先日「冊子柄」「読本柄」のじゅばんをご紹介しました。
これも、そういう意味では「読本柄」…になるのだと思いますが、ちょっと洋風?。
この手の柄は、大正後期から昭和初期のもので見かけます。
なんとなく洋風の絵のように見えて、実はよく見ると「和」のテイスト芬々…というタイプ。
たとえば、これは羽裏ですが…アルプスの山小屋風に周りに在るのは「外国たばこ」
なのに、柄は雪輪の中にはいってるし…。
こちらは本、更紗柄とかエジプト風とか、あれこれいれてるんですがねぇ…本の題名漢字だし…。
今回ご紹介のものも「つけペン」が斜めに置いてあって、なにやら小さい水差しのようなものがあって…。
たぶん「インク」のつもりだと思いますが、これだと「書道の水差しや水滴」のイメージですよね。
そのアタリのズレがなんとも面白いところです。
さて、この並んでいる本たちは、題名だけ見ると「本」ではなく「楽譜」ということになりますが…
一曲でこんなに厚い楽譜になるなら「クラシック」といいたいところですが、ほとんどの曲が「歌謡曲」…。
こうなりゃついで…と、調べてみました。
「唐人お吉の唄」といえば、私が思い出す歌詞は「♪かごで行くのはお吉じゃないか…」だったのですが、
「唐人お吉」には、何曲かあって、この黒船編は佐藤千夜子が歌った、
「♪思い出します お吉の声を 磯のちどりの鳴く声さえも…」というのだそうです。
「佐藤千夜子」は、日本最初の流行歌手…NHKの朝ドラ「いちばん星」で、その半生をやりました。
私時々見ていた記憶があります。最初、高瀬春菜が主演だったのに、病気で途中降板して
五大路子さんがあとをやった…とかだったと思います。つまりこの「黒船編」も「流行歌」と言うわけですね。
ちなみに私の知っていたのは「明烏(あけがらす)編」というのだそうです。
あっ「かごで行くのは…」の方も歌詞をしっているだけで、唄は知りません。
その隣の「鴨川小唄」、これもへぇぇと思いましたが、これは「先斗町」の唄なのだそうです。
まず「京都の小唄」というと「♪月は朧に東山…」の「祇園小唄」ですが、
これはマキノ映画「祇園小唄」の主題歌として作られたのだそうです。
この、いわば「ご当地ソング」のハシリであった唄が、今ずっと歌われ続けているわけですね。
京都では「上七軒」」「祇園甲部」「祇園東」「先斗町」「宮川町」、
これが「京の五大花街」と言われていまして、実はそれぞれに「~~小唄」ができたのだそうです。
ところが、最初の祇園小唄ばかりが全国区になってしまい、私たちは舞妓さんが踊るのは「祇園小唄」と、
インプットされてしまっています。でも、本当は「先斗町なら鴨川小唄」…なのですね。
最近になって、「鴨川小唄」も復活?して、ちゃんと歌われているそうです。
「ふるさと」は音楽…の流れで、つい「♪うさぎ追いしかの山」を思い浮かべましたが、
名前を見れば「三木露風」、これは「詩」ですね。それに曲をつけて歌われたらしいですが、
画像検索で探して聞いてみたら、流行歌と言うよりは、浪々と歌い上げる感じの曲でした。
「女給」、これは唄があるのかどうか…「広瀬和郎」、この人が書いた小説が「女給」で、映画化されたのかもしれません。
「銀河 道子の巻」というのは「銀河」という映画の中で歌われた「道子・荘一の歌」というものらしいです。
だいたいが昭和初期の映画の中の曲とか、そういったものでした。
レコードとか、ラジオとか、映画とか…そういうものが次々出てきて、
「流行歌・歌謡曲」というものが飛躍的に広がっていったころの歌…みたいですね。
それにしても楽譜だか本だかわかりませんが、西洋文化の象徴のような映画やレコードといったもので
