
今回のジャンクデレコはファミコン用データレコーダー「HVC-008」です。
データレコーダーを直接ファミコンに繋ぐ訳では無くファミリーベーシックのキーボードに接続端子がある様で
ファミリーベーシックのプログラムは勿論の事、エキサイトバイクなどでコースエディットしたものも保存出来る様です。
このファミコン用のデレコは数が少ないのかファミコン系コレクターのお陰なのか
動くと言うだけで そこそこ値段が付くので自分的には手が出しにくいデレコでした。
今回の物は外装も内容も状態が悪かったためか安くでスルーされていたので、レストアし甲斐がありそうと思い購入してみました。
ぱっと見でも分かる通り、ナショナルのOEMなんですよね。リモートが無いのでベースは普通のテープレコーダーでしょうか。
説明書きは
・電池での起動は出来ない
・電池ボックスのバネにサビがある
・アダプタ接続で一瞬のみ動いたが、その後一切の起動が出来ない
・内部からカラカラと異音がする
と、ガタガタな印象。
アダプターでの動作テストで「一瞬だけ音が出た」と言う事で、違うアダプター刺して壊れた可能性もありそうですが
電源部分のダイオードかレギュレータか何か飛んでるだけなら良いなぁ~と言う淡い期待を込めて到着を待ちます。
●初期状態の確認
到着。
梱包は綺麗ですが、中身は想像通りのボロボロです。
カラカラ鳴っているので取りあえず分解してみると破片が出てきました。
大した欠片では無さそうで、カセットのツメと、カバーの位置合わせか何かだと思うのですが後回し
電池ボックスが、かなり溶けた感じになってます。
どうやら電池の電源がショートしている感じでしょうか?
テスターを当ててみると導通あり....これ、超危険ですよね。
知らずに電池入れっぱなしにしたら運が良くて溶けて焦げる程度だけど...
まぁ既にこれだけ溶けた状態なので、前の使用者は相当焦った事でしょう。
今まで手にしたジャンクの中で一番危険かもしれません。
電池ボックスの電源の配線を見てみると、アダプター端子のスグ近くに繋がっているだけで
特に回路でショートする様な所無さそうだったので、アダプターの差し込みを見てみました。
なるほど、スプリング部分がセンターに接触してしまってジャックの中でショートしてたのね。こりゃダメだorz
これの代わりを探すか、修理するのが先決です。
アダプター端子と電池の2電源で駆動する場合、アダプタープラグの差し込みが電源切替スイッチも兼ねている様で
刺さっている時は問題無さそうですが、抜いてしまうと逆にショートしてしまうと言う....
●各部分の修理とメンテナンス
分解は比較的簡単で、最初は裏ブタのネジを5本外すのみ。
あとは、「ゴム嵌め込みのマイク」と「スピーカー留めネジ1本」と「電池ボックスの端子」を外せば
本体がゴッソリ外れる感じです。
電池ボックスの端子は黒い接着剤みたいな物で留まっているので削ぎ落してから端子を外しました。
何とかならないかとアダプタージャックを分解してみましたが修理出来そうにありません。
代替品を少し探してみましたが、店頭では差し込みの周りの部分が小さいものしか見つかりませんでした。
足周りも少し違うので加工して取付。それなりに収まりました。
あっれれぇ~?加工写真が残ってないよ~?orz
電源端子とケースの間に若干隙間が出来ています。
ついでに電解コンデンサも交換しました。
最初、基盤に何も書いてなくてプラスマイナスが分からなくなって焦りました...
写真を見返すとマイナス側が全て電源ジャック側の様です。
メインの平ベルトは付いていたのを計ってみるとφ80×0.95×2ぐらいですが幅広の物しか売っていません。
千石さんの平ベルトは基本5ミリ幅なんですよね。
と言う事は真っ二つに縦割りすれば2本取れるのかすら?
はい、以前ゴムバンドベルトを作る時に考えた「両面テープ固定戦法」で真っ二つになりました。
最初の張り合わせの時に歪まない様にするのだけ要注意です。
しかし、ちょっとズレたの細い所が出来てしまったかも...
