情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)日隅一雄

知らなきゃ判断できないじゃないか! ということで、情報流通を促進するために何ができるか考えていきましょう

「暴行」刑務官の証言で遮蔽板を設置決定、代理人は忌避申立~一方、外国人のプライバシーは丸裸…

2007-11-20 21:29:22 | 適正手続(裁判員・可視化など)
 外国人入国者に対する指紋採取と顔写真撮影が始まった11月20日(※1)、東京地方裁判所では、公務員たる刑務官が自らの受刑者に対する暴行について証言する際に、刑務官が傍聴席から見られないようにするための遮蔽板を設置するとの決定が下された。市民の情報・プライバシーは丸裸にしておいて、権力側の情報・プライバシーは徹底的に守ろうとする姿勢…。納得できない原告代理人は裁判官を忌避した。

 忌避申立がされたのは、宮城刑務所の受刑者が刑務官に暴行を振るわれたなどとして国家賠償請求を申したてていた事件でのこと。この暴行が行われた2005年は、受刑者処遇法が施行される直前の時期で、宮城刑務所では刑務官による暴行事件が相次いで明るみにでていた。暴行を振るわれた受刑者らは、同年12月20日、国に対し損害賠償を求める訴えを提訴していた。

 この裁判で、いよいよ、最も重要な刑務官への尋問が、11月20日午前10時半~午後4時半まで、東京地裁627号法廷で行われる予定だった。

 ところが、国側は、ある受刑者から家族にこの証人尋問を見に行くよう依頼があったという情報があったため、証言する刑務官が報復される可能性があると主張し、防弾ガラスの設置に加え、遮蔽板を設置して傍聴人から証人が見えないようにするよう求めたのだ。

 これまでに民事訴訟で遮蔽措置が認められたのは、HIVの事件や聖神中央教会婦女暴行事件(いわゆる聖職者が婦女暴行事件を起こした事件)による損害賠償事件くらいしかないが、それらについては、遮蔽が認められても仕方ないと思う。暴行を振るったとされる刑務官の場合とはまったくレベルが違う。

 しかし、裁判所は、国側の要望を易々と受け入れ、法廷には防弾ガラスに加え、遮蔽版が設置された。

 そもそも、刑事裁判でさえ、傍聴人との間の遮蔽措置は、「犯罪の性質、証人の年齢、心身の状態、名誉に対する影響その他の事情を考慮し、相当と認めるとき」に限って、認められているに過ぎない。

 今回は、刑事裁判ではなく、民事裁判だが、①対象となっているのは証言する刑務官自身の暴行、②証人は刑務官という立派な成人公務員、③心身の状態は刑務官を務めるくらいだからしっかりしている、④名誉については考慮する必要なし、という状況である。まったく、遮蔽の必要性はないといえよう。

 なぜ、自ら暴行を振るったとされる刑務官が遮蔽措置がないと証言できないというのか。そして、民事訴訟法上規定もないのに、易々とそのような要望を聞き入れる裁判所は、公正な裁判のあり方についてどのように考えているのか…。

 この日、原告側代理人は、事前に、遮蔽措置を受け入れることはできないという判断をし、裁判所の不当な措置について、胸を打つような意見を述べた。

 まず、傍聴に来た人の中には証人に報復するような暴力団関係者はいないことを確認している旨明らかにしたうえ、国家賠償請求事件が公権力行使の適法性を確保するためのものであり、市民の見守る中で刑務官の証人尋問を行うことの必要性を熱く主張した。

 そして、このような国家賠償請求事件で一度証人の遮蔽措置を認めたら、その後の裁判で悪しき先例となり、市民の監視のもとで公権力行使の適法性を確保することができなくなってしまうことに懸念を表明した。

 そのうえで、暴力団関係者からの報復を防ぐために傍聴人の所持品検査と防弾ガラスの設置という条件を受け入れたのだから、遮蔽措置だけはしないよう再度、裁判所に求めた。

 しかし、裁判所は決定を覆すことはなかった。

 そのため、原告側代理人が裁判官の忌避を申し立て、予定されていた証人尋問は中止となった。

 ある傍聴人は、一連の経過を目の当たりにし、「証人の刑務官は,報復を受けなければならないようなひどい職務行為を行ったのだろうか。今後の裁判の行方を注意深く見守りたい」と感想を述べていた。