流行の先端を行く音楽の本、でありながら、それぞれの表紙の絵の、なんと「日本的なこと」…。
倒れ掛かったような左の本は「佐渡おけさ」ですが、絵はなるほど「安寿と厨子王」…。
その下に置かれているのは、なんと「酋長の娘」…。これは私くらいの年ですと、親が歌ったりして耳にしています。
「♪私のラバさん 酋長の娘 色は黒いが南洋じゃ美人」…。「ラバさん」は「ラヴァー」つまり恋人ですね。
「大衆音楽研究編曲」…ってのも笑えます。
表紙の絵が「ちょっとした日本の田園風景画」に見えましたが、よくよく見れば頭上にヤシの実が…。南洋だわ…。
右下は、ちゃんと「祇園小唄」があり…
さらに右袖には「嵐山小(唄)」、そもそも上の方に書いてある「長田幹彦」と言う人が書いた小説が、
「祇園小唄」の誕生…だったそうです。
「カンカン虫は唄う」は、吉川英治の小説ですが、映画化されました。
大きな船のサビを落とすシゴトをする人のことを「カンカン虫」というのですが、
子供のころ、実父に連れられて何度も横浜港に行っていまして、大きな貨物船を見ながら
そこで教えてもらったたような記憶があります。(父は写真を撮りに行ってまして、私は見送りの人の残した
紙テープを拾って集めるのが大好きでした)
左袖は「この太陽」、これも佐藤千夜子さんが歌った映画の主題歌だそうです。
この図柄の中の曲は、ほとんどが昭和初期です。
こうしてみると、このじゅばんには当時の大流行した曲や唄が並んでいる…ということになります。
今こんな柄を染めるとしたら、さしずめ「スマップ」とか「B’z」とか「AKB48」とかの「ヒット曲」が並ぶのでしょうねぇ…。
そう考えてみると、このじゅばんを着ていた人は、すごーく「時代の先端を行った気分」でいたんだろうなぁと思います。
いやー最近の歌手さん、まーったくわかりませんので、私がもしこんなじゅばんを染めてもらうとしたら、
思いっきり「昭和30年代懐メロ特集」になってしまいそうです。
なーんでも絵になってしまう、着物柄のフシギ…のお話でした。
知らない私には多分小説だと思って
見ていたと思います。
アレッと思うこういう絵も面白いですね。
最近の歌わかりませんねぇ・・・
この時代の歌もさっぱりです。
男物襦袢は時代を先取りし、粋をかざした男の見得そのものだったんですね。
こんな襦袢が無くなったのは見得を切る機会が男に無くなったからかも。
その意味では昔に戻って欲しいものです。
この所紋を調べる事が多く、先日の「背守り」の記事も参考になりました。
メルマガで引用させて頂くかも知れませんがよろしくお願い致します。
逸品中の逸品ですねぇ。
こんな長襦袢着ている人がいたら、ついふらふらと付いて行きそう・・・
あ、長襦袢の柄が見えるところまでのお付き合いってのは、親兄弟旦那までですわね。
だはははは
好きな作家の作品を並べて染めてもらうなんて、あまりに素敵で考えただけで眩暈がしそうです。
(できやしない方ダイジョウブ!)
まぁ何でも絵になるものですね。
私もこの中で歌えるのは「佐渡おけさ」くらい?
最近の歌は、何回聞いても覚えないし、歌手もみんなおんなじに見えます。
これも年齢ってもんでしょうか。
ひとつの「見えない文化」ですよね。
こういうところに意味を持たせたり、信条を隠し持ったりする
粋な男はいないものでしょうか。
最近の富士山、鷹、竜虎の三大話みたいな柄をみるたび、
それを着る人までダサく思えてしまう私です。
それしかないんですけどね、今は。
背守りのこと、お役に立てばなによりです。
どうぞご参考になさってください。
いやほんと、オットが着物着るヒトだったら、
これくらい着せたいところです。
今ならさしずめ雪輪の中に「好きなCD」のパッケージ飛ばすとか?。
作ってみたいですねぇ。