内外政策評論 TheOpinion on Global & Domestic Issues

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Policy Essayist

過熱する日米同盟論議と基地問題-オバマ大統領訪日の波紋― (その1)

2009-11-08 | Weblog
過熱する日米同盟論議と基地問題-オバマ大統領訪日の波紋― (その1)
 民主党政権が発足して1ヶ月半程過ぎた。補正予算の無駄の凍結や予算編成など国内問題と共に、ゲーツ米国防長官の訪日を受けて外交、安全保障問題の議論も過熱気味になって来ている。特に、日米双方とも両国同盟関係を重視しているものの、民主党政権は沖縄の基地移転問題などで自民党政権とは異なる姿勢を示しているおり、11月13、14日に予定されているオバマ大統領の訪日に向けて日米双方で意見の調整が活発に行われている。
1、新政権に戸惑う米国
 10月20日、ゲーツ国防長官が訪日し、鳩山首相と表敬・懇談した他、岡田外務大臣、北沢防衛大臣とも会談したと会談した。在日米軍再編問題、特に沖縄県宜野湾市内にある米軍普天間飛行場を名護市のキャンプ・シュワブ沿岸部に移設する計画に関しては、ゲーツ長官は、現行案は両国間で長い間様々なオプションを検討した結果であり、「唯一実現可能」として「日米合意に従って米軍再編を着実に実施する必要があり、できるだけ早期に結論を出して欲しい」旨要請した。これに対し、日本側は、この問題に関する「日米合意」の存在を認めつつも、「現行案に関する検証の結果を踏まえて結論を出したい」としつつ、早期の結論は困難との認識を示した。
 岡田外相は、その後10月23日の記者会見において、この問題に時間を掛ければ掛けるほど普天間周辺の危険は継続するとする一方、県外移設は実際上選択肢として考えられないと述べたと伝えられている。その上で、名護市のキャンプ・シュワブ沿岸部への移設か嘉手納基地への統合の2案に絞られて来たとの認識が示された。北沢防衛大臣は、米軍再編の内容については、海兵隊約8千名のグアムへの配転、空中給油機の山口県岩国基地への移転を考慮すると、「県外移設」の意味合いを含んでいるとして、現行案に対し一定の理解を示したと伝えられており、それぞれの立場での意見が示されている。
 民主党は、9月の総選挙に際するマニフェストで「米軍再編や在日米軍基地のあり方等につき見直す」ことを表明しているので、総選挙で「見直し」が国民の一般的な支持を得たことになる。特に沖縄県では、9月の衆院選挙において4つの全ての小選挙区において現行案に批判的な議員(民主2、社民1、国民新1)が当選しているので、「現行案」は県民の支持を得れていないと言える。更に、連立政権の一角を形成している社民党との連立協議の際、具体的な内容には触れられていないものの、この問題の「見直し」で合意しており、連立政権を維持する限り「現行案」はそのままの形では受け入れ困難と見られる。社民党は、県外移設を含む見直しを念頭に置いている。
 他方、米国のゲーツ国防長官としては、11月にオバマ大統領の訪日を控えていることもあり、早期の決着を望むことは当然のことであろう。特に、同長官は、イラクからの米軍の撤収、アフガニスタンへの増派問題への対応のため、ブッシュ前
政権から引き続き国防長官に任命されているので、ブッシュ前政権下での合意の履行を期待するのも無理からぬところがある。
 このような日本の新政権の外交、安全保障問題での姿勢を受けて、米国のオバマ政権や日本研究者、マスコミなどは戸惑っている様子だ。
 米国政府の安全保障・外交関係筋は、従来の日米合意に基づき米軍再編計画が実施されない場合は「深刻な結果を招く」など、米国当局や所謂“日本通”の苛立ちを繁栄して一部マスコミも批判的な論調を掲げている。10月22日付ワシントン・ポスト紙は、“日本、速やかな基地問題の決定を回避 ―ワシントンは、日本の新リーダーによる同盟関係の再定義を懸念―”と題し、米国務省当局の発言を引用しつつ、基地移設問題や東アジア共同体などを念頭に置いて鳩山政権の外交・安全保障姿勢に懸念を示している。その中で同紙は、国務省関係高官が“米国は、日本をアジアの安定的な同盟国として関係を顕著に発展させて来た”が、現在はそうではない。“現在最も困難な問題は、中国ではなく、日本である。”と述べたことを引用している。そしてジョンズ・ホプキンス大学のライシャワー東アジア研究センターのケント・カルダー教授が、“従来米国側が解決案があると言えば、日本側は、あーそうですかと述べ、決着したものであるが、もはやそうではない。これは新たなことである。”とのコメントを引用して記事を締めくくっている。
 ウオール・ストリート・ジャーナル紙も論説で同様の懸念を表明しているが、両紙とも共和党支持の新聞であるので予想される反応と言えるが、米国政府内、及びアジア研究者や言論界で日本の本格的な政権交代に戸惑っている様子が伺える。
(09.11.)  (All Rights Reserved.)

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