ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

「鐘の怨み」を伸子張り…?

2010-01-24 17:12:44 | 着物・古布
たぶん「道成寺」の柄、で間違いないと思います。
「鐘」の、あのゴーンと撞くところ「撞座(つきざ)」といいます。
ちょうどその部分ですね。おもしろい意匠だと思います。
ずいぶん前からありまして、やーっと解きました。

釣鐘はだいたいこの絵のように十文字の帯のようになった部分が交差するところに、
この撞座があります。この交差する帯の部分は横は三本、たては二本…が原則だそうです。
撞座は「蓮の花紋」、以前内田康夫氏の「浅見光彦シリーズ」で「鐘」という作品があり、
それに「釣鐘」がでてきました。確か国宝級の釣鐘のレプリカがあって…
なんてぇお話しだったと思いますが、この「撞座」の柄というのがひとつではなく、
それぞれの鐘によって違う…というようなことが書かれていました。
「釣鐘」の産地は富山県の高岡市が有名ですが、
テレビで鋳型を作って…という課程をみたことがあります。
あんな大きなものをどうやって作るのかとフシギでしたが…見てもやっぱりフシギです。
人間ってすごいよなー、でした。

さて、この「釣鐘」のほかに見えるのが「鹿背杖」、これは能や歌舞伎などで使うところの
「ヒトでないもの」の証の道具。合間は紅葉に、たぶん「謡」の文句?
それと「幕」ですね。この幕は鱗柄、つまり「鐘に巻きついた大蛇」のこと。
「道成寺」のお話しはいろいろあって、お話しによって主人公の男女二人が
「僧」だったり「山伏」だったり、「後家さん」だったり「娘」だったり、と様々。
それでも筋立ては同じで、修行を積む途中の若い男が、若い女性に言い寄られて…です。
受け入れられないので逃げまくって、道成寺の鐘の中に隠してもらうけれど、
女性の方は愛が憎しみに変わり、蛇となって鐘に巻きつき、焼いて殺してしまう…。
おんなってこわいのよー…の物語。納得できん…けれどまぁそこはそれ、お芝居ってことで。

というわけで、こんなものも「柄」にしてしまうあたりも、すごいなーと思うのですが、
この色柄からいって、最初から襦袢用に染められたものではないかと思います。
浮気相手の女性が、スルリと着物を脱いだらこの襦袢だった…としたら、
男性としては、どんなキモチでしょうねぇ。
もちろんこれは「男物」ってこともアリですが、どっちにしてもすごい柄です。

さわるとしぼザラザラの鬼ちりです。これは胴貫…といいますか、端縫いの襦袢でした。
「記念写真」はこちら。





水洗いしたら、そりゃもぉミゴトに縮みましたですよ。
伸子ってのは、ほんとによく伸ばしてくれますですね。


             


おもしろい柄だーと、入手したはいいけれど…何に使う?
70センチ前後で6枚分あるのですが、市松人形の着物ってわけには…ねぇ。
小さくカットしての部分使いじゃ面白くないし…。やっぱり帯ですかね。
ただ、「細切れ」なので作り帯になるかと思いますが、
ちょいとしゃれたお召しの着物なんかに、これを締めて「芝居見物」なーんて、いいなぁ。
と、これは想像の範疇です。とりあえず洗いましたので、この先は「思案中」、
ご入用の方はメールでどうぞ、ご相談に応じます。

で、入手のときは、この「ちりめん」の柄にばかり気を取られていたのですが、
胴の部分の平絹、こちらもよくよくみればかわいい柄でした。こちらです。


      

     
あまり質のいい平絹ではないようです、たぶん、若い女性の襦袢か、
小さい女の子の着物用に使われたものだと思います。
私は特にこの「桔梗」と「女郎花」の部分がとっても好きです。

 
   


染められてすぐのときにみたかったなぁと思います。
残念ながら、こんなに色が違うほどヤケています。


      


前後の腰から上部分しかないうえ、大きなシミやこれだけのヤケ、
部分取りにしても、節の多い織りだしなぁ…と思ったのですが、
こういうので、昨日の「背負い綿」、いいですよねぇ。
作ってみようかなという気になっています。(影のコエ…早くせんと春になるでぇ…)
あっ「作れたらいいな」にしておきますわぁ。

ためておいた解きなど、お天気に合わせてやっていますが、
やっと動き始めたと思ったら、あと一週間で2月ですよぉ…。
一日ってほんとに24時間か?って思う、今日この頃です。

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10 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (陽花)
2010-01-24 19:16:09
浮気相手が道成寺の釣鐘と気が付いたら
背筋が凍るでしょうね。
女の執念岩をも通すって言いますものね。
怖い怖い!

