ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

きものばなし 「織るということ」その3

2010-11-16 15:30:50 | きものばなし


織物のお話し、最後は「絣」、これは、糸の途中に「染まらない部分」あるいは「別の色の部分」を残し、

それを経緯くみあわせることで柄を出すもの。

発祥はインドなど東南アジアあたり、琉球を通って江戸時代後期くらいに日本に伝わったと言われています。

イカットという言葉の語源は「くくる」という意味だそうです。

入ってきてから、お得意の「日本独自」の工夫が始まり、伊予絣とか備後絣とか、

それぞれの特徴的な絣が生まれていきました。

 

一番単純に紺地に白い絣模様…で説明しますと…

まず経は、着尺だと12~14メートルくらい、太物(木綿)で11~12メートルくらい、

もちろんその前後に余分はありますが、その「着尺部分」になるところの

「柄として白く残す部分」を、全部「防染」します。大体は糸で「きつく括る」方法が多いです。

また緯も経と交差して白くぬくところを同じように「防染」します。

それぞれに染めて、あらためて経を機にかけ、緯を織りこみます。

言葉にしてしまえばたったこれだけですが、一箇所でも染め間違えれば「柄」が壊れます。

この「織ったら柄になるように《防染》して、染めて、それを織り上げる」という作業のうちの、

防染のための括り方とか、糸の染め方とか、織り方とか、それぞれの産地の特徴として、

長く伝えられているものも多くあります。

 

こちらはトップ写真のアップです。まぁあまりにも「まんまの絣」ですが、

糸の重なるところ…というのを見てください。こちらが前身ごろの柄の部分アップ。

 

          

上の薄青と黄緑が重なって「井桁」になっているところのアップがこちら。

矢印の先の薄い色の糸が、ずっと下にたどっていくと、黄緑っぽい色から地の色に染め分けられていますね。

緯も上の薄い青い色は、こうして柄になる部分だけがこの色に染められているわけです。

重なって柄になる、これをねらって染め分け、織る時にずれないように調整していくわけです。

          

 

元々日本でのかすり織りは「麻、木綿」が主体での始まりです。

絣織りそのものの伝来は、「太子間道」などという名前があるくらいで、奈良平安の昔からあるのですが、

それは「布」としての伝来でしたから、実際に国内で「絣」が盛んに織られるようになったのは、

江戸の終わりころといわれています。

絹物には手が届かなかった時代、縞や格子ばかりだったところに、絣という「技術」が伝来したわけです。

その中でも今「三大絣」と呼ばれているのが「久留米・伊予・備後」、

これはそれぞれに織り手が工夫して考案された織りとされています。

藍染の木綿絣は、農業国日本においては「女性のおしゃれな野良着」として大人気を得ました。

また「蚊絣」や「書生絣」と呼ばれるごく細かい絣は、反幅にびっしりと細かい十字絣などを

織りこむもので、経と緯の十字を合わせるのがたいへん難しいため、今に至るも高価です。

おもに男性用の着物に多く使われます。

 

時代が下がって、絹物が自由に着られるようになって「絹の絣」が主流にと変わっていきました。

木綿よりも細く、ツヤのある絹糸の絣は、より繊細で自由な色柄を生み出しました。

元々日本にあった「紬」という織物と「絣織り」の技術があいまって、

いまのように美しい「絹の絣織り」が作られるようになったわけですね。

洋装化が進み、野良着は「作業着」「仕事着」と名前をかえ、伊予絣も備後絣も

あまり見られなくなりました。

 

次回は、そろそろ染のお話…かなと思っています。

今回のお話も、手持ちの資料からの抜粋です。

「三大絣」については、それぞれの名前で検索すると、製造元のHPがいろいろあります。

 

 

 

 


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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (陽花)
2010-11-16 17:18:05
柄になるように計算して染める・・って
すごい技ですね。
ぼかし糸で組んでいて、力加減によって
ずれる事がありますが、織る人の手加減に
よっても柄の出方が変わるのでしょうね。

トップの絣の着物可愛いですね。
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Unknown (とんぼ)
2010-11-17 01:47:03
陽花様

職人仕事、というのでしょうねぇ。
分業なればこその正確さで
染めたのでしょうし、それをまたずらさずに織るのも
大変な技術だと思います。

この着物は嫁入りの時にもってきましたが、
実は厚地でちょっと着づらくて
何回も着ないまましまいこんでありました。
八掛も真っ赤です。
とてものことにもう着られませんねぇ。
返信する
誰でもやっていたというのが・・・ (りら)
2010-11-18 05:45:02
これほど絣が似合わない女もいないだろう?というくらい絣、似合いません。
あ、もしかすると似合い過ぎて野良着になってしまうのかも!

あらかじめ防染して・・・という部分でもう頭の中がモクモクしてきちゃいます。
こういうことを、田舎では誰でもがやっていたというのが驚異ですよねぇ。
織りで有名な地方じゃなくても、実家の大叔母なんかは家織りしていたそうです。

嗚呼、昔に生まれなくって良かった~。
返信する
Unknown (とんぼ)
2010-11-18 11:38:08
りら様

似合わない?そんなことはないと思いますが。
今はお金出せばなんでもある時代ですから
自分で工夫…自分で作る…がないんですよね。
昔のヒトは、楽しみながらやっていたのではないかと思います。
りらさん、その時代にお生まれだったら、
先頭きって「かっこいい絣」なんてのを、
ばったんばったん織ってたと思いますー!
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