そして実際に付けていみると、凄くダルダルなんですが...w
どうやら元のベルトがそれなりに伸びていた様なのでφ70~75で同じ様に作った方が良さそうです。
適当なベルトに替えて先に再生速度だけ見ておきましょう。
意外とと言うか流石ナショナルと言うか、簡素な割に再生速度は3kHz付近にあります。
しかし、普通より遅めな雰囲気。
●ケース部分のレストア
電池で使うつもりはありませんが、電池ボックスがショートで溶けた感じになっているのを修正してみましょう。
あまり大がかりな修正はした事なかったのでどうするか考えた結果
肉厚が必要そうなので、エポキシパテと言うのを初めて使ってみました。
無難にタミヤ製、プラモデル用ですが普通にどこにでも使えるっぽい?
もりもり盛って、それっぽく削ります。原型を見た事ないので、何となくイメージでw
モデラーさんなら完璧に造形出来そうですが、今の自分にはこれが精一杯。
ベースが白いので濃いめの赤色を最初に塗って、その上にアズキ色を塗りました。
塗った時は明るく感じたんだけど、乾くと結構アズキ色なんですね...
形成したものの、最初はスプリング端子が綺麗に付かず、結構苦労しました。
見た目はイマイチですが、何とか電池も収まりそうな感じで完成♪
●動作テスト
再生速度が結構良さそうだったので、いきなりゼビウス。
しかしPCG定義のチェックサムを通過せずorz
再生してテープの動きを見てみると、ピンチローラーが悪いのか巻き取りが弱いのか安定していない感じ。
60分テープの場合インフォメーションブロックも読まない感じです。巻き取りが重い感じでしょうか?
イナブキさんのBattleBattleならロード可能です。
ばってんタヌキの大冒険もチェックサムをスルーしてしまいました。
波打った様な感じに聞こえるので波形を見てみるとこんな感じに。
取りあえず駆動系を調べてみましょう。
ピンチローラーと巻き取り軸を確認してみると、ピンチローラーは若干の硬化はあるもののヘタリ等は無く掃除すれば問題無さそう。
しかし、どうも巻き取り軸を回すゴムリングのグリップが弱そうな感じ。
X1Cはギアでしたが、縦型のマニアタイプはゴムリングで巻き取り軸を回していましたね。
長めのテープだと、この辺りのグリップが弱いと巻取りが安定しない様です。
このナショナルのカセットデッキのリングは、かなり大きいのでパッキンは使え無さそう。
自作するなら3mmのゴムをカットするぐらいしか今の所思いつきません。
さらにカラ回しで内部を上から見てみると、○の白い部分が大きく揺れています。
どうやら巻き取り軸に動力を伝えているパーツの様で、バネで押さえているだけなんですね。
これがピョコピョコ動いて安定しないのかな?と思って、このバネを少し曲げて強化してみました。
合わせて、ピンチローラーと送りゴムも少し掃除してグリップ力を上げます。
もう一度再生してテスト。しかし、グリップ力が上がったせいか再生速度が急激に低下orz
このデッキのモーターに速度調整は無いので微調整に困ります。
フライホイールとキャプスタンとベルトを再清掃してみました。
おーし、かなり安定してテープが走る様になりました。
再生速度はさほど変わらないものの、バネの強化とゴムリングの清掃によるグリップ力UPにより
テープの巻き取りがとても安定しています。
これでロードテストだ。
う~し。ゼビウス起動。
しかし、7分近い「ばってんタヌキの大冒険」は何度やっても最後のチェックサムをスルーしてしまいます。
一旦途中でプログラムの区切りがある場合は良いですが
1回で長いロードが必要な場合、後半になるほどズレが生じてエラーすら出ない感じでしょうか?
ん~このデータレコーダーの限界なのかもしれませんね。
●無理やり速度調整をしてみる
しかし、ここで諦めてしまうのもシャクなんで、妙案を思いつきました。
再生速度が電気的に調整出来ないなら、物理的に調整すればいい!!
モーターとフライホイールの回転数に差がある訳で、どちらかの径を変えてやれば
自然と再生速度も変化するはずです。
フライホイール側は金属の様な感じで削るのは大変そうなので
回転速度が若干遅いと言う事で、モーター側の径を大きくしてみましょう。
速度を上げるには、少ない回転で多くベルトを送れる様になれば良い訳です。
どの程度効果があるのか全く想像つかないので、まずは実験。
取りあえず、テスト前の速度は3kHzのテープに対して2954Hz辺りをウロウロしています。
仮にテープを少し巻いて調整してみると3023~3000Hzをウロウロする感じになりました。
ばってんタヌキの大冒険でテストです。色々調整して音量も弄りながらテストしてみると途中のチェックサムを通過した!
