tokyo_mirage

東京在住・在勤、40代、男。
孤独に慣れ、馴れ、熟れながらも、まあまあ人生を楽しむの記。

新聞販売店のおじさんの時間

2013-03-27 23:55:08 | 今日の出来事
家の行き帰りに新聞配達所の前を通る。

新聞販売店にありがちの、
(…と僕は思うのだが、「新聞販売店」と聞いて誰しもが共有できる佇まいのイメージというものが
あるのかどうかは定かではない)、
道路に面した側が全面ガラスサッシ戸でできている、半分民家のような建物だ。
ガラス戸だから中の様子はよく見える。
土間状の床に、チラシを折り込む機械や使い込まれた木製の棚が置かれ、
その奥に従業員の休憩の間につながるのであろう小上がりなんかが見える。
夜に通りかかれば、中は煌々と蛍光灯が照っていて、明るいからなんとなく目が向く。

すると、かなりの確率で、おじさんが土間にいるのが見える。
何をするでもなく、ひとりでただそこに「いる」のだ。
立っていたり、高めの台に腰掛けていたり。
考え事をしていそうなわけでもなく、かと言って、作業をしているわけでもない。
本当にただ「いる」としか形容できない。
おじさんはそこでいつも何をしているんだろうと思う。

別におじさん自体にシンパシーは湧かない。
僕はそこで新聞を取っているので、そのおじさんとも話をしたことはあるが、
「愛想はいいけれど、人の話はよく聞いていない」というタイプの人で、
旅行で家を空ける時に取り置きを頼んでも、
「はい、はい、わかりましたー。気をつけて行ってらっしゃいませー」と調子はいいけれど、
取り置きの期間を間違えたり、「広告も」とお願いしておいたのに入れ忘れたり、
土曜の別刷り版を入れ忘れたり、ともかく、信頼が置けるとはいいがたい。

店舗の雰囲気にもシンパシーは湧かない。
取り置きの新聞を取りに訪ねると、サッシを開けた途端、
冬は暖房が強力に効いていて暖かく、夏は冷房が強力に効いていて涼しく、ほっとするが、
一方で、タバコのような、他人の家の室内のような、所帯めいた臭いがして、居心地の悪さをおぼえる。

ただ、おじさんの「時間の過ごし方」には興味があるのだ。

何か用事がありそうなわけでもないのに、奥に引っ込むでもなく、仕事場にいる。
疲れて座り込んでいるわけでもないので、そこにいるのはあくまで彼の「意思」によるものだとわかる。
でも、具体的に何かをしているわけではない…

僕はせっかちな人間だ。
非・合理的な、非・合目的的なことに極力時間を取られたくないと思っている。

そういう僕からすると、おじさんの「何もしていないけど、でも、それはそれで満ち足りていそう」な
あの場所でのあの時間の過ごし方はなんだろうな…?と不思議に思うのだ。

おじさんが過ごしているのは、ひょっとして「無」の時間なんだろうか…?

そんなことを思ったりする。

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