ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

今日はちょっと「着物」を離れて・・

2006-07-08 22:30:00 | つれづれ

ちょっとカタいお話になります。「障害者」の支援制度のことです。
こういう話題が苦手な方はスルーなさってください。

まずは写真、これは先日地域で開催された「福祉関係」のお祭りで、
息子の通っているところの製品として販売されたもの。
ティッシュ・ケースです。すごいシンプルなつくりなんですが、
けっこう人気商品でした。

もうひとつ、こちらは「下の敷物」、階段途中の出窓に飾りました。
40センチくらいでしょうか。これは「裂き織」、
我が家にある着物の中には、いかにせん使い道が・・と思われるような
汚れたもの、布としてはもう・・と思われるものが、毎年少しずつたまります。
そういうものは、裂き織をやっている「作業所」に寄付すると、
一枚残らずキレイに裂いて、また織物として再生してくれるのです。
裂き織は、まっすぐのひも状に切らねばなりませんから、
長方形の反物でないとだめなわけで、着物の古着はたいへん喜ばれます。
それで今年も届けたところ、お礼に・・とこれをプレゼントしてくれました。
私は豆花瓶をたくさん集めていた時期がありまして、
それを飾るのにちょうどいい・・と、さっそく並べてみたわけです。
お花は、今までがんばって咲いてくれていた、名残のパンジーとヴィオラ。
ちょっと窓辺が明るくなりました。





さて、障害者支援制度のことですが・・・。
さきにお話しておきますと、以前からこちらへ来ておられる方は
ご存知の通り、私の息子は今年22歳になりましたが「重度心身障害者」です。
今は毎日、月ー金で、活動ホームという施設に通っています。
この4月に「支援制度がかわるので」と施設で説明会が開かれました。
カンタンに言ってしまうと、今息子が通う施設では、その利用料がかかります。
それをお国が負担してくれています。昼食も行政の一部負担があり、
息子は毎日300円だけ持っていきます。一ヶ月、約20日間の給食です。
今回「お国の負担がたいへんになったので、少し払ってくださいよ」と
こうなったわけです。確かに、息子のように生産的な社会貢献のできない者は
お世話になりつつ、障害者年金をいただいております。
少しくらいは・・ということもわからないではないのですが、
人によっては、これがタイヘンな負担になるわけです。
我が家の場合は、まだ主人が現役サラリーマンで働いてくれています。
私より年下なもんで、定年までもう少しあります。
しかし、私たちが年を取ったら、親も年金、息子も年金、
そしてその年金は、十分ではないわけです。まぁ先のことなら今から備える、
ということもできますが、今すでに年を取っている親とその子供は、
とても大変になるわけです。300円の給食費があがり、
更には「利用費」も一部負担となると、それが払えないので
施設に通えなくなる・・という人も、すでに出てきています。
週5日通っていたけど3日にする・・とか、もう通うのをやめるとか・・。
障害者は、重度であればあるほど、外に出ることが難しく、
介護も大変になります。うちは息子の体が小さいので(145センチ24キロ)
まだ、抱えてお風呂に入れるとか、抱き上げて車イスまで運ぶとか、
辛うじてできていますが、親より大きい障害者なんてザラにいます。
ロクに入浴もさせてやれなくなる、人と関わるという楽しみや刺激もなくなる、
親のほうは、体を休めたり、リフレッシュに出かけることもできないどころか、
私もそうですが、子供が家にいれば、日々の買い物もちょっとした外出も
おいそれとはいけなくなります。
新しい支援制度の実施は、重い障害者ほど家に閉じ込められてしまうのです。

