広いベッド、爽やかなシーツ、抜群の威力の遮光カーテンのおかげで、朝は寝坊してしまった。
9:06 同行者が身支度を整えている間、ホテルの中庭をぶらぶらと。建物がリング状をしている。
【国際会館駅前―(バス)→大原】
10:17 大原のバス停から歩き出す。しそ畑。「大原は日本一のしその里」と。
10:26 漬物店などが立ち並ぶ参道を抜け、三千院へ。
客殿から聚碧園を望む。江戸時代の茶人・金森宗和の修築と伝えられる池泉観賞式庭園。賑やかな緑だ。
つくばいが植物で装飾されて見事な作品に仕上がっている。
杉木立の下に苔が広がる有清園と、その向こうの往生極楽院。僕が中学校の修学旅行の際に買った(そしていまだに持っている)京都・奈良のガイドブックの表紙写真も、この眺めだった。この寺は、最澄が比叡山延暦寺を建立する際、この地に草庵を結んだのに始まるという。
苔の広がりが本当に美しい。数歩歩いては立ち止まる。
少し山を登ると、斜面にはアジサイが。登りきったところの庵でお茶がふるまわれていた。ピンク色の湯に金箔が浮かんでいる。しそが入っているのだろうか、スープのようで美味しかった。
名は分からぬが、小さな粒々が和の寺の雰囲気に似合うピンクの花が。
またしてもつくばいが様々な植物に装飾されて見事な作品に仕上がっている。
それもこれも、とめどなく流れる豊かな水が作り出すのだ。せせらぎ。
見上げれば新緑が綺麗。
山をめぐって再び往生極楽院前の苔の林へ。あらためて、自然と足が止まる。
三千院の門前のそば屋の座敷で昼食をとり、大原バス停を越えて、
12:22 寂光院へ。新緑のトンネルの石段に迎えられる。
聖徳太子の創建とされる尼寺。柱のスイッチを押すと流れる案内アナウンスの女性の声が妙に渋いと思ったら、このお寺の尼さんの語りなのだった。本堂は2000年5月、放火による火災に遭い、中にあった六万体地蔵菩薩像が損傷、庭先の樹齢千年の松も枯れてしまった。「六万体」の名の通り、菩薩像の中には小さなお地蔵様が無数に納められていたが、焼失を逃れた黒く煤けたお地蔵様は桐箱に詰められ、宝物殿で展示されていた。
こちらのお寺も水は豊か。鯉も気持ちよさそうだ。
大原の里を歩いてバス停へ戻る。正面はしそ畑。あの「ベニシアさん」も、この里のどこかにお住まいなんでしょうね。
【大原―(バス)→宝ヶ池】
宝ヶ池駅。ここから叡山電鉄に乗る。なかなか可愛い電車だ。
【宝ヶ池―(叡山電鉄)→鞍馬】
14:23 鞍馬寺。ここは、「宇宙の大霊であり大光明、大活動体」だという「尊天」から、「毎日を明るく正しく元気よく積極的に生きぬくための活力をいただくための道場」なのだと、パンフレットの説明文は熱い。山からのパワーをいただくとしよう。この山を歩いて越えて貴船に下りる予定。今日の行程のハイライトだ。
新緑の緑と、灯篭の赤のコントラストが美しい。
休み休み、山を登る。この時季、汗は「にじみ出る」程度で、夏ほどに「吹き出る」わけじゃないのがありがたい。「宗教法人が運営するケーブルカー」、そして「日本一距離が短い鉄道路線(200m)」として知られるケーブルカーは、改修工事のため来年まで運休している。
14:48 清少納言が『枕草子』で「近うて遠きもの」と記しているという(でもそんなに遠くはなかったぞ。清少納言は歩き無精の人だったのかな)「九十九折参道」を経て、金堂へ。
さらに奥ノ院へ。