しかし、最後のチェックサムをスルーorz
途中のプログラムが走ると停止した時に文字の色が変わるのがポイント。
ぐぞ~、せめて最後のチェックサムで巻き戻してくれたら良いのにぃ><
こりゃダメかもしんないorz
本来はチェックサムにかかると自動で巻き戻してくれるのですが、
今回はチェックサムすらスルーされるので信号を判別出来ていない可能性が高いです。
もともとシビアなソフトだけに、このデレコの精度ではコレが限界なのかもしれません。
回転速度の調整機構が無いものは、回転速度が狂いにくいと言うメリットがある一方
一度狂ってしまうと調整出来ないと言う欠点があります
(どこかの抵抗を交換すれば速度が変わるかもしれませんが、素人には分かりません。)
そこで次の手です。
「テープで安定しないならパテ盛りしてみよう!」
ブンブン回ってるモーターの軸にサンドペーパーを当てるだけで、簡単に綺麗な弧を描けます。
さらに速度が合うように削って完成♪
時間が遅くなってきたのでスピーカー部分を塞いでロードテスト
このデレコ最大の欠点は
内蔵スピーカーのオンオフ切替が無い!!
しかもロードレベルと連動して内蔵スピーカーの音量も大きくなるので始末が悪い。
夜中にテスト出来ないので整備が休日に限られて、なかなか触る機会が無いと言う。
まぁ、これはこんな物と割り切ろう。機能的にも、ほぼ見た目だけのデレコだと。
最後のチェックサムで蹴られましたが、チェックサムにかかるのは速度良好な証拠。
何度かボリュームを調整してやっとロード成功
タララタッタッタン♪
「ちまちま は、速度調整(中級)を覚えた」
最後に修理した電池駆動のテストをしてミッションコンプリーーートッ!!
●まとめ
今回は初期状態が結構ヒドかったので、それなりに苦労しました。
その分、起動した時の嬉しさも大きいのがジャンカーがジャンク品を求めるポイントでもありそうです。
○電源の端子
電池とアダプターの2電源方式ですが、アダプターの差し込み金具が壊れてショートしていました。
この状態で電池駆動しようとすると電池もショート状態になり非常に危険でした。
アダプター端子を付け変えて補修。
それに関連して電池ケースの溶解。
電池のショートにより端子部分が発熱し、プラスチック部分が溶けてしまっていました。
パテ盛りして色を塗って補修。
○巻取り不良
ゴムリングの劣化か、バネの劣化から押さえ付けが弱く、速度が安定しませんでした。
内部まで清掃し、バネを少し曲げて押さえを強くして補修。
○音量不良
籠った様な音になるソフトがあり、アジマスの調整で最も音が大きくなる位置へ調整。
○速度不良
速度調整が出来ず、長時間ロードでズレが生じていたのでしょうか。
モーター側のプーリーにパテ盛りをして物理的に再生速度を微調整。
2700ボーのX1で使うとかでなければ、ここまで細かく調整する必要は無いのかもしれません。
全体的にナショナルRQシリーズに比べてかなり簡素な作りで、コストダウンの為に色々な機能を削っている感があります。
そもそも、ファミリーベーシックに長時間ロードするほど容量が無い訳で、そこまでの精度が必要無かったと言う事かもしれませんね。
あとは、音声モニター廻りも貧弱で、ロード用の端子に刺さったスピーカー(ヘッドホンやカセットアダプター)によって
同じボリューム位置でも内蔵モニターの音量が変わってしまうと言う事で、インピーダンスがどうのこうのありそうです。(←良く分かってないw)
何はともあれ、このデータレコーダーを選ぶ最大の理由は
「ファミコン(任天堂)純正だから!!」と言う事。
レトロには見た目を楽しむ側面もあるので、こだわりの貴方には至高の逸品に違いないと思います。
折角なので、データレコーダーの機種にも拘って、レトロを楽しんでみては如何でしょうか?
以上、ファミコン用データレコーダー「HVC-008」の修理でした。
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