ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

掻い巻き・掻巻

2020-12-16 21:14:13 | 着物・古布

 

掻巻、でいきましょう。掻巻は、寝具の一種。

トップ写真は、やっとおひさまが出てくれたので思いっきりひろげているところ。

さかさまでごめんなさい。肩と袖の部分ですね。

 

寝具の歴史については、過去に書いておりますので簡単にまとめますと、

まずは「ふとん」なんてものはありませんでした。

平安時代は、貴族など身分の高い人は「たたみ」を敷いて着ていたものを掛ける、

このころは、掛けるものより敷くものが多いほうがステイタスでした。

畳を何枚も重ねて…って、牢名主のようですが。

時代が進むと、上にかけるものに綿が入ったりしてきますが、

これも身分の高い人、それに綿がないころは真綿ですから薄く入れた程度です。

江戸時代の庶民は、綿も出てきていましたがたいがいは着ているものを掛ける、でした。

木綿綿が普及してからは、近代までの間に綿いっぱいでパンパン…みたいな布団が主流になりましたが、

掻巻という「着物の形」をしたものは残ったわけです。これを掛けるときは当然、

着物でいうなら「後ろ前」にかけるわけですが、首と肩をすっぽり包むので、

暖房の発達していなかった日本では、とても暖かかったんですね。

布団綿、今はもう化繊綿が主流だし、もっと軽くて暖かい羽毛布団などがありますから、

昔ながらの木綿綿布団は、もう絶滅危惧種、だと思います。

木綿綿はとにかくたっぷり入れればいれるほど、重くなります。

私の父などは、布団は重いほうが暖かい気がするという年代です。

かすかに記憶がありますが、押し入れへの出し入れも大変でした。(母が、ですが)

 

この掻巻、持ち主だった方のおばあさまが作ってくださったらしいのですが、

綿ぎっちりしっかりでとにかく「重い」です。

丈が短くて使えない。長さを足す方法があったらそうしてください、と。

もちろん、一度下のほうだけ解いて生地を足して綿を入れて…と作り直すことも可能ですし、

足が暖かければというのなら、毛布をカットして付け足しても、と思いますが、

実際の使用は、重い布団に慣れていない私らの年代では、重さが心配なのと、

今はもう見ない掻巻、このまま「こういうものがあったのよ」という見本として残したいとも

思っています。綿入れ半天も、最近のものは化繊綿ですから、軽いのはいいけれど、

なんだか体になじみにくいです。昔ながらの綿入れ半天をさがしていますが、

今度は逆に、べったんこのしかなかったりします。

自分で作るのはめんどくさいしなぁと思っています。

 

生地は絹ですが、古い着物の繰り回し。昔の「リフォーム術」の定番です。

小穴などもあって、時代を感じますね。色はもう少し明るいとかと思うのですが、

写真を外で撮ったらおひさま明るすぎて…調整もしないで撮ったのでちゃんと出ませんでした。

色目から言って女性の普段着物かと。黄八丈だと思うのですが、自信ありません。

ちょっと地味めですが、こういう格子って黒い帯など締めると、とてもおしゃれなんですよね。

着こまれてやわやわの絹です。

 

 

      

 

よく見ると、きちんとつなぎ合わせていて細かい仕事になっています。

裏は、これもまた昔の布団の裏にはよく使われた赤紫の木綿です。

「ふき」がねぇこんなに厚くてすごいです。ボッテリ!

 

       

 

掻巻のスタイルだけは、今でも毛布や薄い掛物に使われています。

調べてみると「掻巻は着ることもあつた」なんて書かれていますが、

薄い綿入れ程度ならそれも可能でしょうけれど、私が見慣れている掻巻は、

着たら動けませんわ。引きずって歩いたら、その辺のものをみんななぎ倒したりして…。

 

肩の当て生地の柄も懐かしい昔柄。着物の残り布と思われます。

これは絹で、写真ではわかりにくいですが、ちりめんです。

 

     

 

今は家自体の気密性も高まり、冷暖房も進み、さらには寝具の素材も進歩しましたから

厚い布団を何枚もかけなくてもよくなりました。フワモコ素材のおおいこと。いい時代です。

 

さて、これを書いている今、急に寒くなってます。日本海側は大雪とか。

今年は関東でも雪が降るのでしょうか。雪が降ってもぬくぬくとすごしたいものです。

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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (古布あそび)
2020-12-17 07:59:42
懐かしい~
子供のころ「よぎ」今となって考えると「夜着」の事だと思うのですが使っていました。
「掻い巻き」と同じものでしょうか?この二つの違いはなんなのでしょう?

私の亡くなった母も布団は重くなくちゃと固く信じておりましたが、ある時羽毛布団の暖かさに目覚めてびっくりしておりました(笑い)。時代と共にいろいろなことが変わってきましたね~
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Unknown (とんぼ)
2020-12-17 23:49:10
古布あそび様

よぎは掻巻のことです。
夜着は、かつて着ていたものを掛けて寝てたいために残った言葉でしょうね。
「ふとんきて寝たる姿や東山」は服部嵐雪の句ですが、江戸時代の初めのほうの方です。
そのときは「布団は掛けるものではなく着るもの」という感覚があったのでしょう。
母も時々「ふとん掛けて」ではなく「ふとん着て」ということがありました。

ふとんは私の親の時代は「財産のひとつ」みたいな感覚があって、
たくさんあるほうがいい、みたいな。泊まるようなお客もたいしていないのに、
「客ぶとん」なんて押し入れに押し込んでましたわ。
今や万が一の時は「レンタルふとん」がありますからねぇ。
そういえば羽毛布団用の圧縮袋、なんてものもありましたね。
押し入れがスカスカになるわけですわ。
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Unknown (古布あそび)
2020-12-18 19:42:13
そうなんですね~
思い出しました。「ふとんを着て」の言い方、聞き覚えがあります。
なるほど、そういうことなのですね。
納得です。
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Unknown (とんぼ)
2020-12-18 22:39:11
古布あそび様

消えていく言葉なのだと思います。
昔の暮らしは楽なものではありませんから、
重い布団はいやですが、懐かしさは残っています。
掻巻スタイルの毛布、欲しいなぁと思っていますが、
たたむと平らにならない…あぁこれもイマドキの悩みでしょうか。
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