情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)日隅一雄

知らなきゃ判断できないじゃないか! ということで、情報流通を促進するために何ができるか考えていきましょう

裁判官の独立に対する侵害か?!

2005-09-07 06:17:00 | 適正手続(裁判員・可視化など)
裁判所は、民主主義という多数決原理だけでは、社会的弱者、少数者の人権が侵害されることになるため、そのようなことにならないように、法によって、公平公正な判断を行う機関である。したがって、国民の声に必ずしも従うべきではない。例えば、国民の多数が少数者を差別することを許容したとしても、その声に耳を傾けてはならない。もちろん、時の政府の意向に従ったりしてはならない。この裁判官の独立性を守るために、裁判官の給与は、憲法によって減額できないとされている。しかし、このたび、国家公務員の給与について全国共通の水準を平均4.8%引き下げた上で、大都市など民間賃金が高い地域には最大18%の「地域手当」を支給する内容の人事院勧告が出され、裁判官が除外されていないというのだ。http://news.goo.ne.jp/news/asahi/shakai/20050831/K2005083004430.html?C=S小選挙区制のもと、内閣総理大臣(行政)に権力が集中している現状で、人権の砦である裁判所に対して、このような「圧力」が加えられるのは本当に問題だ。都会の給与が高ければ、都会での勤務を望み、国を相手にした裁判などで、判断に微妙な心理が働くかも知れない。

 この人事院の勧告に対し、最高裁は30日の裁判官会議で勧告を裁判官に適用するかどうか検討を始めた。【現場の裁判官からは「地方と都市で仕事の内容に違いはない」「司法サービスに悪影響が出る」との疑問が相次いだ】という。
 【勧告の適用には(1)憲法に抵触するおそれがある(2)地域格差を認めれば、いま以上に報酬の上がり具合が細分化され、裁判官の独立に影響がある(3)裁判官の都会勤務志望に拍車をかけ、全国一律の司法サービス提供に悪影響がある】からだ。
 なお、勧告の適用については、国家公務員の月給引き下げを初めて求めた02年に問題になり、「他の公務員と同時に全裁判官の報酬を一律に減らすなら問題ない」として、裁判官会議は2%減額を受け入れている。

 今回の裁判官の主張が国民にどのように受け止められるだどうか。わがままだと思われるのだろうか。特権意識は古いなどと言われるのだろうか。自由、人権を守るための特権であれば、それは必要な負担ではないだろうか。そのような社会的負担を惜しむことで将来に禍根を残すことがないようにしたいところだが…。