ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

色留袖の使い勝手…って

2014-03-08 19:11:02 | 着物・古布

 

トップは私物、一度も着ていないどころか、紋紙も取ってない状態で、

しかも持ち主であるはずの私が、柄もぜーんぜん覚えていませんでした。 

これは、嫁入りの時に私が「留袖はいらない」と言ったので、母が用意しなかったのですが、

どうにも気になったらしく「30代はこれですませておけ。40すぎたら自分のをやる」と、

まるで「応急処置」のように送ってよこしたもの。

いわく「気に入らないんだけど・・・安かったし、ま、とりあえずってことで」・・・。

とりあえずで買うもんじゃないだろ・・・と思ったのですが、母はとにかく引き出しの中に入れておけ・・・と。

結局そのまま30年ですがな。もったいない。

 

では、まず先に「紋」のことをちょっと…。

今の時代「紋」に対する思いというものは、わずかな年月の間に、かなり変わりました。

今では、自分の家の家紋を知らない人も、珍しくありません。

自分の家紋を知らなくても、生活に何ら支障がないことがほとんどです。

それなら、いい加減そんなもの、なくしてしまえばいいじゃないか…、でもまだそこまでは行ってません。

紋なんて気にしたこともないのに、やっぱり結婚式の衣装は「うちの紋は」なんて話が出ます。

なので…紋は、なくさないかわりに「扱いがいいかげん」になってきてしまいました。

 

紋はその数と、つけ方で着物の格に違いをもたらします。

数でいうなら「五つ紋、三つ紋、一つ紋」の順で、つけ方で言うなら「日向紋」「陰紋」「中陰紋」「覗紋」など…。

また正式は「染め抜き紋」、薄い地色のものには「描き紋」、描かずにあとから縫い付けるものが「縫い紋」。

この組み合わせによって、正装とか略装とかになるし、着物の格は下でも、五つ紋つけたら上がるとか、

そんなややこしいことがあるわけです。

江戸小紋もそうですが、紋をつけなければ格調高い小紋、というだけで、礼装にはなりません。

めんどくさいことなのですが、そのあたりがいい加減にゆるくなっていて、

呉服屋さんもちゃんと教えなかったりするんですね。

簡単に「紋をひとつつけておけば、礼装で着られるから」まではいうけれど、

どこまで着られるか、どんな時に着られるかまで言わない…。

買うほうは知識がないと「紋がついてるから、結婚式でもどこでも着ていかれる」と思う…。

あぁめんどくさい、ややこしい…ですが、私の親の時代は、こういうことが普通に行われていましたから、

「それやったらこれでえぇ」とか、自然と教わることができました。

 

さて、また前置きが長くなりました。色留袖のお話ですが…。これがまたねぇ…。

留袖が今のような形になったのは…というと、また話が長くなりますので、

とりあえず、結婚式には留袖…が主流になってから、というあたりからのお話です。

元々「留袖」というものは、地色は黒から始まっています。

そして、黒地、無地縮緬、五つ紋、裾模様のみの絵羽柄、比翼仕立てまたは二枚襲となりました。

二枚襲は、本来実際に白い着物と留袖を二枚合わせて着ていたものを、

利便性と経済性から「二枚着ているように見える」比翼仕立て、にかわってきました。

私の留袖は白に鶴の襲で、実際には、こんな形でついてます。

普通の着物で言うと、八掛のうえにの載る感じですね。

 

            

 

普段「留袖」のことを、いちいち「黒留袖」って言いませんね。それは元々が黒が主だからです。

だからそれ以外の色をつかうものを「色留袖」と区別していうわけです。

喪服も同じです。今は黒が主流ですから、わざわざ黒喪服とは言いません。

昔の慣習通り、白でやるところはかえって「白喪服」といったりしますし、

親族ではない人が参列に着るのは「色喪服」、黒以外の色、という意味ですね。

 

この「留袖」というものも、数十年の間に、いろいろ変わったことがあります。

まずお引きではなくなったこと、そのため裾模様が両妻柄ではなくなりました。

また丸帯が袋帯になり、戦後しばらくして、前述の比翼仕立てになりましたし、

帯締は白の丸ぐけでしたが、白地に金銀の入った平組、丸組が主流になりました。

それでも「黒無地・五つ紋・裾模様・比翼」は、かわっていません。

色留袖は、この留袖の地色が黒でないものですが…。 

「留袖」は結婚式専用の礼装ではありません。単純に「既婚女性の第一礼装」です。

今は結婚式くらいしか着ないので「結婚式用」みたいに思われてますが。

 