 冒頭で述べたとおり、奇しくもこの日、入国する外国人のプライバシーを侵害する措置が開始された。

「官天国ニッポンへようこそ。あなたの指紋は採取済みなので、いつでも罠にかけることができますので、日本滞在中、えん罪をかけられるスリルをお楽しみあれ。そうそう、あなたの国と違って日本では取調に弁護士は立ち会えないし、取調の全過程を録画することもありませんので、あしからずご了承下さい。あなたが警察官に暴行を振るわれたと訴えても、警察官は裁判所が守ってくれますので、くれぐれも無駄な抵抗はしないように」


※1:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2007112002065846.html

【なお、冒頭の図は、刑事事件の場合のもの】




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徳島刑務所で大弾圧が起きているのではないか?~CPRからの連絡に回答なしとの情報あり

2007-11-20 00:46:42 | 適正手続(裁判員・可視化など)
 肛門陵虐が発覚したうえ、暴動まで発生した徳島刑務所について、一部関係者からは、SOSを発信した受刑者に対し、大弾圧が加えられているのではないかという声が上がっている。確かに、監獄人権センター(CPR。※1)が暴行を受けているらしい受刑者に対し、連絡を取ろうとしているが、一切とれていないらしい。一体、何が起きているのか?ここでこそ、メディアの奮起を期待したい。

 統一獄中者組合(United Prisoners Union)のウェブサイト(※2)では、次のようなニュースを掲載している。

【11月16日(金)午前9時25分ころ、徳島刑務所の木工場で小規模ながら受刑者の暴動があったことを、報道各社が17日~18日にかけて報道した。受刑者が何を理由に何をしたのか、詳しいことは分かっていないが、騒動に関与した受刑者は10人を超えると見られている。
 徳島刑務所では、医務課長の松岡裕人医師が患者の肛門に指を突っ込んで裂傷を負わせたり、10日間絶食の指示を乱発したり、体中をつねったり、気に入らない受刑者の診療を拒否したりと、異様は行為を繰り返しており、受刑者から抗議の声が上がっていた。
 今回の暴動がこれと関連するのか否かは未だ不明である。仮に関連があるとすれば、今回の小暴動は、さらに深刻な事態に発展する可能性がある。なぜなら、徳島刑務所と法務省矯正局は『週刊現代』(11/5日発売)やテレビ朝日(11/13放送)の報道があった後でも、「違法・不当な行為はない。適切な治療がなされている。本人の同意があった。」などと、松岡医務課長を擁護する姿勢を崩しておらず、「受刑者本人の同意」と強弁するためには受刑者への「口封じ」の圧力を強めざるをえないからである。
 刑務所幹部が責任逃れのために医務課長の行為を擁護しても、受刑者と日常接している現場の刑務官が受刑者にウソをつき通すことには無理がある。そんなことをすれば、受刑者の軽蔑と反感を買い、受刑者を抑えることなどできなくなるであろう。受刑者を法務省は小細工を弄さず、事態を直視し、暴動の根源を取り除く決断をすべきである。さもないと、収拾がつかない事態に立ち至るであろう。】

 非常に深刻な事態が進行している可能性が大きい。

 そもそも、受刑者を更生させるには、何が効果的だろうか?それは、刑務所で人として尊重し、社会復帰後も人として受け入れられるような教育をすることである。

 日本のようにちょっとしたことで厳しい懲罰を科すことで、受刑者を教育するといいつつ、実は安易なに刑務所内の平穏を保とうとする方法では、受刑者は皆、人間としての感情を失い、社会に出ても犯罪を犯すことを躊躇しなくなる。人としての尊厳を尊重して処遇することによってこそ、社会復帰後、社会で普通の生活を送ることができるはずだ。

 徳島刑務所での事件は、そのような発送の対局にある考え方に基づく処遇が行われているからこそ、生じたといえる。

 このままでは、徳島刑務所受刑者1100人は、犯罪マシーンとして世に復帰することになるのではないだろうか。

 受刑者本人のためのみならず、社会のためにも、徳島刑務所の事件を徹底的に取材してほしい!


※1:http://www.jca.apc.org/cpr/

※2:http://www.kangoku.org/


【関連記事】
1:徳島刑務所「変態医師」恐怖の“●●虐待”自殺した受刑者も~西岡研介@週刊現代 http://blog.goo.ne.jp/tokyodo-2005/e/83e3013e27ad716a2c8891b6ba9cc79d
2:徳島刑務所暴動を伝える記事に陵虐事件のことが書かれていないのはなぜ?~告発パート2の画像付 http://blog.goo.ne.jp/tokyodo-2005/e/c3287cc0f1a6cebcb913ec689f317707








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