6月30日に99年間の英国の租借期限を迎え、翌7月1日より中国の領土、主権となった。その際香港住民の要請を背景として、英国と中国との交渉の結果、同年より50年間、香港特別行政区として「高度の自治」を許され、1国2制度となった。その後香港はある程度の自治を許され、一定の政治的自由、民主的制度を得ていたが、徐々に中国化が進み、中国本土より多数の中国人が流入し、また香港人の自由や民主主義に制約が課されるようになった。多くの富裕層等は、事業は香港に残し、自らは英国、豪州、米国などに移住する一方、若い世代を中心として民主活動が活発に行われるようになった。

 自由で民主的だった香港が中国の主権下に戻り、中国化が進み、中国的な制約や仕組みが課され、自由が失われて行くことは非常に残念なことだ。しかし、現在の国家制度においては、香港は中国の領土、主権の下に服せざるを得ない。

 中国に対し香港の自治権、自由と民主主義を維持せよと言っても、中国にとってそれは「内政問題」であり、応じることはないであろう。中国は、将来の国家転覆、反政府活動を防ぐために「香港国家安全維持法」を施行したのだ。香港の返還時に高度の自治を認める英国との国際約束についても、中国としては、安全維持法は香港行政府も承認したものであり、いずれにしても内政干渉などと反論するであろう。

 中国自体が変わらない限り香港の状況を改善することは困難と思われるが、香港は中国の本質を世界の前に映し出しており、正に中国本土内では香港で行われているような政治的抑圧・強制が行われていることを示している。新疆ウイグルやチベットでも同じようなことが行われているのだろう。それは世界の誰の目でも分かることである。

 中国はまた、南シナ海にある南沙諸島などについて領有権を主張しているが、ベトナムやフィリピンなど6か国が領有権を主張しているにも拘わらず、軍事転用できる施設などを構築している。ベトナムなどの訴えに対し、2016年7月、ハーグの常設仲裁裁判所は、中国が南シナ海のほぼ全域で領有権を主張し独自に設定した境界線(いわゆる「九段線」)には、国際法上「歴史的権利を主張する法的根拠はない」と認定した。しかし中国はこれに応じず、逆に南沙諸島に人工島や滑走路など、軍事使用出来る施設等を増設し、南シナ海及びその周辺海域での軍事活動を強化している。

 中国は、香港の自由は認めない、台湾の国際活動は認めない、国際仲裁裁判には従わない。それで多国間主義や国際協力などと言えるのだろうか。中国至上主義、拡張主義としか映らない。

 


 3、中国が真に国際社会の良き構成員となることを期待

 しかし中国を外部から変えようとしても無理があろう。今日の国際秩序は、領土、領海で区切られた国家群、地域群で構成され、各国家には主権が付与されており、内政への干渉は行わないこととされ、それで秩序が保たれている。

  それを破れば戦争に発展する恐れがあるが、戦争は避けなくてはならない。

 中国が自ら変わることを期待したいが、それまでは各国は、中国の各種の規制・制約、国営企業等への優遇措置、国際協調拒否などに応じ、中国の国外の活動を規制・制限等する権利を留保すると共に、国際場裏の場で粘り強く訴えることが必要であろう。中国が国際社会の良き構成員となることが望ましい。

 また軍事面では、北東アジア地域における軍備拡充競争のこれ以上の激化を抑えるため、軍備縮小交渉と信頼醸成措置の協議を早急に開始することが望ましい。対象国は、中国、南・北朝鮮及び米国、ロシアが中心となろう。

(2021.1.15. All Rights Reserved.)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

アジア地域包括的経済連携(RCEP)、中国への条件付与が不可欠  (再掲)

2021-08-04 | Weblog

アジア地域包括的経済連携(RCEP)、中国への条件付与が不可欠  (再掲)

