以前から時々お話しにでている「襲の着物」です。
これは10歳からちょっと上くらいのの少女用と思われます。
肩上げは解きました。元々はお母さんか、お姉さんの着物だと思われます。
着物と「中着」の裾柄部分は、しぼ大き目のいいちりめん、
中着の白と赤の部分は平絹です。
柄アップ。遠目の写真でよくわかりませんが、実はこんなに鮮やかな
朱と白の菊です。合間に牡丹もあります。コントラストのハッキリした
とても華やかな着物ですね。昭和初期くらいかと思います。
これは小さい子の「振袖」なので、大人用の振袖よりは、袖が短いです。
で、今日は昨日のコメントでいただいた「振袖」がお題です。
元々今着ている「着物」の原型は、十二単の一番中、
下着のように着ていた「小袖」といわれています。確かにそうだと思いますが、
日本中の女性が十二単を着ていたわけではありません。
そのころから庶民の女性は「小袖」を着ていたわけです。但し絹はナシ。
麻とか、その他の繊維ですし、色柄もきらびやかではありません。
時代がさがって、少しずつ庶民も模様などつけるようになっていきました。
貴族や武家の奥方は、袴を脱いで小袖を着て細帯、それに打掛に
なっていきました。小袖が着物として着られ始め、やがて戦国時代を迎えますが
そのおわりころ、つまり安土桃山ごろから小袖はだんだん華美になっていきます。
「慶長小袖」「寛文小袖」など、後世に残る小袖が生まれたのもこの頃からです。
やがて時代が下がるにつれて「帯」が重要な役目を果たすようになり、
帯が太く、長く、豪華になっていきます。結び方などもいろいろ考え出されたり
前や横で結んでいたのが、最終的に後ろに安定したり・・。
さてそれに伴って、つまり帯とのバランスで着物の丈や袖の丈も変化しました。
振袖は当初は「赤ちゃんと子供」のもので、赤ちゃんのお宮参りに着る
「掛け着」は、十二単のように広袖(袖丈全部が袖口)にして、
少し大きくなると、袖口を小さくする普通の袖に縫い直し、着せました。
実は振袖のあの大きな袂のアキが、動き回る子供の体温上昇に効果があった、
つまり「熱発散」ですね。そういう目的だったようです。
やがて装飾的な意味合いが強くなり、若い娘さんの着物として定着したわけです。
そんなわけで、若い女性の振袖というのは、小袖などと比べれば歴史はそれほど
古くはありません。布の種類(絹麻など)、織染めの種類(ちりめん、羽二重
型染め友禅染など)が増え、武家や裕福な商人の娘は豪華なものを着たわけです。
重ねの着物もそのひとつです。花嫁衣裳などは3枚重ねが普通でした。
さて、その振袖にもいろいろありますが、一番格の高いものは、五ッ紋で袖丈が
3尺程度。これは、手をおろすと、袂の先がくるぶしくらいまできます。
花嫁振袖がこれです。このほか三ッ紋、一ッ紋もありますが、紋つきは
とにかく「第一正装」でした。昨日のコメントにも書きましたが、
着物での暮らしで裕福な娘は、振袖を何枚も持っていましたから、
目的によって着分けていました。紋がつくとどうしても格があがり、
やたらなところへは着ていけません。時代が進んで、振袖などを何枚も
もつようなことがなくなり、また柄行もだんだん派手になってくると、
紋をつけてもめだちません。それでだんだん略されるようになっていきました。
中振袖というのは、長さでいうと大振袖115センチくらいに対して
100センチ少々くらい、「位」というのは、個人で身長さがありますから、
大振袖がくるぶしくらいなら、もう少し上、ということです。
ただ、最近の女性は背が高いので中振袖でもだんだん長くなっている
という話しを聞きました。
本来大振袖は、裾も共八掛、白羽二重の下重ねを着る・・というのが本式、
つまりは花嫁さんですね、それに対して中振袖は、重ねはナシで
八掛も普通のきものと同じように別布・・だったのですが、
前述のように、最近では体格の良さや大振袖は婚礼用という認識がひろまり、
中振袖が若い女性の正装、ということで、袖丈も長く共八掛のものがでてきて、
大振袖化?しているそうです。
ひとつ毎年成人式のときに、気になることがあります。
「振袖にショール」です。北国雪国ならともかく、都会の女性はない方がいい!
振袖にはあの「白いショール」をするのが当たり前になっているようですが、
本来振袖にはショール・ストールはしないのが原則・・だったはずなんですよね。
まぁ時代の変化で、そういうものがかわっていくことを全てダメだとは
言いませんが、テレビなどで会場から出てくるお嬢さん方が、判で押したように
皆真っ白のモコモコで、アゴまで埋まってる・・・。ちと残念です。
着物姿のきれいなところの一つに「襟足」があります。それから胸元の打ち合わせ
年とともに、打ち合わせはゆるめになっていきます。帯も下目に・・。
襟元をつめて、帯を胸高にしめて、しかも華やかな振袖に、美しい帯や帯締め、
娘のときしかできない「絞りの帯揚大もりあげ」、振袖のときしか
できないんですよぉ。それがみーんな隠れちゃう。もったいないです。
寒いなんていわないでくださいね。ミニにブーツなんて日ごろの
スタイルから行ったら、ぜったいあったかいはずだし、
キレイなもの着てるときくらい、気合で寒さ吹き飛ばしてください。
振袖ということでしたら、例えば虚空菩薩をまいる京都の十三まいりなんかに着られたものかもしれませんね。
重ねあざやかなものですね。最近の重ねは留袖にかぎられてしまったのは残念なことです。しかも、白のかさねに決まってしまっているようですし、さらに比翼仕立てになってしまっていますので、さらに残念です。
格がだんだんルーズになってきたということですかしらね。
これはたぶん中裁と思います。なにしろ「体格」というのが戦後、赤ちゃんにいたるまで?大きくなっていますので、当時ではいくつぐらいの子供だったのは、わかりませんが、まぁ10歳から、おっしゃる13参りの年齢くらいというところではないかと・・。
襲についてはもう「比翼仕立て」がかさねのかわりだということすら、忘れられてますしね。残念だと思います。世の中のことがなんでもスピードアップされて、カンタン、速い、便利・・を追求してきた結果なのでしょうね。
先日の成人の日、振袖の上から、紗のコートを着ているお嬢様を見かけました。 振り袖の柄とふくら雀が透けて見えて、なかなかgood♪
袖丈が合っていたので、お誂えでしょうけど、これって、チリ除け+防寒?で、流行るかも知れません。(^^)
以前テレビで、京都の「舞妓さん」が、仕事で新幹線に乗るところを映したんですが、袂がすっぽり入るすごくジミ~~な道中着の長いようなのを着ていました。衿に黒繻子がかかっていて、渋くてシャレてました。振袖のそういうものって、お誂えですよね。