ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

2012-07-15 21:51:09 | 着物・古布

 

斧…すみません、ちょうどいい画像がなかったので、むりや「こじつけ」で、あの「かまって簪」の再登場。

「かまって」は「鎌○ぬ」をいじったもの、で「鎌・○・ぬ」は言葉にうまく絵をあてはめた判じ物…でしたね。

同じ判じ物で…これは今日ミクシの方で「横溝正史の犬神家の一族」のお話しから

「よき・こと・きく」のお話しが出ましたので…。

物語では「よき・こと・きく」が「斧・琴・菊」で、家宝として相続するものとして出てきますが、

のちに殺人の「判じ物」となります。

物語はともかくこの「斧・琴・菊」は代々の尾上菊五郎の役者文様として使われています。

当然「縁起担ぎ」ですが、この縞模様の浴衣など、今でも人気があります。

 

さて、この三つのなかで「琴」と「菊」はわかりますが、なぜ「斧」が「よき」なのか…。

これは「斧(おの)」の別の呼び方、ということです。母の田舎では「斧」は「おの」でしたが、

20代のころ、旅先で聞いたことがあるのです。たぶん「営林」、つまり木工製品が名産とか、

そんな土地柄だと思うので、記憶をたどれば木工品のところだと飛騨高山とか、輪島塗の…。

えーい、私のぼやけた記憶はこちらにおいといて…とりあえず、この「よき」は斧のことなので、

地方によって「○○よき」という使い方をする…と、ききました。

たとえば「針」にも「畳針」とか「縫い針」とか「刺繍針」とか、種類があるように、

何かを切る専門とか、使い勝手によって分ける言い方です。

 

このお話しをどこで読んだのか忘れたのですが、私がそのとき面白いと思ったのは、

「よき」という呼び名より、その斧につけられている線のこと。

たぶん「民話についての話し」を読んでいて見つけたのだったと思うのですが、

たとえば金太郎さんの絵とか、きこりが出てくる絵を見ると、斧の胴体?のところにたいがい3本の線がかいてある…。

覚えていませんか?だいたい赤い線で描いてあったりします。

探しました、これですね ちなみに「まさかり」は幅の広い斧の一種、木を切り倒すときなどに使われるものです。

逆に小さくて小枝を払うとか、表面を削ったりするのに使うのが「手斧」、これを「ちょうな」と読めるヒトは私くらいまで?

 

この三本線は、ただのお飾りではなく、本物の斧にもついているそうです。今はわかりませんが…。

これは実は裏には4本ついているのだそうです。(どっちが裏か表かわかりませんが)

その意味は「3本がミキ」で「お神酒」つまり「おミキ」で、反対側の4本が「ヨキ」、これは「五穀」、

お米はお酒で使っていますから残り4穀「麦、粟、稗、黍、」この内容は豆が入っていたりで、時代や地方で違うそうですが、

要するに、その土地でご神前にお供えするもの4種、です。これを斧に線として刻む。

そして、山で大きな木を伐採するときには、木にこの斧を立てかけ、お神酒と五穀をお供えしたという気持ちで手を合わせ、

山の神様に「木を切らせていただきます」と、ご報告し、無事な伐採と、その後の山の繁栄を祈る…のだそうです。

今でも、山や海で働くヒトは「神事」を大切にしますよね。

山の神、というと、家庭の奥さんのことを指すことがあります。こわいものの代表みたいに言われますが、

もともと山の神は女神で、木という命が長く、ヒトの役に立ち、切り倒しても根からまたヒコバエが生えてくる…、

そういう大きな恵みをつかさどるものとして、敬われるものなわけです。

きのこや山菜、木の実草の実も与えてくれるわけですから、まさに「命の源」なんですよね。

最近「山が海を育てる」といいますが、昔のヒトは、難しい科学的なことはわからなくても、

山の木は水の流れにも関係し、山の木はやたら切ってはならず、切ったら必ず植え育てる…

祖父が切った跡に植えたり伸びたりしたものを父が育て、子がそれをまた伐採する…

何十年というサイクルで山や森を育てることが、生きていくうえでの大切な輪廻であることを、

ちゃんと知っていたわけですね。

 

今回の大雨で、九州でたいへんな被害が出ましたが、もともと火山灰の固まった土地に

浅く根を張る杉がうわっていたために、火山灰の土台ごと滑り落ちた…とやっていました。

また戦後のお国の政策で、杉ばかりが増えたために、いまになって弊害がたくさん出ている…という話もあります。

 

あらら、また話がそれました。

要するに、昔のヒトは、山の恵み海の恵み…と、自然からのものを大切に思い、

大きな事故のおきやすい伐採や漁などについて「神様にお許しを請い、守りを祈り、恵みをいただく」という思いを

いつも持っていたわけです。今でもそうだと思いますね。

だからこその「斧の線」であるわけです。

よき、という呼び方には、五穀の「ヨキ」の意味もあるのではないかという説もあります。

 

いずれにしても、毎日口にするもの、身に着けるもの、住まうもの、道具…そういうものの一つ一つが

どうやって自分のところまで来るか…を考えたら、衛生上の問題から…と、時間切れの弁当を丸々捨てるとか、

便利なポリ素材に走って、そのリサイクルに四苦八苦するだとか…

そんなことは、もう少し頭を使ってナントカしようという気に…なりませんかねぇ。

食料自給率40パーセントを切るこの日本、元は農耕民族なんですがねぇ…。

 

というわけで、「おの」が「ヨキ」であり、斧の表面の線には、そういう意味がある…という、

ささやかなウンチク話でした。

 

 


コメント (4)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 天災 | トップ | 景色の絵本 »
最新の画像もっと見る

4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (とんぼ)
2012-07-16 00:44:17
惠様

身内に大工がいましたので…。

エコバッグもって買い物に行って、プらばっかし持ち帰る…。
なんかへんですよねぇ。
返信する
Unknown (とんぼ)
2012-07-16 00:42:49
陽花様

ほんとに、竹の皮や新聞紙で作った袋、
買い物籠、一山いくらの野菜…
あのころのほうが、無駄がなかったと思います。

こちらは「プラスチック・ゴミ」の収集が、週1回なんですが、
ぎゅうぎゅうにつめたって、一袋で終わりません。
一度買い物すれば、プらごみばっかり山のようになります。
ほんとに便利に暮らしているのかどうなのか、
いつまでこのままなのか…不安になります。
返信する
Unknown ()
2012-07-15 23:25:19
「ちょうな」という呼び名は知っていましたが
「手斧」を「ちょうな」と読むとは知りませんでした
若い
では無く 無知なだけでした

エコバック持っての買い物くらいでは 追いつきませんね。
返信する
Unknown (陽花)
2012-07-15 22:20:09
斧をよきという事もちょうなと読む事も知らず、いい事を教えて頂きました。
最近有難いとかいう感謝の気持ちが薄らいで
謙虚さが欠如しているように思えます。

竹の皮でお肉を包み1山いくらのお野菜を
紙袋に入れて売っていたあの時代だったら
ゴミさえもこんなに分けずに済んだのにと
便利にしているのか不便にしているのか
分からないですね。
返信する

コメントを投稿

着物・古布」カテゴリの最新記事