五つ紋がついていると、留袖に限らず「格」が最上になりますから、着ていくところが限られてきます。

たとえば振袖だって「未婚女性の第一礼装」ですから、昔は五つ紋ついていたわけで…。

世の中がかわってくると、身内の結婚式にはいいけど、友人の披露宴には…になります。

こんなことが重なって、紋はあまりつけないほうが…という傾向になり、

着物をたくさん持たない時代は「一つ作るなら、対応範囲が広いほうが…」という実用性を考えて、

イマドキは振袖に五つ紋なんていれることはありません。

色留袖もその流れで、五つ紋つけてしまうと…で、今は三つ紋、最近は一つ紋もあります。

でも単純に考えれば「留袖」と呼ぶなら、色が違うだけなのだから、五つ紋で裾模様で比翼でしょ…です。

 

我が家にある古い着物本を引っ張り出してみますと…

昭和30年代の本には、色留袖も五つ紋が「まずは当たり前」で、時には略してもいい・・・程度です。

40年代くらいから、怪しくなってきます。

昭和50年代の本には、わざわざ「最近は無地ではなく、紋綸子の色留袖なども出てきているし、

留袖より華やかで、使用範囲もひろげられるから三つ紋でもよい」とあります。

つまり、世の中がかわってきてるんだから、それくらいはいいんじゃないの?という緩みですね。

私も、三つ紋くらいまでは、流れのうちかな…とおもっていますが、

先日のサイトで「比翼もつけないでおくと、さらに気軽に着られます」…プロの言葉です。

ちょっとまった…黒でなく、地模様もあったりして、紋が三つで、比翼じゃない…。

留袖と同じところは「裾模様」ってところだけじゃありませんか。

これを「留袖」と呼んでもいいのかな?と、思います。

実際、色留袖は「五つ紋」だからこそ、留袖と同格。三つ紋になると「略礼装」になる…と、

書かれていますし、理屈から行ってもそうです。

 

なぜこんなことが書かれているのか…それが「留袖は結婚式専用ではない」ことが関係します。

まず、黒の留袖だって、結婚式以外に着られるわけです。チャンスがないだけで…。

そこで、もし着るときは、黒より地色が柔らかく、華やかな色留袖のほうが着やすいよね…が最初。

そして「だから紋減らすと、もっと着やすいよね。ついでに比翼取ったらもっと…」です。

でも、実際の暮らしの中で、一般的に結婚式以外で、何か格式の高い行事に着物で行くとしたら、

訪問着があればいいわけです。

なので、本によっては「三つ紋の色留袖よりも、訪問着のほうが華やかだから、

どちらかつくるなら訪問着のほうが、使い勝手がいい」とあります。

 

元々留袖は、結婚のときは親族と仲人さんが着るものです。

私、長らく勝手に勘違いしておりましたが、留袖は三親等まで、つまり「姪、甥」まで。

ついつい「いとこ」と言ってましたが、これは伯父伯母の流れからつい仲間に入れてしまっていました。

間違って書いててすみません。いとこは自分から見て4親等です。

あ、ちと書きましょうね。自分を真ん中にして…

両親、子供が1親等。

祖父母、兄弟姉妹、孫が2親等(兄弟の連れ合い、孫の連れ合いもはいります)

曽祖父母、伯父伯母・叔父叔母、いとこが4親等。

ちなみに夫婦は?…0親等、不思議な言い方ですね。これは「血族」ではなく「姻族」だから。

別れてしまえば他人に戻る…元に戻るというよりは最初からゼロって…。

ま、つまらない脇道はさておいて…

この三親等まで「留袖」というのは、キマリゴトとしてわかりやすいですから、

とにかくダンナの甥であれ、自分の姪であれ、甥姪なら「留袖(黒)」でいいわけです。

そうなると…実は色留袖って「親族」でいうと、そんなに着ることってないんですよね。

ところが、最近は「昔はほとんどなかった理由」で、色留袖が必要…な場合がある…。

 

