ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

お福ちゃんやっとお正月

2008-01-18 20:43:47 | 着物・古布
昨年ドタバタしていて、お福ちゃんには古い留袖を着せたまんまでした。
お正月になっても、あれこれしているうちにすっかり忘れてました。

今日二階に上がって、古着の一番上にのっていたこの着物を思い出し、
お福ちゃんに遅ればせながらの「お正月」。
以前アップしましたが、こうやって着せたのは初めてです。
着物としての形が見えると、やっぱりいいですねぇ。

これは相当古いです。
縮緬の着物の古いものは、それはそれは色鮮やかで、
どんな娘さんの身を飾ったものかと、心躍ります。
一方で、武家や身分の高い人たちは、かなり時代が進むまでジミめでした。
これは素材は麻、柄も、今で言うならおばあさんが着るような、
色の少ない、地味な柄行ですが五つ紋つきの大振袖、当然おひきずりです。

共八掛です。柄のアップ。


       


袖の裏や胴裏は紅絹、まっかっかです。
麻はいまや夏の素材ですが、この頃はあわせでも麻が使われていました。
ふき綿も入った、重みのある着物です。

成人式の振袖、最近はとみに華やかです。
私は古典柄だけがいい、古典柄こそが着物の柄だ、と言う気はありません。
時代とともに変わってゆくものはたくさんあります。
今の時代、洋風の花が舞い散る振袖も、それはそれでいいと思います。
ただ、古いもののよさ、というものを全く知らずにいるのは、
髪型と同じで、本当にもったいないと思うのです。

古きよき物を見て、眼を肥やし、更にいいものを見つける、
着物にはそういう楽しみ方があるのだということを、
今、振袖を売る人たちが、すっかり忘れているような気がします。
それも「大手」といわれるところほどです。
先日、ちょうど成人式の日のお昼過ぎに、着物特集という番組をやってまして、
その中で、日本最大とか何とか言う呉服屋の社長が出演していました。
工房だというところは大きなビルで、デザイナーは若い女性、
デサインは手描きではなく、とーぜんパソコン、フォトショップを駆使して、
長い振袖に大きな花模様を「描く」のではなく、「はめ込む」…。
会議で出てくるのは、ヨーロッパのモード雑誌で、
横文字のデザイナーのワンピースのこのピンクがかわいいとか、
このグラデーションがステキだとか…。
それを着物に取り入れると言うわけです。
もちろん、彼女たちも職業柄、十二単の襲の色目も、
江戸の昔の四十八茶に百ねずみも、知った上での推敲であろうと思います。
ただ、着る側はどうかと言うと、そういうことも何も知らない、
着物のこともよくわからない、そういう人たちが、
きれいだ、かわいいと、それだけで着物を選ぶわけです。
もっと情報をたくさん与えてあげないと、もったいないですよ。
そうしていかないと、益々、日本が1200年かけて育ててきたすばらしいものが、
いびつな形でしか伝わらなくなってしまう気がします。

毎度ぐちぐちと言っておりますが、着物をちゃんと伝えられなかった年代の
おしまいのほうの人間として、ちったぁ努力していきたいと思ってはおります。
来年成人式のかた、こんなじみーな振袖、かえって目立ちまっせ。






コメント (5)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 着物・残念シリーズ その3 | トップ | いただきましたー! »
最新の画像もっと見る

5 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (陽花)
2008-01-18 23:40:33
麻の振袖を実際に見た事はありません。
本当に貴重品ですね。
この柄は、織りでしょうか、それとも
刺繍がほどこされているのでしょうか。
ジミ目だけどとってもいい柄ですね。
返信する
Unknown (六十路独り言)
2008-01-19 10:56:24
素敵な青ですね。模様も落ち着いていて惹かれます。
絹とは違って少しは理のあるような麻でこの色。
凛としたものを感じます。
見ていて、以前に創った歌を思い出しました。

 火の星の夕焼け空は青と聞く
      マリンブルーかコバルトブルーか

お説に同感です。
今の人たちは、花にたとえるなら花は知っていて
いろいろ言うけれど、根っこや茎は知らないと言うことです。
魚料理、ソースをかけられた切り身を美味しいと言うけれど、その魚の全体像は知らない。
釣り立ての魚のおいしさは知らないで、洋風好みになってしまっている。
こんなことを思っている私です。
返信する
Unknown (とんぼ)
2008-01-19 19:19:06
陽花様
これは染といいますか、全て手描きです。
細い筆で一つずつ描いてまして、
ひとまわりぐるりと回っても、同じ柄がありません。
ちょっとだけ刺繍があります。ぜーたくですね。
こういう振袖だったら、袖を切ってからも、
ずいぶん長く着られますね。


六十路独り言様
ほんとにいい青です。これはマリンブルーかな?
白い紋が凛としてきれいです。

本当に、おっしゃるとおりですね。
洋装文化にどっぷり浸かってますし、
そのなかでも既成のものしか見えないみたいで、
個性的でなきゃ、と言う割には、
みんな似たような感じですものね。
気の毒だと思います。
返信する
Unknown (もも)
2008-01-21 01:20:10
この留袖は素敵ですね!
ふき綿の入った、麻や木綿の友禅の留袖は風格がありますね。
時代のある、麻、木綿の留袖は高価で、びっくりします。
むしろ麻、木綿の方が贅沢なのでしょうね。
私は、布の端切れの商い人ですが着物も、どうしても
時代のあるものの方に目がいってしまいます。
別に、時代があるから良いと決めつけてはいないのですが、この魅力にはまります。好きですね。
もう少しお勉強して、感覚だけでなく、ちゃんとしたことも少しでも知るように・・・と思っています。
そんな環境にせっかく居るのにね。




返信する
Unknown (とんぼ)
2008-01-21 18:57:19
もも様
すみませんが、これは留袖ではなく「振袖」です。
骨董をあつかっていらっしゃるもも様には
釈迦に説法ですが、時代を経てきたものには、
積み重ねというものがありますね。
渋いもの華やかなもの、贅沢であったもの、
庶民のものだったもの、それなりの積み重ねが
言葉を持っているのだと思います。
いいものですよね。
返信する

コメントを投稿

着物・古布」カテゴリの最新記事