また、この支援のランクを決めるのに「審査」があります。
「障害程度区分」の「認定審査」と申します。
これがもう、笑い話・・いや笑ってる場合じゃないんですが、
一枚ぱっと紙を出せばいい・・というものではありませんで、手順があります。
役所から書類がきて、まず親が書く・・、それを提出するとその後は
「主治医に書いてもらうように」という書類が来る、ここでまずコケます。
障害者だからといって、誰もが医者に定期的にかかっているわけではありません。
知的にも重く体も自由がきかなくても「原因は不明、病的にはこれといってなし」
或いは、「眼科」だけ・・とか。そういう特定の医師が決まっていない、
眼科とか耳鼻科しか通っていない、そういう場合もあるわけです。
「眼科の先生、書いてくれるかしら」なんて話しになりました。
眼科の医師は「眼」のことしかわからないのですから・・・。
しかも、その書類が早く届いたヒトが見たら、診察しているだけではわからない、
たとえば「睡眠のようす」だの「家以外でのようす」だのの項目があるのです。
そんなことがわかるのは、家族と、しょっちゅうそはで過ごす施設のヒトです。
三ケ月に一回しか会わない、しかも5分で終わり、なんて医師に
わかるわけがありません。大丈夫かしらね・・といってたら
施設長が「実は、役所側がこういう書類を書いてもらうことになる、と
『医師側』に前もって伝えておかなかったので、何名かの医師から、
『突然患者の保護者がこういうものを持ってきて書いてくれといわれたが、
中身は医師だけではかけないものだし、審査に関わることなら、
尚のこと慎重を期さねばならない。いきなり言われてもかけない』と、
苦情が来た・・と言うのです。ははは。
私はそれを先に聞けたので、医師と前もって話し合い、
「夜昼逆転すること、病院へ来るほどでもないけれど不調のときのようす」など、
親でなければわからないことは、話し合って書いていただきました。
これでおわったわけではありません。まだ審査は続きます。

で、この「審査」なんですが、先日テレビでこの「ランクづけ」のための
調査についてリポートしていました。用紙に並んだ項目について、
たとえば「できる。ややできる。介助があればできる。全介助」というような
選別をするところがあるわけです。ある重度の障害者のお母さんが、
サポートしてもらいながら、これに記入しようとしたのですが・・。
食事について、その障害者かたは「刻み食」と呼ばれる食事でした。
つまり、噛み砕く力が弱いので、最初から料理をある程度刻んだり崩したりして
食べやすくしておく食事です。それが、台所で先に刻んだりつぶしたりしておけば
あとは自分でなんとか食べられるなら「介助なしで食べられる」になるし、
テーブルまで持ってきて、その場でつぶしたりおはしで切ってあげたりすれば
「介助が必要」になる・・・笑っちゃいましたよ私。
この用紙の設問はコンピュータで作られており、○をつけたところの総点数で
数字が出てランク考察の一つの基準になる・・と言うのです。
これを元にして、今度は人間様が審査に関わるというのですが・・。
これに関わる人たちもタイヘンです。一人ひとり面接するわけですが、
その場所もこちらで希望します。当然、親と、毎日関わってくれる施設の方と、
一日の大半をすごす施設でやってもらいたいという希望がおおいわけです。
これ、ずーっとやって、それでランクが決まって、支払う負担分の金額が
決定するわけですが、4月に「こうなります」といったって、
実施はいつになるやら・・。

6月から始まった「駐車禁止」の民間人による取り締まりも、
宅配や福祉車両にとってはたいへんなことです。
実は、私の場合も息子は毎日送迎車で施設を行き来させていただいております。
我が家の前に駐車して、車イスでそこまで行って、乗り換えさせて・・
とやっていると、1~2分ではすみません。
息子の場合はは運転手もいますし、介助者がいますので、
モンダイはありませんが、老人施設などや病院の送迎などの場合は、
だいたい運転者が介助者も兼任している場合が多いのです。
戸建ての家ならまだ時間がかかりませんが、マンションなどなら、
迎えにいってつれてくるまでの時間もかかるでしょうし、
病院についてからも、中まで送ってあげられなくなったわけです。
「法律」とか「規制」と言うものは、決まって施行されてしまえば、
たとえどんな理由があっても破れば「違反」です。
こういう法律や規制を作る人は、本当に後のこと、細かいところまで
考えてくれていません。「キメの細かい福祉を」だの
「隅々まで照らすような行政を」なんてぇ言葉を聴くたびに、
ガリバーのキメの細かさ、ガリバーの懐中電灯・・と思ってます。
さて、息子の審査はどうなりますか・・。
ちなみに息子は全て「ミキサー食」、目の前でミキサーかけなきゃ
「やや介護」なんてことになったら、だまっちゃおらん!!