昔は結婚は「それいけやれいけ」で、行かず後家にならないようにとみんなが後押し。

本人もまた、○○歳までには…なんて思っていることが多かったわけです。

そして、絶対ではないけれど、姉より妹が先に嫁くことはない…が基本。

なので今は…お分かりと思いますが、結婚年齢が遅くなり、まだ未婚で30歳とか、

そういう「お姉さん」とかがいることも珍しくなくなったわけです。

以前、30過ぎて振袖は…ということも記事にしたこともありますが、振袖着るには年齢がねぇ…

そういう時は色留袖でいいじゃないかと…。本来留袖は「既婚者の礼装」ではありますが、

そのあたりは「時代に添った融通」ってとこですね。その時には、黒よりも色のほうが…です。

3親等で訪問着では失礼にあたるから…あぁややこしい。

 

色留袖の説明文をいろいろ読むと、やれ三つ紋にしておけば、とか、

縫い紋に、とか、比翼をとれば、とかのあとに

「社交着として」「略礼装で出るような場」「パーティーなどに」とか、書いてあります。

更には「訪問着の代わりに」…じゃ訪問着でいいじゃん…。

それってたとえばどういう時?…これが書いてありません。

人にはそれぞれ立場や状況があります。

いわゆる名士、名家と言われるような家庭の中の人だとか、お茶や邦楽、舞などをやっているとか、

仕事柄、立場上、よく結婚式にも晩餐会だのレセプションだのも出る人とか…いろいろですね。

そういうチャンスがたくさんある人なら、必要なものだと思いますが、

私などは、この先黒の留袖を着るとしたら、身内ではなく仲人を頼まれたら…くらいです。

色留袖も、まず「バンサンカイ」なんてしゃれたものには、用がありませんしねぇ。

 

ここまで引っ張ってきて、こんなことを言うのもなんですが…

以前から言っていますように、もし着物がずっと着られ続けて、知識や知恵も伝わっていたら、

それぞれの着物の着られる範疇もはっきりしていたし、少しずつ「くくり」が緩んでいくことも、

納得して変えていけたと思うのです。

私は、結婚式で「妹が先で振袖を着るのは気が引ける」なんていう場合なら、黒留でいいと思っています。

その時は「留袖は『既婚者』の第一礼装」というくくりを外して「3親等までの女性親族の第一礼装」、

これでいいんじゃないですか?黒はどうも、というなら、その時初めて「色留袖」を考えればいいわけで。

色留袖をどうにかして、何かにも着られるのなんのと広げると、なんだか収拾がつかなくなってくる気がします。

 

かつて附下と訪問着のラインははっきりしたものだったのに、今や見ただけではわからない…。

こういう緩みは、緩みではなく、崩し、だと思います。

一度崩したものは、もとに戻すのが大変です。

色留袖は、ずっと「留袖」でいてほしいと…あ、私はムダになるので作りませんが。

 

おまけは、トップに使った古い帯。重たくて厚地の袋帯です。

実際これで締めたら、余りの厚みと重さに、休憩3回くらい必要です。

昔の人はエライっ!

 

            

 

柄がわかりにくいですね。柄ツケが界切り線の上、さかさまだからです。

さかさまにしてみると・・・扇面に兜。ちょっと珍しいですね。

男の子の初節句のお祝いに締めたのでしょうか。

柄がさかさまということは、引き抜きで結ばなければなりません。

厚さと重さを考えると。締めただけで1キロくらいやせそうです。

 

     


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14 コメント

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Unknown (じじ)
2014-03-08 21:03:02
留袖着ないままですか。勿体無い。
嫁ぎ先の慣習で、和ダンスの中をご近所さんが見に来るとか。
で、自分のだけでは足りないので母の着物も引き出しに。
とにかく満杯にしておきました。
本当にみに来られました。ビックリでした。
 
主人の方のお寺さんで落慶法要があったのです。
そのとき姑たち門徒(女性)さんは皆留袖でしたよ。
街中を旗とか持って練り歩いたの。

気温が下がったので持病でちゃった。
トンボさん、ゆっくり休んでくださいね。
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Unknown (りら)
2014-03-09 07:19:19
黒留、着る機会は本当に少ないですよねぇ。
って・・・私はパーティーで着ちゃったりしてますけど~。
うふふのふ。
でも、お送りくださったお母様のお気持ち、嬉しいですよね。

ましてや、色留など・・・勧められることは多いようですけど、よほど親族やお友達が多く結婚式に出る機会が多い方・・・あ!でも、多けりゃ大いで毎回同じってわけにはいかなくなるでしょうね。

