情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)日隅一雄

知らなきゃ判断できないじゃないか! ということで、情報流通を促進するために何ができるか考えていきましょう

おいらが新聞記者を辞めた理由~情報の適切な提供ができていない…小沢問題を機に振り返る

2010-01-31 10:07:40 | メディア(知るための手段のあり方)
 おいらは、そりゃ、警察ネタをバンバン取ってくるような記者じゃぁなかったさ。でも、行政ネタ(問題点の指摘)は、それなりに面白い話をとってきたような気がする。まぁ、自分のことなんて美化しないと生きちゃいけないから、話は半分にして聞いておいてくれ。で、今日のテーマは、おいらが、なんで新聞記者を辞めたかってこと。当時から匿名報道を主張し、コラム欄にもその旨書いていたおいらにとって、プライバシー侵害などの書かれる側の不利益と情報を伝える利益とをどう折り合わせるか、ってのが大きなテーマだった。

 もちろん、そんなこと言っていてもいざ、事件が発生すれば、違法すれすれ、あるいは違法な行為をして情報をとってくることもまれではなかった。だが、そのこと自体は、苦痛ではなかった。取材と報道は別だからだ。

 問題は、報道のされ方だった。特ダネは大きく、騒がれている話題は大きく、写真があれば大きく、そして、抜かれた記事は小さく…。

 ある情報には、伝えるべき適正な量、適正な方法がある。もちろん、特ダネを大きくするのはまぁ、ある程度仕方がないし、記者にしてみれば気持のいいものだが、それにしても、ほどがあるし、騒がれている話題を記事にするときに、普段ならどうでもよいネタを大きく取扱い、他社と競り合うことなんかは、ちょっと、耐え難かった。

 一番分かりやすいのは、前にも書いたかもしれないが、大阪空港で、飛行機が着陸時、尻餅事故を起こした際のことだ。飛行機には、おしりの部分にプラスチックだか、ゴムだかでできた部品があって、ここで尻餅したか、どうかがチェックできるようになっている(今もそうかは知らない)。

 逆に言うと、この部分は余裕を持たせている部分であって、そこが尻餅事故によって削られても本体に傷がつくわけではない。正確には、尻餅直前の事故といえる。

 ところが、各紙は社会部から多くの記者を送り込み、夕刊トップでこの情報を伝えた。私もその取材現場に遅れて参加。すでに、記事の割り振りが決まっていたので、直接、執筆することはなかったが、上記のようなことを取材した。

 これがトップかなぁ…という疑問を持っていた翌日、たしか翌日だったと思うが、この飛行機のパイロットが自殺をしたというニュースが入ってきた。

 もちろん、辞めたのはそれだけが原因ではない。

 独自ダネというだけで、たいしたネタでもない記事を書かされて大きく取り扱われたり、逆に他社の特ダネについては、無視できるものは無視し、後追いするにも、別の社が報道したことには触れない。

 広告主との関係でも、自動車が高速道路でエンジンから火を吹いて止まってもニュースにはしない、電力会社から引き込まれている電線が軒先で発火しボヤになってもニュースにはしない。

 もちろん、おいらが辞めた理由は、この問題だけじゃぁないが、記事の扱い、情報の出し方に対する疑問が大きな理由の一つだったことは間違いない。

 いかにも、中立に記事を報道するかのように書きながら、実は、情報を恣意的に選択し、伝えるべき情報が消し去られ、他方で過剰な報道がなされる。これによって世論が巻き起こり、その世論を背景にますます、恣意的な報道がなされる。

 報道の自由は、そういう恣意的な情報提供のためにあるんじゃぁない。せめて、欧米のように、執筆者を明らかにし、また、抜かれたら、抜いた新聞の名前くらい書いたらどうか…。

 退社してもう20年近く経った。いま、各紙ともに、小沢問題で、記事を書き続けている。もちろん、最終的に小沢が収賄しているなら、それはそれで大きく伝えるべきだろう。

 しかし、いま、伝えられている情報のうち、確定的な部分について、そんなに大きく取り上げることではないこともはっきりしていると思う。

 たとえば、小沢が4億円を貸し付けた件について、産経新聞阿比留記者は、2007/09/16の11:45、自らのブログ(http://abirur.iza.ne.jp/blog/entry/301387/)に、平成18年分の政治資金収支報告書公開関連の情報として、

【小沢氏の資金管理団体「陸山会」の繰越金は、6135万円で、前年より大幅に減りました。理由は、陸山会が小沢氏への借入金を2億2800万円ほど返したためとみられます。小沢氏は平成16年10月になぜだか陸山会に4億円を貸し付けており、18年中には約237万円の利子を受け取っています。陸山会は、都内の一等地などに10億2000万円相当の不動産(名義は小沢氏)を所有しており、どうして小沢氏からそんな巨額の借金をする必要があったのかはよく分かりません。4億円もの大金を貸せる政治家というのも驚きですが。
 それで、この陸山会は小沢氏の政治団体である小沢一郎東京後援会など3団体に所有不動産を賃貸しており、年間444万円の家賃収入を得ています。その上で、18年中には小沢一郎政経研究会から5000万円、小沢一郎東京後援会から1000万円の寄付を受けていました。これも小沢氏に借金を返すためだったのでしょうか。民主党岩手県第4区総支部からも5000万円の寄付を受けているのですが、それでは足りなかったということでしょう。世田谷区に3億6500万円相当の「秘書の寮」など建てるからですね。】

などと書いている。

 そう、小沢が4億円を政治団体に貸し付けて寮を建てたことは、2007年9月時点で平成18年分の政治資金収支報告書から読み取っていたわけだ。もちろん、各社ともに、このブログに記載された情報は得ているだろう。

 それをいまになって、各社ともに別件逮捕を許すためかのように、さも、疑惑だなどと大きく報道する。

 まさに、情報操作と批判されても仕方がない状況だ。

 民主党は、企業・政治献金の廃止、取り調べの可視化、天下りの防止、特別会計の見直し、マスコミのクロスオーナ-シップの解体など、これまで自民党が利用してきた政・官・財・報(学を加える人もいるし、それも正しいと思う。民主党の政策に学対策はまだ明確にされていないと思うが。審議会の人選の透明化がそれだ)の利権構造にメスを入れようとしている。

 そこに来て、2007年のネタで大騒ぎするマスメディア…。

 もちろん、自分がその現場にいたら、と思うと批判できないような気にもなる。

 しかし、情報操作に近いことをしているんだという認識だけは持ちながら、今回の報道に携わるよう、一人一人の記者にお願いしたい。

 ダメ蚊だったかもしれないヤメ蚊からのお願いです。
  
 
※冒頭の写真は→http://blogs.yahoo.co.jp/abc5def6/61139836.htmlより
 



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