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8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
確かに、巨人ガリバーの福祉 (ぶり)
2006-07-08 22:51:09
今回、父の介護認定、障害認定などの手続きをして、よくわかりました。

かゆいところには、全く手の届いていない福祉。

しかも、平成18年度から、様々な福祉行政が縮退。

北欧の制度を見習って欲しいと心底思っています。



それと、日本人の障害や差別に対する認識の低さ、

もっとレベル・アップして欲しい。

人を憐れと思うより、できることをする姿勢が大事と

思うので、「先ず隗より始めよ」と考えています。
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Unknown (陽花)
2006-07-08 23:08:59
国が苦しくなったから弱者からというのは

おかしいと思いますね。

もっと他で削れるところがあると思います。

行政も事務的なことだけで心が無いように

思います。

先日もお友達のご主人が亡くなりましたが

重体であるにもかかわらず3ヶ月になったら

いやおうなしに退院ですから家で診られない

のなら次行くところ探しておいてくださいと

言われたと嘆いていました。

今の制度そのものを変えなければこの先

本当に不安なことばかりです。

めげずにがんばって!とんぼ様
返信する
Unknown (とんぼ)
2006-07-08 23:10:27
ぶりねぇ様

戦後、今の日本国憲法が制定されて、昭和24年に「身体障害者福祉法」ができているのですが、

何回も改定はされているものの

それは制度的なもので、基本精神はかわっていないし

育っていないのです。

福祉先進国と日本の福祉に対する根本的な違いは

「障害者は保護するもの」と

「障害者は援助するもの」という、

たったこれだけの違いです。

出発点が違うから、何をどうかえても、

なんにもよくなっていかないのですよ。

返信する
Unknown (とんぼ)
2006-07-08 23:15:18
陽花様

ありがとう!がんばりまっせ!

お友達のご主人もご家族も、本当にたいへんでしたね

3ヶ月たったら出ていけというのは、

しょっちゅう耳にしますが、お金にならないから、

なワケで「医を算術」にしているのは、

行政なのだと、気がついているのでしょうが、

積極的に直そうとはしないのですよね。

よく「税金のムダ使いの箱物」とか、

公務員の無駄遣い、天下り・・と耳にすると、

ほかに使い道があろうがーと、ついどなります。

返信する
そうです。 (ぶり)
2006-07-09 08:11:55
ほとんどの法律の文言から浮かび上がるのは、

愚かな民衆のために行ってやるという精神?!

それを許しているのは、選挙権を持つ人たち。

なので、できることから、はじめよう

「先ず隗より始めよ」と考えているのです。



拙ブログでアレコレものを言うほかに、

何かできることがあったら、お知らせ

くださいませ~





返信する
空中分解してしまった (蜆子)
2006-07-09 10:22:30
私の主人、障害者自立支援のNPOを長い間続けていました。ところが年限きられるんですよね。障害者の父兄のかたからみんなで自立にむけて頑張りました。場所を貸してくださるかたがいない、本人はよくても隣からクレームがなどなど、

行政の問題ばっかりではないんです。空き店舗が一杯あるのに、住民の意識が~、障害者のかたの親の思いのそれぞれの違いが~

県内では古参のNPOだったのに、空中分解、問題の大変さは相当なもの、でも毎日の現実がある、

とんぼさん、頑張って下さい。NPOで体験したこと、皆さん前向きで明るかったことが救いでした。
返信する
Unknown (えいどん)
2006-07-09 15:51:07
とんぼ様

この法案、郵政民営化のことで解散するとかせんとかいってる時に少し報道されていましたね。。ニュースの特集で障害の方が「『作業所』で仕事をして、得る金額以上を施設利用料として支払わなければならない。自立支援といいながらどう自立せよと、これはまるで国によって存在を否定された気がする。」というようなことをいわれていました。解散総選挙だと浮き足立っている時にどんな審議がなされるのかと私は一人で怒っておりました。大事なことは何でも先送りなのに、こういう事ははすぐに現場を振り回して実行される。「審査」も最後は如何に作文するかの作文能力がものをいったりすることがあってこれも腹立たしいばかり。

取り留めなくてすみません。先ず御自愛ください。

返信する
Unknown (とんぼ)
2006-07-09 19:33:33
ぶりねぇ様

ほんとに「隗より始めよ」ですね。文句言っててもごまめの歯軋り、自分にできることから・・です。



蜆子様

がんばり空回り・・ほんとにさびしいことなんですが、障害者に関わる活動は、ほとんどがこれです。それでもがんばらないと・・。



えいどん様

たいがいそうなんですが、大事なことを決めるかたは「現場」をしらないんですよね。「作文力」、ほんとにそうかもしれません。役所の方々も努力してくれてるんですよ、いろいろ。やってくれる人は一生懸命やってくれるんです。そういう方の努力がちっとも実らないのがこの国のフシギです。
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