昔の着物を見ていると、紋についてももっと多様で「もしかして好き好きだった?」と感じたりすることがあります。
ただし、正装の五つ紋については厳格ですけど。
着物の三つ紋というのは色留が流行りだして付けるようになったと聞いたことがあります。
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Unknown (古布遊び)
2014-03-09 07:51:04
結婚式やお葬儀など様変わりしていますからねえ~
そういった儀式と共にセットだった着物はどうなっていくんだろうと思ってしまいますね。

先日も知人に姪御さんの結婚式の写真を見せてもらいましたが皆さんドレスでした!
そういえば、留袖をドレスに仕立て直して着たの。という人もいましたねえ~

私は留袖を着ることがあるんだろうか?
娘よ、息子よ結婚してくれーという気持ちです(笑)。
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Unknown (ミモザ)
2014-03-09 14:38:22
若かりし頃、留袖をあつらえた母の友人に
「結婚式挙げてお嫁に行って~。戻ってきてもいいから」と
頼まれました。
すごく気に入って留袖をあつらえたはいいけど、
よく考えたら着る機会がなさそうだとか。
後年、リクエストにお応えできて良かったです。

結局、ご自身のお子さんたちは結婚式を挙げず、
今のところ、私のときが唯一無二の出番だったようです。
「孫には結婚式挙げてもらわなきゃ」とおっしゃってます。
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Unknown (雨龍)
2014-03-09 15:54:16
あー!
留袖は三親等までだったのですね!?
いとこの結婚式に着てしまいました(゜д゜)!
姉は最後まで訪問着にしろと反対していましたが、一度も来たことがない留袖を着たかったんです~。
かなり年の離れたいとこだったこともあり、たぶん周りの方は叔母だと思ったのでしょう。相手方の親族の方からたくさん挨拶されました・・・(汗)
教えていただいてよかった。ありがとうございます。
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Unknown (とんぼ)
2014-03-09 19:24:31
じじ様

私の1回目の結婚の時も、見に来ましたよ。
なのでもちろんしっかり入れてくれました。
(母のお下がりも!)

母の話では、おっしゃるような落慶法要とかとか、
そういう時は、大人は留袖だったそうです。
お祝い事には…だったのですよね。

持病…ですか。今回また今季一番の寒気だとか。
くれぐれもご自愛くださいね。
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Unknown (とんぼ)
2014-03-09 19:29:16
りら様

着る機会は、りら様のほうがおありになるでしょうねぇ。
うらやしましーーって、持ってないんだけど。
母の気持ちはむほんとにありがたいんですけど、
母自身が「これくらいしかなかった」と、
実は気に入った柄ではなかったようで。
ほんと「臨時」みたいにかってこられて、
一度もきられず…かわいそうな留袖です。

紋の数で変化させるのは、着物ばかりの暮らしのころは、
重宝だったかもですが、今はあやふやになって、
おかしな方向で使われて…。
色留袖も、なんか仇花みたいになってしまってますねぇ。
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Unknown (とんぼ)
2014-03-09 19:32:17
古布遊び様

ほんとにいろんな「式」があって、戸惑います。
アットホームだったりは、お金の掛け具合を考えれば、
悪いことではないのですが、それが
「なんでもいいじゃん」になるのはさみしいし…。
なにより最近「白無垢」より「ウェディングドレス」ってのが、
とても気になってます。日本人なら文金高島田で…と、
ついつい思ってしまいます。

お子様はこれからでなんですね。
おかあさん、気合入れて、留袖のお手入れおこたりなく!
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Unknown (とんぼ)
2014-03-09 19:34:57
ミモザ様

ほんとに着る機会の少ないものですし、
柄雪も、いくらなんでも20代から60,70代までは、
むりですからねぇ。
これが着られるうちに、ってのはわかります。
私もこの留袖がまだ着られる範囲のころ、
アナタの婚期り、留袖の許容範囲で頼むわよ、
なんていってました。
まさかいまだに行かないなんて…かわいいこなんですけどねぇ。

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Unknown (とんぼ)
2014-03-09 19:37:38
雨龍様

いがいといとこくらいまでは、着ちゃったりしているみたいですよ。
司知らずにもあれば、確信犯もありで…。
身内なんだからいいんじゃない?で。
いとこって結構、年が近かったりして、
仲イイ場合が多いですもんね。
私も、女のいとこは姉妹みたいにお付き合いしています。
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