女郎花、ほんとステキですね。
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にほんブログ村から参りました。 (裄雅)
2010-01-24 19:42:24
こんばんは、はじめまして^^
にほんブログ村から参りました、裄雅(ゆきまさ)と申します。まだ、学生ですが和服ブログで色々と書いています。宜しくお願いします。

 確かに、男物でもアリな柄ですね。
この柄だと、やはり長襦袢や半襦袢への利用でしょうか。
自分も、和裁が出来れば色々な事に挑戦してみたいですね。

それでは、失礼します。
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道成寺とは (0tyukun)
2010-01-24 23:06:52
鐘だとは直ぐ分かりましたが、幕の鱗柄が蛇を表しているとは直ぐには分かりませんでした。
とんぼさんの蘊蓄の深さに脱帽です。
鹿背杖は何かの場面で見た事がありました。
能に使われているのが多いらしいですね。
山姥。
リアルでなく蛇を垂れ幕の鱗柄にするのは素晴らしいデフォルメ。
先人の能力に感服します。
まだまだ勉強不足を痛感しますね。
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鐘に怨みは数々ござる (haco)
2010-01-25 16:42:26
まさしく道成寺柄ですね。最後に鐘に上って、ぶっかえりで鱗模様の着物になります。
携帯からだと文字がよく分かりませんが、謡でしょうか。
舞台だと「花の他には松ばかり」で一面の桜ですが、それは後日譚だから季節が違うのかも。
前にやはり鐘と幕の道成寺柄の帯を見て、買おうか迷いました。結局諦めましたけど…私が締めてたら余計怖いし(笑)
鱗模様は女性の厄除けと聞きましたが、男性からみたら怖いですよね。(^-^;
うちに古い長襦袢で、全体が鱗模様で、中に矢、鈴、蛙が入っているものがありました。
矢と鈴は分かるけど、蛙?と調べたら、大事なものが「かえる」という意味だとか。
でも鱗模様の中にあると、蛇に飲まれちゃってるみたいで…(^-^;
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京鹿子娘道成寺 (うまこ)
2010-01-25 19:06:04
鐘に恨みは数々ござる・・・・
長唄にもありますので、
帯を作れば、この曲を演奏するときに
よいかな・・・と思えども・・・・
ちょっと柄が大きくて、撞座がこの場所では、
帯の柄の配置が難しそうですね。
お太鼓には、伸子張りの画像で2本の伸子で区切られた
その部分でしょうか。
見えるところだけ布を縫いつける手法なら
柄取りも簡単にできますが・・・・
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Unknown (とんぼ)
2010-01-25 21:31:10
陽花様
オットの前で着たりして…?

女郎花、かわいいでしょう?
こんなかわいい柄の着物を、
女の子に着せたいです。
自分では着られないものは、常に妄想ですわー。
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Unknown (とんぼ)
2010-01-25 21:36:04
裄雅様
こちらこそはじめまして。
ようこそお越しくださいました。
お若いのにしかも男性で着物好きとは、
嬉しい限りです。
男物については、手持ちの羽裏のことくらいしか
あまり書かないのですけれど、
こりずにお越し下さい。
着物は奥が深いですから、楽しみを
たくさん見つけてください。
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Unknown (とんぼ)
2010-01-25 21:43:50
0tyukun様
こういう見立ては、今でも楽しいです。
こんなデザインは、イマドキは出ませんね。
このころは、染めるほうも着るほうも、
今とは違う楽しみ方を、知っていた気がします。
残念ですねぇ。
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Unknown (とんぼ)
2010-01-25 21:48:28
haco様
女性がずらりとこれで立ったら…
男性はシューンとなりますかしら。

日本の柄って「祈り」とか「思い」とか
いろいろこめられていても、
けっこう安易で楽しかったりしますよね。
蛙はそう「お宝カエル」「無事カエル」。
それにしても鱗の中ではねぇ…。
「どんな困難も乗り越えてカエル?」かな?
楽しいですね。
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Unknown (とんぼ)
2010-01-25 21:51:44
うまこ様
一番長いのでも、うまく撞座をいいところに
持ってくるには、ちょっとやりくりが必要です。
作り帯ですから、そのへんの工夫が
また楽しいところですね。
黒をあわせたらいいなぁと思っていますが…。
ご注文がすぐついて、売れてしまいました。
プロの仕立て屋さんと、ご相談なさるそうですよ。
楽しみですね。
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