 2011年11月にASEAN諸国の提唱により協議が始まったアジア地域包括的経済連携(RCEP)は、2019年11月4日、バンコクで開催され首脳会議において、インドを除く15カ国が2020年中の協定署名に向けた手続きを進めることで合意した。
 アジア地域包括的経済連携(RCEP)は、ASEAN10カ国に加え、日本、韓国中国、インドとオーストラリア、ニュージランドの16カ国を対象として関税の自由化、サービス分野における規制緩和や投資障壁の撤廃を目的として協議が行われて来た。しかしインドは、中国の市場アクセスへの懸念につき対応されておらず、自国の農業・酪農、消費部門が影響を受けるとして参加を見送った。インドのモディ首相は、今回のRCEP合意について、関税の違いや貿易赤字、非関税障壁など、「インド国民の利益に照らし合わせ、肯定的な答えは得られなかった」との考えと伝えられている。
 中国、インドを含むRCEPが実現すれば、世界の人口の約半分に当たる34億人、世界のGDPの約3割の20兆ドル、世界の貿易総額の約3割10兆ドルを占めるメガ地域経済圏となる。
インドを除く15カ国は、インドの参加を期待しつつも、2020年中の15カ国での発足を模索しているが、基本的に次の問題が内在しており、慎重な対応が求められる。
 1、「社会主義市場経済」を標榜する中国との差は埋められるか
 中国は「社会主義市場経済」を標榜しており、自由主義市場経済と異なり、基本的に中央統制経済を維持している。従って石油ガス、銀行その他の戦略性や公共性のある多数の基幹産業が政府(国務院)か共産党管理下の「国有企業」であり、補助金を含め政府や党からの実質的な支援を受けている。政府や党が100%株式を所有する中央企業などのように、その下に中央企業が持ち株会社として管理監督する子会社が多数存在する。従って表面上‘株式会社’となっていても国が保有或いは統制している企業体が存在する。
 このように国家や共産党に補助金や直接管理で保護されている企業や産業が存在し、国内産業は保護、規制しつつ、海外市場や海外投資については自由貿易、多国間主義を求めるのは、衡平を著しく失する。このような企業、産業からの輸出については、輸入国側、投資受け入れ国が、輸出国側の補助金等の保護の度合いにより相応の関税を課す事を含め、一定の防護措置をとることを認めるべきであろう。そうでなければフェアーな競争とは言えない。スポーツに例えれば、筋肉増強剤を使用している選手と競争しているようなものだ。
 この観点からすると、米国による中国に対する関税措置や貿易交渉姿勢は‘保護主義’などではなく、公正な要請と言えよう。
 1990年代に入り急速に経済成長した中国は、2001年12月、世界貿易機関(WTO)に加入した。当時のおおよその見方は、13億人の巨大市場である中国貿易が自由化され、世界市場が拡大する一方、中国経済自体も国際経済秩序に組み込まれ、市場経済化を加速させるものと期待された。
その期待の一部は達成されたが、WTOへの加入により最も利益を得たのが中国であり、いわば独り勝ちの状況となっている。
 中国は、WTO加入に際し金融の自由化、諸法制の整備などの是正が求められ、若干の改善は見られている。しかし中国は、体制上『社会主義市場経済』を標榜しそれを堅持しているので、先進工業諸国が採用している‘自由主義経済’や‘市場経済’とは異なり、上記の通り、国営基幹産業を含め、基本的に国家統制経済であり、国家の統制や国家補助、国家管理が強い。また実体上、元の為替レートや株価への統制や管理も行われ得る体制となっている。中国は、米国の通商交渉姿勢について、国際会議や記者会見等において、‘米国は保護主義的であり、自由貿易を支持する’などとしているが、国内で中央統制経済を維持しつつ、世界では自由貿易とは身勝手と言える。ASEAN諸国も、当面は中国経済の恩恵を受けているが、RCEPが発足すると国内産業が圧迫され、不利益の方が際立つ可能性がある。現在、世界貿易機関(WTO)の改革が検討されているが、国家補助を受けている企業や産業が世界市場に参入する場合の条件、外国為替や株式市場への直接的国家介入の節度、技術や特許など知的財産の国際的保護などが課題と言えよう。
 中国は、国民総生産(GDP)において、既に米国に次ぐ世界第2位の経済大国となり、成長率が低下したと言っても年率6~7%の成長を維持し、2019年の世界経済成長率3.2%(OECD予測)の倍以上の成長率が予想されている。しかし中国は、国内で中央統制経済を維持する一方、世界での自由貿易を主張している。第2次世界戦争後の世界経済は、米国の経済力を軸とするものであり、70年代後半以降多極化の動きが見られるものの、基本的には米国経済が牽引力となって来た。しかしこのままでは、『社会主義市場経済』を採用している中国が、相対的に高い成長率を維持し続け、世界第1の経済大国となり、世界経済の中心となる可能性が高い。米国を中心とする国際経済秩序に、異質の経済体制を採る中国が加わり、単純化すれば、中国と米国という2つの経済圏による秩序に変容することになろう。
 トランプ政権はその変化を認識し、経済分野のみならず、‘安全保障と外交政策’上の脅威ともなるとして、目に見える短期的な利益を模索しつつも、中・長期の国際経済秩序を見据えて中国に対応し始めていると言えよう。日本を含め世界は、この流れを見逃してはならない。
 アジア地域の自由貿易地域となろうとしているRCEPを発足させるためには、本来であれば社会主義市場経済という特異な体制をとっている中国に対する参加条件を検討することが不可欠のようだ。中国を国際社会につなぎ止めて置くことは必要だが、WTOの過ちを繰り返してはならない。
 2、インド不参加のRCEPは‘閉ざされた地域グループ’を生む
インドのモディ首相は、RCEP合意について、関税の相違や貿易赤字、非関税障壁などへの対応において「肯定的な答えは得られなかった」とし、合意出来ないとの姿勢である。特に、中国の安価な製品のほか、オーストラリアやニュージランドからの安価な農産品などが国内産業を圧迫することを懸念している。
 中国への懸念は、補助金を含む産業保護という中央統制経済から発生することであるので、体制上の変化が無い限り、インドはRCEPに参加することはないであろう。RCEPがインド抜きで発足すると‘排他的な地域グループ’を生むこととなるので好ましくない。
 他方インドの参加を促すためには、中国の補助金その他の産業保護の状況に応じて関税や投資規制等と設けることを認めることとするか、それとも中国が自由主義市場経済への転換を図るかあろう。それ無くしてRCEPを発足させることは時期尚早と言えよう。(2019/12/23)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする