ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

目立たない羽裏

2010-09-16 19:33:30 | 着物・古布
ぱっと見ると珍しい柄でもないし、目立つハデ色でもない…んですが、
ひとつひとつの柄が好きでして…。いわゆる「道具柄」です。
絵としては、どちらかといえば、それほどうまくはない…なんぞと、
自分がちゃんと描けるわけではないのに、不遜な言い方ですが、
ちょっと「ヘタウマ」タイプ。
それでもシンプルな分、よく分かります。

大きく分けて二段の柄の繰り返し、こちらは琴、経机、碁盤、左端は燭台かな?


    


経机の上には、ありがたそうな巻物がありますが、その下に櫛とかんざし…。
何か意味があるのかなー。昔は男尊女卑が激しく、女は身分が低ければなおのこと、
日常的に「学ぶ」ことはありませんでしたから、何かの対比ですかね。
こういう具合に描かれる古い経机は、机の面の両端が外側に反り返っています。
これを「天返り」または「反天」といい、後から別の「部品」をつけて
盛り上がらせるものを「筆返し」と言います。
文字通り、置いた筆が転がって、机の下に落ちないようにするためのものです。

碁盤と碁笥(ごけ、碁石をいれるもの)は、男物の柄によく使われます。
平安時代から、貴族のたしなみ、教養として指南役もつけ、
みな囲碁に励みました。もちろん女性も…。

この絵の碁盤は、ちとえぇかげんですが、足の形はよくわかりますね。
このあしは「くちなしの実」と言われています。
碁で対局するものは、いろいろ口に出して言わない、
また周囲で見るものも、口を出さない…ゆえに「くちなし」なのだそうです。

碁盤の目の付け方で「太刀目盛り」という方法があって、これはあの線を引くのではなく、
太刀の刃に黒漆をつけ、碁盤の上にそれをあてるようにして引くものです。
テレビですが、やっているところをみたことがあります。
線の部分にわずかに漆が盛り上がるので「目盛り」というそうで、
たいへん緊張する作業だそうです、当然ですね。

ちなみに碁石の持ち方は人差し指と中指ではさんで残りの指は開いて打ちます。
これは「私は手の中に別の石など隠すような、ごまかしをしておりませんよ」
という証しだそうで…。相撲の最初の挨拶も両手を広げて手のひらを一回返すのは、
武器を持っていないという証し、つまり、いつの場合も「正々堂々」を
あらわしているわけで、それだけ勝負というものを神聖なものとしていたんですね。

琴は巻いた糸が眼鏡のようにおかれているところ「柏葉」といいますが、
そこが描いてないのと、なんかマが抜けてるなぁと思ったら「琴柱」がない…
かなり手抜きの絵ですね。
見えているのは琴のアタマと胴の半分、琴の足は「猫足」と言いますが、
琴そのものは「龍」に見立てて名前が付いています。
猫足のある部分が竜頭、クチにあたる部分は「龍口」で、
そこをふさぐようにはめ込んであるものは「龍舌」
糸の最後が乗っかっているでっぱった部分が「龍角」で、ここまでがアタマです。
胴体は「龍胴」…ではなく「龍甲」裏側はまんま「龍腹」、
巻いた糸のおいてある部分が「龍尾」…と、この程度の名前は知っているのですが…
まったく弾けないどころか、実際に弾いているのをリアルタイムで聞いたことがない…。
碁も打てませんしねぇ…五目並べでも勝ったことないんですから。
あたしってナニ…。

こちらがもうひとつの柄、


    


こちらは火鉢…ではなく「木製」のようですから「火桶」でしょうか、
横においてあるのは「炭籠」、そしてまた琴、横においてあるのは「脇息」
歴史的には平安貴族の時代から使われていますが、当初は「脇」ではなく、
前において、腕を乗せてもたれかかるもの、でした。
今のようにお膳とかテーブルというものもありませんし、
経机などは「休む道具」ではなく「学ぶ道具」ですから、
もたれかかるなどとんでもないわけで、こうした「休憩道具」が使われたわけです。
ちなみにお殿様なんぞがえらそーにこれにもたれかかって、
家来達をずらりと並べて…なんて場面がありますが、
実際には「リラックス道具」ですから、使うのはプライベートなときだけ、でした。