「冬柏亭」。与謝野晶子の東京・荻窪の家にあった書斎。晶子の50歳のお祝いに弟子たちがプレゼントしたのだとか。その後、門下生の大阪のお宅、そしてここへと移築されたのだという。
15:29 貴船神社へ下山。こちらも新緑と赤い灯篭のコントラストが美しい。着物姿の女子がいる。縁結びの神に、女子同士、着物に着替えてお参りか。みんなよく似合っている。「1日着物レンタル」などもあるためか、京都の町中でも着物姿の女子をよく見かけた。町の賑わいに花が添えられていて素敵だ。京都市がレンタル料に補助金を出してもいいくらいじゃないかと思う。
水を司る神が祀られている神社ならではの「水占い」。白紙を水に浮かべると、字が滲み出てくる。2人とも「小吉」でした。小さな吉を大事に育てます。「きふね」には「氣生根」の字もあてられ、「万物のエネルギーである『氣』が生ずる根源の地」という意味があるそうだ。地名は「きぶね」と濁るが、神社名は、水の神様だけに、濁らず「きふね」と読む。
本宮から奥宮へ、川沿いの川床の店を覗きながら、緩やかな坂道を登る。
15:52 新緑の中に佇む奥宮。この神社は若い参拝客が多いようだ。流行りのパワースポットとしてもてはやされているのかな。
16:13 本宮へと折り返す道すがら、「貴船倶楽部」で抹茶パフェを堪能。店内はジャズが流れ、のんびり寛げた。
【貴船―(バス)→貴船口駅―(叡山電鉄)→宝ヶ池】
貴船口から乗った叡山電鉄は、天井までの大きな窓がある展望車両「きらら」だった。
17:28 宝ヶ池で下車。ちょうどホームに上下線の「きらら」が並んだ。
【宝ヶ池―(バス)→四条河原町】
18:06 昨日と同じく、今日も夕方は鴨川に来た。四条大橋を渡る。
同行者が「玉ねぎまるごと」の漬物を買った「西利」などを覗きながら四条通を歩くと、祇園に出た。あまりにも有名な祇園だが、僕は初めて来たかも知れない。人通りの多い道だが、時折プリウスのタクシーが音もなく通り過ぎる。
味わいのある路地。ここに、同行者がチェックしていたカフェがあったのだが、店名の小さな表札がかかるだけの素っ気ない入口に(それを見つけるのにも行ったり来たり探した)恐れをなして、扉を開ける勇気は出なかった。
建仁寺のお堂の上の空に、夕暮れのうろこ雲が広がる。
建仁寺の塔頭の塀に沿って歩く。祇園の賑わいは徐々に消えていく。
周辺の景観に配慮しているのだろう、なかなか凝ったデザインのマンションが。
19:00 法観寺の五重塔(八坂塔)に向かって、緩やかな坂道の路地を登る。
ひと気もなく、静かな夕暮れの街並みを堪能する。八坂道。
門の上に這わせた松がなんとも見事。
19:08 こちらもひと気がなく、黄昏に沈む景色がなんとも美しい。二年坂。あてどなく歩いて、こんなに素敵な光景に出会えるとは思わなかった。
奥にある店へと続く石畳の通路。水が打たれていて美しい。
八坂神社境内を通って、祇園交差点へ。再び喧騒の中へ。
四条通を四条大橋へ。橋の袂にある、いかにも老舗めいた佇まいの中華料理店「東華菜館」の納涼床で、前菜盛り合わせ/カニ入りフカヒレスープ/揚げ物/海鮮炒め/エビ炒め/鶏肉炒め/水餃子/餡入り揚げ餅/杏仁豆腐のコース料理を。2日連続の川床は恐れ多い気がしていたが、今日も贅沢をしてしまった。
20:48 食後に、橋の上から食べた場所をパチリ。
(後で知ったが、この店のビルには「日本最古のエレベーター」があるらしい。乗ってみればよかった)
【四条河原町―(バス)→四条駅―(地下鉄)→国際会館】