琴の下のもの、これがどうにもよく分からないのですが、
形からいくと「貝桶」かなと。江戸時代の姫君の嫁入り道具には、
朱塗りのこんな貝桶があります。
その右側のかごのようなもの、こりゃもうまったくわかりません。
ぱっと見、花瓶かと思ったら「炎」が出ているみたいにも見えるし…。

また琴の左上は、よく見るとテッペンは「湯飲み茶碗」です。
高杯(たかつき)かと思ったら、湯のみを載せた高杯が、更に乗っているんです。
ってことは「湯のみ用テーブル?」そんなものがあったのかどうかわかりません。
まだわからないものがあります。これはなんでしょう。


           


この羽裏全体からして「日常の道具類」ではあると思うのですが…。
最初は前面の丸いものが「文字盤」に見えて「時計」かと思ったのですが、
後ろ側があいていて「箱」のような感じになっています。
何かものを入れておくもの?小物入れつきハンガースタンド?えぇっ?
イロイロ考えても思いつきません。

つまらないことが気になって、あっちこっちひっくり返して見たり
あれこれ考え、じーーーーっと眺めているうちに、
日が暮れましたがな。知っている方、教えてください。


というわけで、今日はジミめな羽裏のご紹介でした。
今日はもぉ一気に秋…外で24度です。
雨が降り続いていて、昼間は風もひんやり気持ちよかったのですが、
夕方からは肌寒いって…。あらら、もうこのまま秋なのねぇと思っていたら、
「明日は30度…」お願いだから、極端やめて、体にこたえるってば。

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4 コメント

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Unknown (とんぼ)
2010-09-17 16:35:26
陽花様

お琴って置いてあるだけでもきれいですね。
私は楽器はぜんぜんダメです。

茶卓の下に10センチくらいの足がついてるの…
あれが高杯です。
お寺さんがきたときには、これで出す…。
都会ではもうそんなことも見られません。
友人はコーヒーだしたら喜ばれたって。
やっぱり昭和は遠い~。
返信する
Unknown (とんぼ)
2010-09-17 16:29:47
チーママ。様

昔はほんとに何でもあり、で面白いです。
一富士二鷹三茄子、富士に鷹、
なんかひねりはないのか…ですよね。

お琴、やってらしたんですね。
ぜひ一度拝聴させていただきたいです。
この絵はほんと「えぇかげん」で、
なんか糸張ってありゃいい…みたいな?
本来は13本ですよね。

三味線、いまからでも!
私はギターがやりたかったのですが、
手が小さくて、コードがひちんとおさえられない…。
いまになって私も「三味線かお琴」なら
できたのになぁ…と思っています。
もっともダイジな「音感」のほうがねぇ…。
返信する
Unknown (陽花)
2010-09-16 22:39:03
お琴は弾けないですが、触った事は
あります。琴柱の描いてない無いお琴、
やっぱり変な感じですね。

何気なく見ている絵にも、部分的な
名前が付いていたり、いわれがあったり
するんですね。

お湯飲みの台、ここまで高くはないですが、
お寺さんにお茶を出す時実家では使っています。茶卓と言うんでしょうか・・
高さがあるのでお湯飲みをひっくり返さない
ように、そろそろと運びます。

返信する
面白いですね~ (チーママ。)
2010-09-16 20:47:02
羽裏の柄は、いろいろなものがあって面白いですね!
こだわりのある人は、羽裏でいろいろ遊んだのでしょうね。
羽裏だけじゃなく長じゅばんもかな。

こだわりがない人が作っているものは
呉服屋さんに勧められるがままと言った感じで
一富士二鷹三茄子は、学生時代よく見ました(笑)

おばが、箏(生田流)の先生なので、中学に上がるまでは毎週習いに行っていました。
とはいえ、部分の名称などは、まったく知りませんでした!!

絵の、弦の数は何本かしら~と数えてみたのですが、6本?10本?
我が家にあるのは、13本です。

今更ながらおしかったなぁと思うのは、三味線まで習っていればな~ということです(笑)
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